10話
sideオリジン
「ふむ、何者だ?」
支配されている同胞を救い出し、
俺の守護する都市に連れて行く途中、
道を塞ぐように黒く、ゴツゴツとした、生臭い二足歩行の生き物がいた
「かつての大海求め、大空を制し、
大陸を火の海とした...
深き暗闇から弾かれ、
満ちる毒に適応し、
祝福を授かった...
我は、我らは、マレ・ペリトゥス...
貴様らのあふれるその精気!
喰らい、犯し、彼方への礎になってもらおうッ!!」
いきなり現れた怪物は予想に反して声を発し、
しかし、会話は成立せず、自らの目的だけを伝えて襲いかかってくる
「”五十之戒律”、何人も神のもとに武器を持てない、ッ!」
怪物の手にある三叉の槍を落とそうとするが、
スキルを発動したはずなのに相手は武器を落とすこと無く、そのまま突きを放つ
パッシブスキル「守護者之不退」により、守る存在がいればダメージを軽減でき、
最大で50%までいく
ゲーム時代とはことなり、守る存在の定義が、範囲、対象、ともに変わったため、
今は常時半減状態だ
槍は俺の皮膚を貫通することはなかったが、
この怪物はかなり素早い
中堅プレイヤー水準の速度を出しており、対処出来ないわけではないが、
その隙に後ろにいる同胞を狙われては困る
「〝知ヲ持ツモノ〟〝力ヲ持ツモノ〟〝理解ノ放棄〟〝対話ノ放棄〟
〝責務ヲ放棄スルモノ〟〝其ノ罰ヲ受ケヨ〟......”責務之圧罰”!!」
詠唱を必要とする強力な魔法スキルを発動、
人型で、会話を無視された場合に発動できるデバフ
100レベル代なら圧死するはずだが...
「かなり頑丈だな...この状態でも普通に動けるとは」
もちろん遅くはなっているが、膝をついて止まったり、
苦しむ様子もなく、攻撃してくる
先程から近接格闘を続けていて、気がついたのだが、
槍は武器ではなく、怪物の身体の一部のようで、
躱したと思ったら途中で曲がって軌道がずれ、
弾こうとしたら穂先がこちらを向く
「珍妙な生き物め」
「我ら、選ばれし種、
たかが資源が我と対等に打ち合うとは...!
危険な、呪われた種である
だが、その呪われた力さえも祝福の下に屈するのだッ!!
”豊穣讃える四海”ッ...」
ッ!
スキルを使うだと?!
つまり...
「よくも人間を食ったな?!
コロすッ!」
怪物はスキルを発動し、
足元から、四元素である、土、水、火、風、
属性の海が出現する
岩が濁流の如く押し寄せ、
それを抜けた先に水、その上には爆炎、
さらに上には真空に無数の風の刃が飛んでくる
これは結界型のスキルで、異空間のようになっているため、
上下左右、
どこから逃れようとしても避けられない
が、オリジンの目的は第一に地球人の保護、
次に外敵の排除、
つまり、避ける、は背後にいる人をあたる危険があるため
最初から選択肢に入っていない...
つまり!
「“強制原点回帰”ッ!!!」
パァーーーーーーー......ッ!!
バリンッ!
正面からの突破、攻撃の破壊!
どこからともなくラッパが出現し、
空を揺らすけたたましい音を響かせると、
怪物が生み出した“海”は、全てが血に変わり、
炎が鞭のように唸り、破壊し、
亜空間が砕ける...
周囲を確認し、
怪物の使用したスキルが無差別タイプではなく、
対象を引き摺り込むものだったのを分かると、
ミミズが這ったような赤い線が浮かんでいる怪物に接近する
体の構造がトリッキーな動きをしているが、
範囲攻撃をされるよりは対処が簡単だ
「“武芸百般・唐国”」
オリジンは円を用いた近接格闘スキル
ほぼ密着状態、ゼロ距離での戦闘が可能であり、
攻撃を繋げるほど、威力が上がるコンボ系でもある
「“龍槍蒼天・綿津見”、神の祝福をここにィぃッー!!!」
対する怪物は
多段で流れるように突き、叩き斬るスキルを発動
刃先に水が追従し、彼から剥がれ落ちた鱗が混ざり、
槍の後にそれが直撃する
これは、単純に攻撃力が上がるだけでなく、
鱗混じりの水は盾にもなる
二者が激突、威力は互角!
ただ、耐久には差がある
初撃で皮膚を貫けなかったことからも分かるように、
オリジンは硬い、打ち合っても大したダメージは受けず、
逆にコンボを稼いで火力を上げていく
対する怪物は、
代表の鱗と老廃物とが固まってできた天然の鎧、
それこそが彼の防御力であり、
衝撃は貫通する
打ち合うほどにダメージは目に見えて蓄積し、
手に血が滲み、内臓をやられている
だが、ならオリジンが優勢かと言うと、
実はそうではない
彼の今の力は、かつての自分、昔のキャラ、
つまり、今の彼ではない
あくまでもそれを模倣しているだけ
...真似は本物に劣る
簡単に言えば、
ステータスは本物より低いし、
スキルの使用にもペナルティがある
一度スキルを使用すると、それから一定時間後に、
魂から来る、避けられない、耐えられない痛みが生じる
魂から来るものというのは本人も理解しており、
そのため、今は痛みだけだが、
今後悪化する可能性があることも理解している
彼はさっさと決着を付けてしまいたいのだ
だが、怪物はそれをさせない
オリジンの事情は知らないが、
彼は地球が吸収されるより1000年前、
前回の吸収された世界の住民であり、
それからずっと、故郷の海を求めて戦いを続けてきた戦士
相手が焦っている事はすぐにわかった
だから、焦らない、
持久戦に持ち込む、海に沈んだ世界では、
じっと待つことは狩りの基本だからだ...
ブックマーク、評価、感想、お願いします




