表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ガツン!◇触れずに届く友情パワー!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/108

身辺調査

数日後、ギルド支部の調査員室。


マーカスは、報告書を読んでいる。


『アダマ村ゴーレム出現事件 報告書』


「……また、か」


溜息をつく。



報告書の内容は、こうだ。


アダマ村にてゴーレム出現。家屋三軒が倒壊。負傷者多数。死者なし。


ゴーレムは村の封印師により封印。ただし、封印の前段階として、ゴーレムの魔石を破壊した者がいる模様。


目撃証言によると、「小柄な女性が杖を掲げた。光が走って、ゴーレムの胸が砕けた」とのこと。


当該女性は、旅のヒーラーと名乗っていた。


「……ヒーラー」


報告書を置く。


「……また、あの女か」



別の報告書を引っ張り出す。


『ミーティア村 ワイト事件』


『クッパーフェルト鉱山 魚人襲撃事件』


『ノイエンブルク スライム成り代わり事件』


『オーク砦 賞金首突然死事件』


全ての報告書に、共通点がある。


旅のヒーラー。小柄な女性。常識では考えられない方法で、モンスターを撃退。


マーカスは、頭を掻く。


「俺が現場に着く頃には、いつも片付いてる」



部屋の扉が開く。


「マーカス、また唸ってるのか」


同僚のベルクが入ってくる。大柄な男だ。調査員歴はマーカスより長い。


「ああ。例のヒーラーだ」


ベルクが、報告書を覗き込む。


「……杖を掲げたらゴーレムが砕けた?」


「そう書いてある」


「……嘘だろ」


「俺もそう思う。でも、目撃者が複数いる」


ベルクが、腕を組む。


「……何者なんだ、そいつは」


「さあな」


マーカスが、報告書をめくる。


「名前はリリア。ジョブはヒーラー。それ以外は分からん」


「所属パーティーは」


「なし。ソロで旅をしてる。最近は、子供を一人連れてるらしい」


「子供?」


「オーク砦で保護した子供だ。親を失ったらしい」


ベルクが、眉をひそめる。


「……ヒーラーが子供を連れて旅? 危険すぎないか」


「俺もそう思う。でも」


マーカスが、窓の外を見る。


「あいつの行く先々で、人が助かってる。それは事実だ」


「……」


「モンスターは倒される。村は救われる。怪我人は治される。死者は最小限」


「……」


「やってることは、正しいんだ。多分」


ベルクが、溜息をつく。


「……そもそも、本当にヒーラーなのか?」


「疑うのは分かる。俺も調べた」


マーカスが、別の書類を取り出す。


「魔法学校の卒業記録。リリア・ファーレンハイト。ジョブはヒーラー。間違いない」


「成績は」


「回復魔法は優秀。それ以外は……初歩止まりだ。攻撃魔法の適性はほぼない」


ベルクが眉をひそめる。


「……じゃあ、ジョブを変えたんじゃないのか」


「履歴なし。戦士の訓練所にも名前はなかった」


「モンクは?」


「それも調べた。寺院はヒーラーとモンクの両方に関わってるからな。登録の混同もあるし、実際に転向する例もある」


「で?」


「どこの門下にも、名前はなかった」


「……」


「どこで何を学んだのか、分からん。記録上は、ただのヒーラーだ」


ベルクが腕を組む。


「記録上は、な」


「ああ。記録上は」


マーカスが、報告書を閉じる。


「でも、事実として人を救ってる。それだけは確かだ」



ベルクが、椅子に座る。


「で、どうするんだ」


「どうもしない。報告書は処理した。俺の仕事は終わりだ」


「追わないのか」


「追ってどうする。事件は解決してる。被害者は救われてる。俺が出る幕はない」


マーカスが、報告書を棚に戻す。


「ただ」


「ただ?」


「いつか会えたら、聞いてみたいことはある」


「何を」


「お前は何者なんだ、って」


ベルクが、肩をすくめる。


「……まあ、そのうち分かるだろ」


「だといいがな」



その頃。


北へ向かう街道を、二つの影が歩いている。


冬の空は青く晴れて、吐く息が白い。


道の両側には枯れ草が広がっている。遠くに山が見える。雪を被って、白く光っている。


「……リリアさん」


「なに」


「……あったかいね」


小さな手が、こちらの手を握っていた。


ぶかぶかの手袋。マルタが繕ってくれたもの。


「……うん」


握り返した。


道は続いている。


どこまでも、どこまでも。


次の村まで、あと少し。


その先に何があるかは、まだ分からない。


でも——隣に、小さな足音がある。


それだけで、今は十分だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ