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「あいつは丈夫だけが取り柄だからな」と言う夫には愛想が尽きましたので離縁します  作者: はるくうきなこ


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7/18

7家を出たら変な人に捕まった


 怒りに任せて魔力を暴走させながらオリディアは通りを走った。

 息が苦しい。身体中の関節がギシギシ軋んで走ろうとしてもまともに走れていない。

 (誰か助けて…こんなの初めてで)

 意識が朦朧として足がもつれて転んだ。地面に膝と手のひらを思いっきり打ちつけた。

 「いったいぃぃぃ!!」

 おまけにトランクの蓋が開いて荷物がばら撒かれてる。


 「おい、大丈夫か?」

 「…いた〜、いえ、大丈夫です」

 オリディアは急いで起き上がる。でも、膝と手のひらをかなり擦りむいて全然大丈夫じゃなかった。

 「こりゃ酷いな。うん?お前竜族か?」

 オリディアはいきなり失礼な人だと思いながらその人を見た。

 彼も銀色の髪をしていた。

 「あなたも竜族なんです?」

 「聞いてるのは俺だ」

 「あっ、すみません。母が竜族でした」

 「じゃ、竜族じゃないか。おい、それよりお前、魔力が暴走してるんじゃ無いか?」

 「魔力が暴走?」

 「って、さっきからどうして人の言ってる事に聞き返すんだ。ったく。どれ、手を出せ」

 オリディアは何だか怪しい男に手を掴まれそうになって思わず手を引いた。

 「いいから、取って食やぁしねぇ。魔力を調整するだけだ。このままじゃお前また倒れるぞ」

 オリディアはやっと彼のやろうとしている事を理解した。

 擦りむいて痛い手を差し出す。

 「ったく、最初からそうやればいいものを」

 男は面倒くさげにオリディアに手を取るとぎゅっと握って目を閉じた。

 その瞬間、苦しい胸がすっと整い身体中を駆け巡っていた熱い滾りのような感覚が収まっていった。

 ついでに手のひらの痛みや膝の痛みもなくなって行った。

 「どうだ?楽になったか」

 「はい、すごく。ありがとうございます。あの、怪我も治るんですね。すごいです。って言うかあなたは?」

 オリディアはやっと落ち着いてその男を見た。

 見たこともないような端正な顔立ち。背は高く逞しい体つき、年は三十くらいだろうか。瞳の色は琥珀色で虹彩が光の加減で変化して色々な色に変化する。

 オリディアは吸い込まれるようにその瞳を見つめていた。


 「お前なぁ、って。初対面の男にそんなに食いついたように見惚れてどうする?」

 「えっ?いえ、そんなつもりでは。でも、すごく綺麗な瞳だなぁと思って…いえ、すみません。あのあなたのお名前は?」

 「俺は、エドワードだ。アルノール公国の者だ」

 「ああ、それで竜族。あっ、私はオリディア・ロー、いえ、オリディアです」

 「オリディアか。でも、お前貴族だろう?姓は何だ?」

 「いえ、ちょっと事情があって」

 「何だ事情って。家出か?それとも男と駆け落ちでもするとか?」

 男は散らばったトランクの中身を拾って無造作にトランクに入れてくれている。

 「そんなんじゃありません!夫と離縁したんです。でも、話し合いの途中で突然魔力が暴走して家を飛び出して来たんです。あっ、自分でやりますから」

 オリディアは残った荷物を自分で拾ってトランクに入れ始めると男は手を引いたが話はやめなかった。

 「ああ、興奮しすぎたって事か。あっ、その腕輪」

 「これは母がくれたもので…」

 (そう言えば母はこの腕輪が私の魔力を封じてくれるって言ってた。でも、怒りで我を忘れて、だから魔力が暴走したって事?)

 「あの、この腕輪壊れたんでしょうか?」

 「いや、きっと封印でも抑え切れないほど興奮したからだろう。腕輪は心配しなくても壊れていない。それよりその旦那とは話はついたのか?」

 「まあ、私の中では完全に終わってますから、この先は公正所で手続きをするつもりです」

 「お前、いや、オリディアはいいのかそれで?まあ、俺には関係ないが」

 「関係ないなら聞かないで下さい」

 (って言うか、助けて貰った事は感謝するけど、この人ちょっと図々しくないかしら?)

 「まあいいけど、それより行くところはあるのか?」

 「はい?」

 「だって家を飛び出して来たんだろう。見れば荷物はトランク一つだし、金だってあるのか?」

 「取り敢えず宿に泊まるくらいは」

 オリディアの脳裏に通帳の残高が浮かんだ。(まあ、数日宿に泊まって食べるくらいは何とかなるはず)

 「それに、その夫がオリディアを連れ戻しにやって来るとかは?」

 「いえ、それはないかと。夫にはすでに愛人がいて結婚するつもりですし」

 「だったら、オリディアは泣き寝入りって事か?」

 「いえ、だからそうならない為に公証所で手続きを」

 「その公証所で金を踏んだくれる当てはあるのか?」

 「まあ、多分」

 「良かったら手助けする。同じ竜族だし、オリディア、お前さっきのルノス商会の商権だよな?って言う事はルノス商会のお得意様って事じゃないのか?」

 「まあ、見たんですか?もう!」

 「すまん、見る気はなかった」

 エドワードと名乗った男は銀色の髪をわしゃわしゃと掻きむしる。

 (悪い人ではなさそう)

 「いえ、私こそ助けていただいたのに、お得意様ってほどではないと思います」

 「いや、実は俺もルノス商会は知ってるから、案内してやるよ」

 「いえ、でもそんな図々しい事は…」

 オリディアはあまりにグイグイ来る男に引いた。

 「そんな警戒するなって、俺ほど人畜無害な男はいないぞ。心配ないって!」

 エドワードはオリディアの背中をバシバシ叩く。

 ゴホッ。

 「ちょっと、エドワード様止めてください!」

 「ああ、悪ぃ。いいから着いてこい!」

 「いえ、遠慮します。って、もう…」

 エドワードの力は強くオリディアの手をグイグイ引っ張って行く。

 オリディアは仕方なく着いて行くことにした。

 (まあ、まだ日は明るいし街中だし、そんな悪い人でも無さそうだし、取り敢えず商会に行くだけだし付いて行ってみよう)

 諦めモードでオリディアはエドワードについて行く。

 着いた所はルノス商会。

 「ルノス商会?」

 「ああ、金ないんだろう?ここで金を調達をすればいい」

 「エドワード様、どこ行ってたんです。会頭が探してましたよ」

 「おお、すまん。誰かこのお嬢さんを案内してくれ、丁重にな」

 「エドワード様ってルノス商会の何ですか?!会頭が探すほどの方って?」

 「そんなの気にするなって、同じ竜族のよしみだろう。遠慮はいらん。さあ、入った入った」

 「エドワード様がそう言われてるんです。どうぞ遠慮なさらず」

 (嘘みたい。でも、商権の事もあるしちょうど良かったかも)

 「さあ、オリディア、心配ないから」

 エドワード様が商会の中に招く。

 「では、私もご相談があるので」

 オリディアは渡りに船と思ってお邪魔する事にした。








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