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追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ガツン!◇触れずに届く友情パワー!

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ESWL(体外衝撃波結石破砕装置)

エステルを、死なせたくない。


ゴーレムの腕が迫っている。関節が逆向きに曲がった、人間にはありえない形。エステルは動かない。目を閉じたまま、ゴーレムの背中に手を押し当てている。意識は向こう側にあって、こちらの声は届かない。


立ち上がれない。何度も光の塊を作って、自分の腕が重くなっている。動けない。


間に合わない。


最終救護ラストレスキュー



世界が、止まった。


音が消える。空気が凍りつく。ゴーレムの腕が、空中で静止している。


声が聞こえた。


——助けて。


——この子を、助けて。


誰の声か分からない。断片的で、遠くて、でも確かに聞こえた。


同時に、別の光が見えた。暗闇の中に、白い服を着た人影。誰かを治そうとしている。


ヒーラーだ。


どこの世界の、いつの時代の人か分からない。でも、同じ仕事をしている。同じ願いを持っている。その想いだけが、繋がっている。


何かが、手の中に生まれた。細長い棒のような形。冷たい金属の感触。見たことのない道具。


さっきの声が気になる。でも、今はそれどころじゃない。


意識が、戻っていく。



それは——見えない槌であった。

肉を傷つけず、骨を砕かず、ただ石だけを粉々にする。



体外(E)衝撃波(S)結石(W)破砕装置(L)——


1980年、ドイツの泌尿器科医クリスティアン・シャウシーが世界で初めて臨床に成功した。


腎臓結石。尿路結石。体内にできた石を、メスを使わずに砕く技術。


切らずに治す。傷つけずに壊す。


泌尿器科医が生み出した、石を砕く治療器具——すなわち、ヒーラーが装備可能な『治療器具』である!!




世界が動き出した。


ゴーレムの腕が、エステルに向かって落ちてくる。


体が動いていた。考えるより先に。倒れたまま腕を伸ばし、手の中の棒を落ちてくる腕に向ける。


親指が、突起を押し込んだ。


棒が震えた。手のひらに、細かい振動が伝わってくる。


何かが走った。棒の先から、目には見えない力が。


泥の腕に触れた瞬間——内側から亀裂が走った。


表面からではない。芯から。腕に埋め込まれた魔石を中心に、放射状に崩れていく。泥が飛び散り、破片が宙を舞う。エステルの頭上を、砕けた泥が通り過ぎていった。



間に合った。


息を吐く。手が震えている。エステルはまだ目を閉じたまま、ゴーレムの背中に手を押し当てている。封印を保ち続けている。


助かった。



ギィ、と音がした。


ゴーレムの足だ。膝をついたまま動かなかった足が、軋んでいる。さっき腕が動き出した時と、同じ音。関節が組み替わろうとしている。本体は封じられているのに、足だけが別の生き物のように蠢き始めている。


エステルは動けない。逃げられない。足が動き出したら、今度こそ間に合わない。


壊すしかない。魔石を。ゴーレムの核を。


でも、どこにある?



エステルが意識を送り込んでいる先。そこに、核があるはず。


目を閉じた。意識を、そちらに向ける。



暗い。


エステルの意識が、細い糸のように伸びている。ゴーレムの中へ。深く、深く。その糸を辿っていく。冷たい。泥の中を泳いでいるような感覚。重くて、暗くて、どこまでも続いている。


魔石の気配がある。一つじゃない。腕にも、足にも、胸にも。主要なパーツのあちこちに、魔石が埋め込まれている。


どこかに、それらを束ねる核があるはず。すべての魔石に魔力を送り、状況に応じて指示を出す中枢。でも、数が多すぎる。どれが本体か分からない。



そのとき、また声が聞こえた。


——この子を、助けて。


さっきより、鮮明だった。


ヒーラーの声だ。魔石の冷たさとは違う。温かい。誰かを想う気持ちが、伝わってくる。


声を辿る。奥へ。奥へ。


光が見えた。



女性だった。


銀色の髪。閉じた瞼。静かに佇んでいる。動かない。息をしているようにも見えない。


この人が、あの声の主。ずっと誰かを想って、ここにいた。


「この子」——エステルのことだろうか。


その人の後ろに、石が見えた。拳より少し大きいくらいの、黒い石。鈍く光っている。他の魔石より、ずっと大きい。


これが、中枢。



ギィィ、と音が響いた。


現実の音。ゴーレムの足が、動き始めている。時間がない。



目を開けた。


体を引きずって、ゴーレムの胸に近づく。膝をついた姿勢。胸が、目の前にある。手の中の棒を、胸に押し当てた。さっき見えた、あの石がここにある。


肉を傷つけず、骨を砕かず、ただ石だけを粉々にする。


泥は、肉じゃない。魔石だけを、砕ける。


突起を、押し込んだ。



棒が震えた。見えない力が、泥を通り抜けていく。奥へ。奥へ。魔石に向かって。


手応えがあった。硬いものに当たった感触。


でも、砕けない。腕の魔石より、ずっと硬い。


もう一度。


突起を押し込む。振動が走る。魔石に届く。


まだ、砕けない。


もう一度。



手応えが変わった。


何かが、ひび割れていく感触。魔石の中に封じ込められていたものが、溢れ出そうとしている。


もう、一撃。


突起を、押し込んだ。



砕けた。


魔石の中から、エネルギーが溢れ出した。自分自身を砕きながら、内側から崩壊していく。


泥の巨人の全身に、光が走った。血管のように。神経のように。一瞬だけ、眩く。


そして——静かに、崩れ落ちた。


石を心臓に持つ者は——石を砕く力には、抗えなかった。



静寂が広場を包んだ。燃える家の音も、遠くで叫ぶ声も、どこか遠くに感じる。


終わった。



声が聞こえた。


振り返る。エステルが、ゆっくりと目を開けていた。その瞳が、こちらではない誰かを見ている。


「——母さん」

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