12心強い仲間
オリディアは公証所での事でその日はすっかり気落ちしてしまった。
ルノス商会に帰る途中でエドワード様に公証人に言われた事を話した。
エドワード様はひどく怒って俺が文句を言って来ると言うのを引き止めるのに苦労した。
何とかルノス商会にまで帰り着く頃にはオリディアはすっかり疲れていた。
エドワード様が公証所での事をかいつまんでみんなに話すとみんなが文句を言った。
エドワード様は憤慨して言った。
「オリディア。離縁に手続きは侯爵家に行こう。俺も行く。離縁も整わないうちから女を連れて来るような奴に遠慮なんかしなくていい」
「いいえ、そんな事をすればあの男と同じになります。それに、これは私の問題です。エドワード様には関係のない事です」
本当は一人で行くのが恐い。断られて力尽くで閉じ込められるかも知れない。でも、昨日知り合ったばかりの人に迷惑をかける訳にはいかない。
エドワード様が不貞腐れたような顔でオリディアを見ていると会頭が言った。
「オリディア様、我が商会は、アルノール公国からの魔石取引の為にここにあります。こう言ってはいけないのかもしれませんが、ブラトア国との取引など我が国に取ったらそこまで重要なものでは無いのです。元々、魔石取引はルトニア帝国との間で行われて来ました。ですが、これまでにブラトア国での竜族に対する偏見に何度か取引を停止しようと言う声が出ました。それでも魔石取引をやめればブラトアの民が困る事に皇帝は困っておられた様です。それでアルノール公国が誕生したのを期にルトニア帝国はブラトア国との魔石取引を終わらせてその代わりにアルノール公国が取引を続ける事になったのです。
ですが、この様なあからさまな偏見で一人の竜族が窮地に追いやられるのを我々は見過ごす事は出来ません。
特にオリディア様は公国のいわば王女になられるお方です。前大公クロフト・アルノールは妹であるイリーネ様とは喧嘩別れとなってからもずっと気にかけておられました。だからこそ陰ながらドラクナール伯爵家に魔石取引を優先させて、それなのにあの男はイリーネ様を死に追いやった。申し訳ありません。オリディア様の父上なのに」
会頭が頭を下げた。
オリディアは父の事を悪く言われても気にはならなかった。
「いえ、本当の事ですから。私も父とは結婚した時に縁を切りました」
「知っています。だからオリディア様が結婚されてロードナート侯爵家との取引を再会したのです。お母様が生きておられる頃はドラクナール伯爵家と取引をしておりましたがご存知の様にお母様が亡くなられてからは取引を減らしました。その代わりの取引を引き継いだのがロードナート侯爵家でした。ですが先代のロードナート侯爵が借金に追われるようになるとその取引も他の家に変わって行きました。ですがオリディア様がロードナート侯爵家に嫁がれたので大公はまたロードナート家と取引を再会する様に指示を出されたのです。オリディア様、あなたがいらっしゃったから他ありません。今はもうクロフト大公は引退されておりますが、ロードナート侯爵があなたと離縁されるなら、ルノス商会はあの家と取引をする事はありません。あなたに同行するのはあなたのためでは無いのです。これはうちの取引の問題です。離縁書が取り交わされるまでは口を挟みません。隣室で待たせて頂きオリディア様との話が終わりましたらこちらの話をさせて頂きます。そう言う話ですのでお気になさる事はないのです」
会頭の気持ちは痛いほどわかった。
でも、離縁に話だけはやはり自分でしたいと思った。
「お話はわかりました。お気持ちはすごくうれしいんです。ですが同じ時にあの家に行く事は私は望みません。夫との離縁は自分で話をさせて欲しいんです。夫と離縁が成立したその後の取引については私は一切商会のやり方に口出しするつもりはありません」
「オリディア、あいつが何かして来たらどうする気だ?やはり一人で行かせるわけには行かない!」
エドワードが声を荒げた。
オリディアは少し考えた。本当は一人で行くのは恐い。でも、誰かを引き連れて行くのも違う気がする。
オリディアはしばらく考えて話を始めた。
「では、直接、財務局に出向くにはどうでしょう?それなら人目のありますし、話も早いはずです。署名を貰ってそのまま内務局に離縁届を提出も出来ますし」
「ああ、どうせ俺も王宮に行く用もあるし」
「エドワード様が王宮に?」
「野暮用って奴。それより離縁状さえ書かせれば後はこっちに任せてくれれば」
「いえ、自分の事を人任せには出来ませんから」
「それより王宮に何のようです?」
「いや、今度の魔石協定の話に商会関係者として行くだけだから」
エドワード様が焦ったように説明する。
「そうですか…それにしてもエドワード様ってやっぱりかなり偉い方って事ですよね?もしかして商権を半分くらい持っているとか?」
「いや、そうじゃなくて。俺はただの関係者ってだけで。なぁシュバイン、そうだと言ってくれ。じゃなきゃオリディアが誤解するだろ!」
「ええ、オリディア様エドワード様は本当にうちの身内と言うだけの」
「なっ、シュバインもそう言ってるだろ。オリディアは何も心配しなくていいんだ。俺たちは竜族同士。頼ってくれるとうれしいんだ。シュバインもそう思うだろう?」
「もちろんです。オリディア様の力になれるとすごく光栄です。オリディア様は公女様でもありますし」
バシッ!
エドワードが会頭の肩を叩いた。
「いえ、私はそんな…」
オリディアは自分がそんな身分だとは今でも信じていない。
「いきなりそんな事を言ったらオリディアが怯えるじゃないか!」
「いえ、ただ私たちはオリディア様の力になりたいんです」
「ほら、この商会のみんながそう思っているんだ。俺たちは同じ仲間だから。なっ!」
「皆さんにそんなに思って頂いて…ありがとうございます」
それでもオリディアは心からうれしいと思った。




