1話
「え?お前復帰するの?」
5年前にゲームを引退してしまった友人が復帰するかもと聞き、声が高くなる
「まあ、結局このゲーム以外にフルダイブ技術を実現したゲームは現れなかったし、
それにもう10周年だろ?
色々アプデ入って、前と変わってるだろうし、もう一度最初からやって見るわw」
世界で唯一のVRMMO、「リアルワールドオンライン」
このゲームは五感の完全再現に成功したゲームで、
現実の時間の3倍の速度で進む、いわばもう一つの現実だ
まあ、五感を完全に現実と同じにしたら、
現実での感覚のズレや過度な痛みなどで支障がでるため、設定で感度は落としている
それでも他を卓越した技術力によって、
ついに10周年
「ああ、今回で30回目かあ〜」
「え?30回って何が?」
「人魔大戦だよ、人魔大戦!
毎年恒例の異種族狩りイベント、ほら、勇者とか魔王とか決まるやつ」
「ああ、あれね!せっかくだし参加しようかな...?」
「じゃあ、それまでにある程度レベル上げときたいか?
あれ、今じゃ500レベルのやつらが何人もいるから、
余波で死なない程度にスキルと装備そろえたほうがいいだろ」
このゲームは職業の合計レベルが500まで上げられる
ステータスとかスキルの設定が独特で、
職業ごとに行動による熟練度があり、熟練度を上げることでスキルの欠片を手に入れられる
手に入れた欠片を2個から10個合成することでスキルになり、
攻撃系スキルに使用した欠片の数で、
攻撃力、速度などを総合した筋力が上昇し、
防御系スキルに使用した欠片の数で、
物理防御の耐久が上昇、
魔法系スキルに使用した欠片の数で、
MPと魔法スキルの火力と魔法スキルに対する耐性を総合した魔力が上昇する
「あ〜、スキルは考える楽しみがあるし...
じゃあ、装備だけもらえるか?」
「OK!使わなくなったやつあげるから、フレンド申請と合流場所のメッセージ送ってくれ、
これが俺のフレンドIDな」
「サンキュー...!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人魔大戦当日、リリース10周年ということで、過去最大規模の人数が集まっている
ブオオオオオーー〜〜〜!!!
開戦の笛がなった
「うおおおお!!ぶっ殺してやらあーー〜〜!!!!」
人類軍、魔物軍、両軍ともに雄叫びとともに走っていく
あと30秒と経たない内に軍は衝突するし、
10秒以内にトップ層の争いが始まるだろう...
だが、そんな瞬間は来なかった
先程まで聞こえていた雄叫びと地響きは予兆もなく姿を消し、
俺は白い空間に立っていた
なんだ、どうなっている?
そんな疑問の声も体の外へ飛び出すことはなかった
首は動いていないはずなのに、あたりを見回すことができる...
そして自分は一人ではなく、
他のプレイヤー、そして、スーツを着た男性、制服を着た学生、作業着のおじさん、小学生や幼稚園生、
はてには赤子も存在しており、
全体の数で言ったらファンタジーな格好をしたプレイヤーの方が場違い感があった
脈絡がなく、
これはイベントなのかと疑問に思う...
が、だれもそんな疑問に答えてくれる存在はいない
世界観を壊すようなイベント、
そんなことあるのか?
なら...
これは夢に違いない
夢ならば突然とんでもないことが起きてもおかしくなく、
自覚できるのはこれが明晰夢だからだ
そう思うと落ち着けた
ぐいーん...と、
空が、地面が、空間が動き始める
光が強くなり、見える範囲が広がるほどに底しれぬ闇が広がる。
その光と闇はまるで俺達を分別するかのようであり、
気がつけば俺は目を閉じていた。
夢の中で寝るというのもおかしなことだが、
きっと目が覚めたらイベントが終わっているのだ
数日前から熟練度を上げたり装備を強化したりで睡眠時間が大きく削れていた...
だからイベントが始まった途端に意識を失ってしまった
リスポーン地点を想像し、
まぶたを持ち上げる
...リアルだ
リアルすぎる
本来感じ得ないどっしりとした装備の重み、
触れる柔らかな空気、
飲み込むつば、
脳に伝わる全ての情報が、今、このファンタジーな装備を身にまとい、
草原に一人立っているこの状況を現実だと認識している
否定できない現実が世界から色彩を奪い、
酸素を薄くし、
そして、デスワームとして...
「って、デスワーム?!?」
ゴアアーー〜〜ッ!
横に飛び避け、
デスワームがUターンして、完全に俺を餌として認識していることを認識する
「スキルって使えるかな...?」
試しに使ってみるのは、もちろん最強の技、
...ではなく、後隙が少なく、一番気に入っている技でいく
「”砂中の針”」
ゴアア...ッ!
よし!ステルスで高速の突きをして、毒を注入するスキル”砂中の針”
しっかり透明化して攻撃できたし、ランダム毒でデスワームの動きが止まっている
「ステータス......メニュー.........どっちも出ないか
なら、スキル名呼ばなくてもスキル発動できるか調べとくか」
ゴ、ゴアア...
デスワームくんはサンドバックが決定した
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