第二十三歩 巡り合わせ
「テル! そっちの箱、倉庫に運んどけ!」
「はいはい、今行くわ!」
騎士団に来てから、何日か経った。
最初は何もかもが訳分からんかった。
王都。騎士団。魔法。転移者。
知らない言葉ばっかりで、正直、頭がおかしくなりそうやった。
けど――。
「よいしょっと」
木箱を抱えて、倉庫へ運ぶ。
「……これ、結構重いやん」
そう呟きながら木箱を運ぶ。
転移者にはなんらかの特別な能力が開花することが多いらしい。最初はおとぎ話みたいでちょっとテンション上がったけど、俺の能力はいまいちパッとこないものやった。
幸運
それが俺の能力らしい。転んだ先がふわふわの草だったり、無くしたものがすぐ見つかったり。……地味すぎやろ!
なんか別のものの可能性はないかヴァルターにきくと、お前にはそれくらいがピッタリだろとニヤニヤしながらタバコを吸い出した。むかつくが、魔法塔の知り合いというやつに見てもらった結果やっぱり俺の能力はこんなしょぼいものだった。
「テル、次は装備庫!」
「また!?」
「見習いだろ!」
「人使い荒すぎやろ!」
笑い声が聞こえる。
俺も笑った。
……なんやかんやで、慣れてきた。
騎士見習いって言われたときは本気で「はぁ!?」ってなったけど、飯は食わせてもらえるし、寝る場所もある。
仕事は多い。
めちゃくちゃ多い。
でも、何もせずに光のことばっかり考えてるよりは、今はこうして身体を動かしてる方がええ。
「……光」
ふと、手を止める。
光は今どこにいるんやろ。
俺と同じように、この世界に来てるんやろか。
それとも――。
「……あかんあかん」
首を振る。
考えても答えは出ない。
だったら、今できることをやるしかない。
「おーい、テル!」
「はいはい、今行くって!」
また呼ばれた。
俺は倉庫を出る。
そんな俺の様子を、少し離れたところから見ている男がいた。
「……馴染むのが早いな」
ヴァルターは小さく呟いて、煙草に火をつける。
転移者。
本来なら王城へ連れていくべき存在。
それでも、あの日の輝を見て、ヴァルターは無理やり連れて行くことをしなかった。
妹を探したい。
その気持ちを、ヴァルターは知っている。
だからこそ、せめてここにいる間くらいは――。
「おい、輝」
「ん?」
「今日はもう上がれ」
「え、まだ仕事残ってるやろ?」
「いい」
「珍し。なんか悪いもんでも食ったん?」
「うるせえ」
ヴァルターは煙草を灰皿に押し付ける。
「転移したばっかなんだ。無理して倒れられたら面倒だからな」
「……ふーん」
輝は少しだけ笑った。
「なんや。意外と優しいやん」
「明日の仕事、倍にするぞ」
「やっぱ撤回! めっちゃ怖いわ!」
騎士団の中に笑い声が響く。
「……よし」
ヴァルターが立ち上がる。
「今日はここで切り上げて教会寄るぞー」
「教会?」
「ちょっと用事がある」
「俺も?」
「お前もだ」
「なんでやねん」
「見習いだからだ」
「その理屈便利すぎるやろ!」
文句を言いながら、俺はヴァルターの後をついていった。
王都の外れにある、小さな教会。
扉を開ける。
中には何人かの人がいた。
その中に――。
一人の少女がいた。
「…………」
俺と目が合った瞬間。
少女の肩が、びくっと跳ねる。
怯えたように、こちらを見る。パクパクと口を開けて何か言いそうな雰囲気を醸し出しつつもなんも言ってこない。
「なんや、まぎらわしいやつやな」
そうこぼすと少女は目を見開いてつぶやいた。
「ご、ごりごりの関西弁…」




