↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/34

第十歩 兆し

「最近、傭兵が駆り出されすぎなんだよなぁ」


昼食の仕込みをしながら、ダスキンさんがぼやいていた。


「そんなに忙しいんですか?」

「忙しいっていうか、森の方で何かあったらしくてな。ここ最近、呼び出される回数が増えてるんだよ」


「森?」


リオネルが顔を上げる。


「森との境目でなんかあったのかな?」

「さぁな。俺たちにも詳しいことは知らされてない。ただ、最近ちょっと魔獣が多いらしい」

「魔獣って、そんなに出るものなの?」


わたしが聞くと、リオネルが不思議そうな顔をした。


「森の近くなら普通に出るだろ」

「そうなんだ」

「でも、セリューの町まで来ることはほとんどないけどな」


ダスキンさんが串をひっくり返しながら頷く。


「まぁ、警備隊もいるし、森との境目には傭兵もいる。そうそう町まで入ってくることはねぇよ」

「じゃあ、最近はちょっと変なんですね」

「そういうこった」


ダスキンさんはそう言って、また串焼きに視線を戻した。

その日の話は、それで終わった。

少なくとも、わたしはそう思っていた。


――数日後。


「いらっしゃいませー!」


いつものように「ロッカ」が一番忙しくなる昼時。

わたしは料理を運んだり、空いたお皿を片付けたりしながら店の中を走り回っていた。


「ひまりちゃん、こっち空いたよ!」

「はーい!」


「ひまりー、三番テーブルに水!」

「今持ってくー!」


いつもと変わらない。

そう思っていた。


「最近、森の方が騒がしいらしいぞ」


「また魔獣が出たって?」


「昨日も傭兵が何人か向かったらしい」


お客さんたちの会話が耳に入る。

前よりも「魔獣」という言葉を聞くことが増えた気がする。

でも、みんなそこまで慌ててはいない。

この街では、魔獣は森の向こうにいるもの。

そういうものだと思っているようだった。


バンッ


突然、店の扉が勢いよく開いた。


「え?」


息を切らした男性が、店の中を見回している。


「アルバートさん! うちの子、見かけませんでしたか?」

「……どうしたんだ?」


アルバートさんが慌てて厨房から出てくる。


「朝遊びに行ったきり帰ってこないんです。いつもなら昼には戻ってくるのに……」


「どこか遊びに行ったんじゃないのか?」

「それが……」


男性は何度も息を整えようとしながら、言葉を続けた。


「今日友達と一緒に、森との境目まで行ったみたいなんです」


「森に?」


リオネルが反応した。


「そうなんです。度胸試しだとか言って……森には入らずに、町との境目まで行って帰ってくるだけだって……」


「その友達は?」


アルバートさんが聞く。


「それが……その子たちも帰って来てなくて」


店の中が静まり返った。

わたしの頭に、あの子の顔が浮かんだ。

少し前、街を歩いていたとき。


「ひまりねえちゃん、オレ昨日誕生日で6歳になったんだ! 『ロッカ』でケーキ出してよ!」


そう言って笑っていた、あの子。


「……あの子」


思わず呟いた。いつになくリオネルが真剣な顔をしている。


「こんな時期に森の近くにいったのか?」


ふとドアの外が騒がしくなってまたドアが開いた。


「「うわぁぁぁん」」


小さな子供たちが泣きながら「ロッカ」に駆け込んできた。


「マ、マークくんが、」


男性が目を見開く。


「君たち!マークと一緒に遊びに行ったんじゃ…?」


「オレたち止めたのに、マーくんが勝手に」

「もう6歳だから平気だって」




「森に入って帰ってこないんだ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。