金色の包み紙
2月15日、バレンタインデーの翌日のことだ。
当日じゃない。翌日だ。
当日は何もなかった。何もしなかった。健吾にチョコを渡そうかと思ったけど、「義理でも重くなる」と木村に止められた。
正しい判断だと思った。
翌日の放課後、宮田が教室に残っていた。いつもは部活に行く時間なのに、まだ自分の席に座っていた。
健吾と木村はもう帰っていた。
教室には僕と宮田と、あと後ろの方に2人くらいしかいなかった。
帰ろうとして鞄を持ったとき、宮田が「蒼、ちょっといい?」と言った。
振り返った。宮田が立っていた。手に何か持っていた。
小さい袋だった。紙袋。白い。リボンはついていなかった。
「昨日クラス全員にあげたんだけど、蒼に渡し忘れてさ」
宮田はそう言った。
宮田が目を逸らすのを、僕は初めて見た。
「……ありがとう」
受け取った。袋は軽かった。中身は小さいチョコレートが3粒くらいだと思った。
「いや、余りだから」と宮田はまた言った。
「うん」
「……じゃ、部活行ってくる」
宮田は鞄を取って、教室を出た。
僕は少しの間、その場に立っていた。
胸のあたりがうるさかった。
袋を鞄に入れた。家に帰るまで開けなかった。
部屋に入って、ベッドに座って、袋を開けた。
チョコレートが3粒入っていた。丸くて、小さくて、金色の包み紙だった。
それを見て、しばらく何もできなかった。
翌日、宮田は普通だった。いつも通りだった。
英語のプリントを持って「ここわかんない」と来た。いつも通りだった。
僕も普通にした。いつも通りにした。
宮田が僕に渡してきた。
それだけのことを、ずっと考えていた。




