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第二十歩 噂

王都を目指してセリューを出てから、数日が経った。俺たちは道中の宿を転々としながら、少しずつ王都へ近づいていた。


最初の頃は、馬車の荷台に三人で座っているだけで妙に気まずかった。


でも、何日も一緒にいると、それも少しずつ変わっていく。


「翼くん、それ食べないの?」

「ん? これ?」

「うん」

「いる?」

「いいの?」

「俺、もう腹いっぱいだから」

「じゃあ、もらうね」


そんな何気ない会話も増えた。

リオネルとも、少しずつ話すようになった。

ゲームの話をすると、意外と興味を持ってくれる。


「魔法を使うゲーム?」

「ああ。剣とか魔法とか使って、魔物を倒すんだ」

「へぇー。」

「リオネル、絶対ハマると思う」

「もうすでに気になってるね。」

「ひまり!そ、そんなことねえよ。

……そのゲームってやつは他にどんなのがあんだ?」

「リオネルー、素直になりなよぉ」


三人で笑う。そんな時間が、少しずつ増えていった。


もちろん、司のことを忘れたわけじゃない。


むしろ、三人で話しているときほど思い出す。


司がいたら、きっとこいつらとも普通に話していたんだろうな。司は俺よりも気さくだからきっとリオネルのことも懐柔してたんじゃねえかな。


そんなことを考えながら、俺は、俺たちは旅を続けた。


そして――。


「あぁ、お客さん。王都目指してるんですね。へぇ、セリューから。なら、もう明日には王都が見えるかもしれませんね」


宿屋の主人がそう言った。


「本当ですか?」


ひまりが嬉しそうに聞き返す。


「ああ。ここからなら、もうそう遠くないよ」

「そっか……」


ひまりはにこにこしながら窓の外を眺める。


「王都ってどんな感じなんだろ?」


俺も窓の外を見る。


王都。


そこに行けば、転移者についてもっと詳しいことが分かる。

もしかしたら、司の手がかりも。


「……いよいよだな」


「うん」


その日の夜。


夕食を終えた俺たちは、話し足りず宿の食堂に残っていた。

他の客たちが酒を飲みながら話している。なんとなく気になって、俺は耳を傾けた。


「そういえば最近、王都に聖女様が現れたらしいぞ」

「聖女?」

「あぁ、聖女だ。」


思わず立ち上がった。ガタッと椅子が鳴って、俺は周囲に会釈しながら座り直す。


「なんでも、すごい治癒魔法を使うらしい」

「教会に行けば、聖女様が怪我や病気を治してくれるって話だ」

「本当かよ?」

「さあな。俺も人から聞いただけだ」


男たちは笑いながら話している。

けれど、その会話を聞いた俺は隣に座って、同じように話を聞いていたひまりを振り返る。

ひまりも、こちらを見ていた。

リオネルも俺らをみて察したんだろう。


「…………」


三人の視線が交わる。


聖女。


王都に現れた。

すごい治癒魔法。

この世界には、俺たちの知らない力がある。


でも――。


俺たちは知っている。


この世界には、転移者がいる。


そして。

この世界に来た人間の中には、特別な力を持つ者もいる。


「……まさか」


ひまりが小さく呟く。


「もしかして……」


俺も、同じことを考えていた。


リオネルが息を呑む。


「……他の転移者?」


三人とも、それ以上は何も言わなかった。

ただ、顔を見合わせる。


王都。


そこには――。


俺たちの知らない、もう一人の転移者がいるのかもしれない。

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