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第三十歩 もう一人

「とりあえず、中に入ってください!」


私は慌てて三人を教会の中へ案内した。

さっきまで誰もいなかった教会に、今は私と輝くん、それから三人の人がいる。


転移者って……こんなにいるものなんだ。


いや。


そもそも、転移者ってなんなんだろう。

私は、あの日新幹線に乗っていた。

それなのに、気がついたらこの世界にいた。

目の前にいる人たちも、同じなのだろうか。


「ほな、俺から自己紹介するわ」


輝くんが口を開いた。


「橋田輝。能力は――」


少しだけ間を置いて。


「幸運(ラッキー)!」


「……ラッキー?」


「せや。運がええらしい」


輝くんは笑った。


「正直、能力って言われてもよう分からんけどな」


「俺は一ノ瀬翼」


今度は、さっきの男の子が名乗った。


「身体強化が使える」


そう言って、軽く腕を曲げる。


「力も普通より出るし、身体も頑丈になる」


「すごい……」


私が思わず呟くと、翼くんは少しだけ笑った。


「まぁ使いこなすのに少し時間かかったけどな、君は?」


「あ……」


視線が私に集まる。


「私は……葉月です。白石葉月。」


少し迷ってから、口を開いた。


「聖女なんて呼ばれてますけど……私は、治癒魔法が使えます」


少しだけ俯く。


「今は……謹慎中ですけど」


「自分ん中で答え出たなら、もうええやろ!」


輝くんが笑った。


「メルティナさんとこ、あとで行かなあかんな」


「うん……」


なんだか、少しだけ気持ちが軽くなった。


「じゃあ、次はわたしかな」


女の子が、そっと口を開いた。


「高山陽葵です」


明るい笑顔。


「わたしは……能力とかは、ないと思います」


「ない?」


「うん。特に何かできるようになった感じもしなくて……」


「俺もな、よう分からん!」


輝くんがすぐに口を挟む。


「魔法塔ってとこのやつに調べてもろたけど、幸運(ラッキー)やって」


「魔法塔……」


ひまりさんが少し考えるように呟く。


「じゃあ、わたしも後で調べてもらえるかな……」


「ヴァルターに言っとくわ!」


輝くんが即答する。

その時、今まで黙っていた男の子が口を開いた。


「俺はリオネル」


「リオネルくん……?」


「うん」


少し照れたように笑う。


「俺はひまりについて来た!」


「え?」


「帰るまで見届けたくて……」


「帰る?」


私と輝くんが同時に声を上げた。


「私たち、帰れるの?」


「……たぶん」


ひまりさんが少しだけ困った顔をする。


「とりあえず王城に行けば何かわかると思って」


「そうなんだ……」


私は、胸の奥が少しだけざわつくのを感じた。


元の世界。


お母さん、お父さん。


おじいちゃん、おばあちゃん。


帰る……。


「明日もここで会おう」


ひまりさんが言った。

その日は、教会に私とひまりさんが残ることになった。

男の子三人は、騎士見習いの寮へ向かうことになった。


「ほな、また明日な!」


「うん。また明日」


三人を見送って、教会へ戻る。


しばらくして。


「葉月ちゃん!」


聞き慣れた声がした。


「あ、アイリちゃん」


孤児院からアイリちゃんがやって来た。


「昨日は大丈夫やった?」


「うん。大丈夫」


「そっかぁ。よかったぁ」


アイリちゃんは安心したように笑った。


そして――。


私の隣にいるひまりさんを見た。


「…………」


一瞬だけ。


アイリちゃんの目が、大きく見開かれた。


「……?」


でも、それは本当に一瞬だった。


「今日はお邪魔虫になりそうやから、私は帰るね!」


「え?」


「また明日!」


そう言って、アイリちゃんはさっさと孤児院へ戻っていった。


「……なんだったんだろう、ひまりさん?」


「さあ?」


ひまりさんも不思議そうに首を傾げた。


「さんなんて堅苦しくなくて良いよ!」

「あ、ひまり…ちゃん」

「うん!」


その日は、それ以上何も起こらなかった。


そして翌日。


教会の扉が開く。


「来たで」


輝くんだった。


その後ろには翼くんとリオネルくんと、ヴァルターさん。


「……ヴァルターさん」


ヴァルターさんは、私たちを見ると少し複雑そうな顔をした。


「そうか……」


そして、小さく呟く。


「帰るために、王城へ……」


何か言いたそうだった。

でも、その言葉の続きが出てくることはなかった。


その時。


「あの……」


教会の扉が、ゆっくりと開いた。


「みなさん、転移者って聞いて……」


アイリちゃんだった。


少し緊張したように、教会の中へ入ってくる。


「ずっと……ずっと言おうか迷ってたんだけど」


私たち全員がアイリちゃんを見る。

アイリちゃんは、ゆっくりと息を吸った。


「私も……実は、転移して来たんです」


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