16ボルター後悔する
ボルターはこんなリリアを見て驚いた。
一度そう言う目で見るとリリアの本性が見えて来てじわじわとリリアへの想いが冷めて行った。
こんな女とやって行けるのか?
いや、無理だろう。
そうは言っても一度口にした事をこんな簡単に覆す事は…
出来るわけがない。
そうだ。次の休日オリディアと会う事になっている。今なら私が頭を下げればオリディアは戻って来るに決まっている。オリディアを家に連れて帰ればリリアも嫌がって結婚しないと言うはずだ。
そうなれば元通りになるんじゃないか?
でも、リリアは私が公金を使い込んだ証拠を持っている。
クソ、どうすれば良い?オリディアには取り敢えず復縁したいと言ってこの前書いた離縁状を取りあげよう。
リリアは機嫌を取って証拠の紙を取り上げてそして別れよう。
だが、そんなうまく行くだろうか?
ボルターはオリディアを追い出した事を後悔し始めていた。
それから数日リリアとは顔も合わさなかった。
数日放っておけばリリアも少しは反省するかもしれない。何しろ私がこの家の主人なんだ。
ボルターはオリディアがそうだったように女は男の言う事を聞く物だと思っていた。
もしかしたらリリアも少しは反省して家の事をやるようになるかもしれない。
だが、リリアは仕事の手伝いをしてくれないどころか、家政の事も全くしないらしい。
使用人はこれまでの仕事の手順で家の事をやっているらしいが、リリアの勝手な振る舞いに手を焼いていると報告があった。
その日ボルターが帰って来ると、執事のダンカートが使用人から苦情が入ったと矢継ぎ早に報告が上がった。
「旦那様、今日はリリア様が馬車を出せと言われて困りました。今日は馬の具合が悪くケビスから馬車を使わないように頼まれておりましたので」
「それでリリアはどうした?」
「辻馬車を呼ばれました」
「それでどこに出掛けたんだ」
「ご友人の所と伺いました。帰ってきられた時にはかなり酔っておられてお連れの男性が送って来てくださいました」
「男が送って来たのか!」
「はい、何でも芝居の役者だとか、街ではかなりの人気の方のようです」
「リリアの奴、何を考えている?」
「旦那様、リリア様と正式に結婚をされたのですか?あの方は私がお金を出さなくてもあちこちの店で侯爵家の名を出してつけで買い物をされているようです。今日、宝石商から問い合わせが御座いまして」
「いくらだ?」
「金貨100枚で御座います。あの方のお金の使い方ようと言ったら、このままでは侯爵家はすぐに借金まみれになります」
「あいつ…結婚届けはまだ出していない。オリディアとの離縁もまだ賠償金のことで折り合いがついていないから届けは出していないはずだろう」
「不躾な事を申し上げますが、あの方にこの家の女主人が務まるのでしょうか?家政も全くされませんし、毎日、放蕩三昧。あのような方を妻として娶られるのは旦那様の信用問題にもなりかねません。どうか、今一度考え直して頂けませんか?私のようなものが言う立場でない事はわかっています。ですが…」
「ああ、私もあそこまでとは思ってもいなかった。夫を失い不遇な女性だからと情をかけ過ぎていたのかもしれない。こんな事ならオリディアが妻のままの方がよほど良かったと思っている。今度の休みの日にオリディアと話し合いをする事になっている。その時オリディアにもう一度復縁を頼むつもりだ」
「それは良いお考えです。ですが旦那様、復縁を望まれるのでしたらもう少しオリディア様の事をお考えになって頂けませんか?あの方は本当にこの家の為に働いて来られました。例え竜族であってもそう言う見方は改めてられるべきではないでしょうか?」
「ダンカート、それはこの国の風習と言うものだ。例え何があろうとオリディアが竜族である限り貴族の目のある所には出せない。あの髪色や目の色は隠しようがないだろう。だが、私も彼女がこの家の役に立つ事はわかっている。彼女の機嫌を取るくらいの事はするつもりだ。あいつも少し機嫌を取ってやれば私の所に帰るだろう」
「旦那様がそれはいくらなんでも酷いのではございませんか?」
「うるさい!私はこの家の主人だぞ。お前にあれこれ言われる筋合いはない!」
ボルターはダンカートを怒鳴り付ける。
ダンカートはそれ以上は言えないと思ったがどうしても聞きたいと尋ねた。
「ですが旦那様、リリア様はどうされるおつもりですか?」
「…まあ、そのうちに何とかする。ダンカート悪いがリリアには金を出さないようにしてくれ。商会にも連絡をしてリリアが何を言おうとうちは金を払わないと伝えろ。あいつはドレスも宝飾品も買えないとなればここから出て行くに違いないからな」
「では、旦那様のお名前で書き付けを下さい。商会にはそれを見せます」
「わかった。そうしよう」
ボルターは商会にリリアの買い物には侯爵家は関与しないと書いた。
ここ数日のリリアの行動でリリアの本性が見えた。すっかりリリアと結婚する気は失せていた。
(まったく、あの女のどこが良いと思ったのか)
今では煩わしさしかない。
だが、公金の事がバレればただではいられない。
(クソ、あいつどこに領収書を隠したんだ?)
そしてオリディアと会う約束の日が来た。




