俺って、結構単純だよなぁ…
翌週、いつも通りの時間に学校に到着。教室に入ると、いつも通り鈴井が席に座っていたんだが…何か違和感がある。
「おはよう、鈴井」
「おはよう、晃くん。それと、仁美さんにも挨拶してあげたら?」
「え?うおっ!びっくりした…」
鈴井に言われて仁美の席を見ると、何やら話しかけないでオーラを放ちながら机に突っ伏している仁美がいた。違和感の正体はこれか。教室の入り口からは死角だから見えてなかったわ。
しっかし仁美はなんであんな状態に?勉強会でもそれなりに勉強出来てたし、そもそも試験だってまだ始まってすらいない。落ち込む事なんて何もない筈だ。
「えーっと…仁美〜、大丈夫か〜?」
「…………」
返事がない、ただの屍のようだ。
「おい鈴井。あいつどうしちゃったんだよ」
「さぁ…。私が話しかけてもずっとあんな感じよ」
「マジかよ…」
となると、やっぱり土日になんかあったんだろうな。
「仁美がああなる原因に心当たりは?」
「それはあなたの方が詳しいのではなくて?」
「だよな。俺もそう思う」
やっぱり鈴井も分からないか。まあしょうがないな。本人に聞くしかないか…
「仁美〜、勉強の調子はどうだ〜?」
「…………」
無反応。勉強についてではないのか。
「最近涼しくなってきたよな。もうすっかり秋って感じだな」
「…………」
季節についても反応なし。これもダメか。
「日本代表惜しかったな。あとちょっとでオリンピック出場ってところだったのに」
「…………」
これでもない。バスケ絡みでもないのか。
「一昨日の勉強会での昼飯、めっちゃ美味かったよな。鈴井はまあ分かるけど、成瀬も料理上手とは意外だったぜ」
「!……」(ピクッ)
反応あり?というか、勉強会という言葉に反応したな。もうちょい話を広げてみるか。
「あの二人といえばよ、勝手に俺の部屋に入って薄い本探すんだぜ。あるわけねーのにな。困ったもんだ」
「!……」(ピクピクッ)
また反応あり。というか、薄い本という言葉に反応したんだが…
勉強会…薄い本…下ネタ…あ…(察し)
「鈴井。仁美がああなった理由、分かったぞ」
「そう。それで、何が原因なのかしら?」
「………だ…」
「え?何て言ったの?」
「…やくだ…」
「聞こえないわ。はっきり言って」
「○薬だ。あいつ、アホだから調べたんだ…」
「え?あ…」
どうやら鈴井も気付いたみたいだ。
「ちょ、ちょっと、謝罪してくるわ」
「そうだな、それがいい」
しかし、完全に忘れてたな。電話の一本でもしてやれば良かったかもな。
まあすべての元凶は鈴井だし、あいつに全部押し付けてもいいか。これで少しはあいつも自重してくれるといいんだがな。
――――――――――――――――――
「えー、これで試験は終わりだ。皆よく頑張ったな。それじゃあ解散」
福田のやる気のない言葉を皮切りに、クラスが騒々しくなる。皆口々に、難しかっただの、お疲れ様だの言いあっている。
かく言う俺も
「あきら〜!俺やったぞ〜!」
「うぜえ!離れろ!気持ちわりい!」
健に抱きつかれ、騒がしくしている。このホモ誰か引き取ってくれよ…
「灰田くん。まだ答案が返ってきた訳じゃないのだから、安心するのは早いのではないの?」
「大丈夫だって。今回の試験は今までで一番解けたからな」
「今までどれだけ解けなかったのかしら…」
鈴井は呆れたように眉間に手をやる。
「まあ今回は健も頑張ったみたいだし、褒めてやろうぜ」
「そう言うあなたは、手応えの方はどうなのかしら?」
「悪くはないと思うぞ。返ってこないうちは、何とも言えんがな」
「自信は、あるのね?」
「ああ」
手応え的には、過去最高の出来だ。きっと、いい結果が返ってくるだろう。
「へー、じゃあさ。あたしと勝負しない?」
「勝負?」
隣から成瀬が話しかけてきた。水無月先輩に影響されたのか、勝負を仕掛けてきた。
「そ、総合順位で勝負。負けた方は勝った方の言う事をなんでも聞くって事で」
「ん?今何でもっていったな?」
何でもって事は何でもって事ですよね?
「あんたはこれくらいの条件じゃないと、乗ってこないでしょ?」
ふっ…。俺も甘く見られたもんだぜ。何でも言う事を聞くって条件で俺は痛い目を見てるんだ。今更そんな条件に乗らん。
「悪いが、断らせてもらうぜ。めんどくさそうだし」
何より、もう試験の結果はほぼ決まってる。試験前だと乗ったかもしれんけど。
「ふーん。負けるのが怖いんだ」
「あ゛?」
「体育祭男子MVPの晃が、か弱い女の子との一対一の勝負から逃げるなんて、信じらんな〜い」
これはあれだ。俺を焚きつける為に煽ってるんだ。間延びした語尾が物語ってる。
見え見えな手だ。明らかに罠だと分かる。だが…
「上等だ…。乗ってやるよその勝負」
「ふふっ…そうこなくっちゃ」
俺には効果抜群だった。だって皆が見てる前で逃げたらダサいじゃん?
「はぁ…。馬鹿なの?あなた…」
鈴井は健の時より深いため息をつく。俺は健以下なのか…
「晃!私とも勝負!」
「晃くん!勝負だよ!」
仁美と荒川も何故か勝負を仕掛けてきた。だが、
「流石にお前らと俺とじゃまだ早いと思うぞ。健とがちょうどいいんじゃないか?」
「あー…」
「だよね〜…」
いくら勉強したといっても、一週間程度じゃあ100位以上の差を覆すのは流石に無理だろう。
「おいおい、俺とじゃ不服ってか?二人が勝ったら何でも言う事聞いてやるぜ。晃が」
「はぁ!?ふっざっけんな!」
俺を巻き込むな。頼むから当事者だけでやってくれ。
「え?ほんと!?よーし、負けないよ!」
「晃くんになーにお願いしよっかな〜」
俺の合意なしに話が進んでいく…。勘弁してくれ…
あ、そうだ。
「成瀬。部活、今日から再開するか?」
「え?あたしはいいけど、天使さんは?」
「前に、毎日図書室にいるって聞いたし、多分来てると思う」
「ふーん。じゃあ行こうかな」
よし。これで部活と言う名目で、図書室に自然に行けるぞ。
「さて、俺はそろそろ部活に行こうかな。あまり遅いと、キャプテンに怒られそうだし」
「あ、ヤバ!私も今日から部活だった!早く行かなきゃ!」
「私も行こーっと。じゃあね。めぐ、れいちゃん、晃くん!」
「おお。じゃあな」
「じゃあまた月曜日」
「ええ、さようなら」
三人はあっという間に教室を出て行った。運動部組は大変だニャー。
「じゃあ俺達も行くとしますか。じゃあな鈴井」
「じゃあね、れい」
「またね。晃くん。恵さん」
教室を出て、図書室に向かう。その足は、自然と速くなる。一週間ぶりに天使さんと会えるんだ。めちゃくちゃ楽しみだ。




