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追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
キュンキュン◇本命チョコの食べすぎ注意!

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峠の村

村の門をくぐった。


石畳の道。両側に並ぶ建物。アダマ村より少し大きい。街道が交差する中継点だから、旅人向けの店も多いのだろう。


「ここでお別れだな」


ニコが言った。


「俺たちは荷を届けてくる。宿はあっちの通りにいくつかある」


指さした方向に、看板がいくつか見えた。


「……ありがとうございました」


「おう。気をつけてな」


ゲルトが軽く手を上げた。グレイとモリーが荷車を引いて、通りの奥へ消えていく。





「……まず、ギルド?」


ミラが聞いた。


「うん。クエストを探さないと」


お金はまだ少しある。でも、宿代と食費を考えると余裕はない。





ギルドは村の中心にあった。


扉を開ける。中は思ったより広い。カウンターがあって、奥に掲示板が見える。冒険者らしい人が何人かいた。


受付に近づいた。


「すみません。クエストを探しているんですが」


「登録証を」


リリアはギルドカードを出した。受付の女性がそれを見た。


「……ヒーラー。ソロ?」


「はい」


「今、ソロで受けられるクエストはないわね」


「……え?」


「採集系は全部止めてるの。街道警備だけ。パーティー必須」


掲示板を見る。確かに、貼ってある依頼はどれも「要三名以上」「護衛経験者優遇」と書いてある。


「どうして採集が……」


「天狼よ」


受付の女性が声を落とした。


「北の街道に出てるの。ここ数日で三件、輸送隊が襲われた」





「……天狼」


ミラが呟いた。


「狼の群れ。でも普通の狼じゃない。統率が取れてて、罠も通じない」


「いつから?」


「十日くらい前から。最初は一頭、二頭だったのが、今は十頭以上の群れで動いてる」


十頭以上。


「被害は?」


「死者は出てない。でも怪我人が何人も。荷を捨てて逃げてきた隊もある」


受付の女性は溜息をついた。


「討伐隊を出したんだけど、まだ戻ってこないの」





ギルドを出た。


「……どうしよう」


ミラが見上げてくる。


クエストがない。でも、やることはある。


「先に買い物しよう」


「買い物?」


「救急鞄の中身。足りないものがあるから」


アダマ村を出るとき、グレタばあさんに必要なものは譲ってきた。残っているのは最小限。包帯は洗って消毒してあるけど、使い古しばかり。





薬屋は、村の中心から少し外れたところにあった。


扉を開けると、薬草の匂いがした。


「すみません。包帯と傷薬を」


「はいはい」


店主は年配の女性だった。棚から包帯を出してくれる。


「傷薬は……これと、これ。あと消毒用のお酒もいる?」


「お願いします」


「ああ、それがね」


店主が困った顔をした。


「強いお酒、今あんまり置いてないのよ。北から入ってくるんだけど、街道が止まっててね」


「……狼ですか」


「そう。輸送隊が来ないから、在庫だけでやりくりしてるの」


棚を見る。確かに、お酒の瓶は数本しかない。


「これだけでいい?」


小さな瓶を一本、出してくれた。


「……はい。ありがとうございます」





会計を待っている間、ミラが店内を見回していた。


「リリア」


「うん?」


「……あれ」


ミラが指さす。棚の隅に、小さなナイフが並んでいた。


「ナイフ?」


「……薬草を切るやつ」


ミラがじっと見ている。


「欲しいの?」


「……」


ミラは首を振った。


「いい。今はお金ないし」


「……そうだね」


でも、ミラの目がナイフから離れなかった。


——役に立つもの。


峠で言っていた言葉を思い出す。


「……今度ね。お金ができたら」


「……うん」


ミラが頷いた。残念そうな顔。





店を出ると、通りの先に見覚えのある荷車が止まっていた。


「あ」


グレイとモリーだ。荷車の傍で、ゲルトが荷物を積み直している。


「ゲルトさん」


声をかけた。ゲルトが振り返る。


「……ああ」


短く頷いた。


「もう戻るんですか?」


「明日の朝には出る」


荷車を見る。来たときより、荷が少ない。


「……少ないですね」


「北から来るはずの荷がな。届いてねえ」


ゲルトはグレイの首を撫でた。


「街道が止まってる。向こうから来る便も、ここで足止めだ」


「……」


「空荷で帰るよりはマシだが」


ニコがどこからか戻ってきた。


「おう、二人とも。クエストは見つかったか?」


「……ソロで受けられるのがなくて」


「だろうな。今この村、ピリピリしてるからな」


ニコが言った。


「まあ、俺たちは荷が少なくても報酬は同じだからな。グレイとモリーは喜んでるかもしれねえ」


グレイが耳をぴくりと動かした。聞こえてるのかもしれない。


「気をつけろよ。何かあったらギルドに駆け込め」


「……はい」


「じゃあな」


ゲルトが軽く手を上げた。





宿を見つけた。


「一泊、二人で」


「銀貨三枚」


思ったより高い。でも、他を探す余裕もない。


「……お願いします」


部屋は狭かった。ベッドが一つと、小さな窓。でも、清潔ではある。


荷物を置いた。


救急鞄に新しい包帯と傷薬を入れる。消毒用のお酒は小瓶一本だけ。心もとないけど、ないよりはいい。


ミラが隣に座る。





「リリア」


「うん」


「……クエスト、ないね」


「うん」


「どうするの?」


「……」


答えられなかった。


パーティーを組めばいい。でも、誰と? 知らない人と?


ヒーラーは需要がある。声をかければ、組んでくれるパーティーはあるかもしれない。


でも。


「明日、もう一度ギルドに行ってみる。何か変わってるかもしれないし」


「……うん」


ミラが頷いた。不安そうな顔。


リリアはミラの頭に手を置いた。


「大丈夫。なんとかなるから」


自分に言い聞かせるように、そう言った。





窓の外が暗くなっていく。


遠くで、犬の遠吠えが聞こえた。


いや——犬じゃない。


狼だ。





夜。


ミラはもう眠っている。


リリアは窓の外を見ていた。月が出ている。雲が流れていく。


——北で狼が出たらしい。


ニコの言葉を思い出す。


——でかいのがいたって話だ。


討伐隊は、まだ戻ってこない。


嫌な予感がした。


この村で、何かが起きようとしている。

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