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追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ガツン!◇触れずに届く友情パワー!

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陽だまりの終わり

エステルの家を背に、丘を下る。


手のひらが、まだ湿っている。ペルラに舐められた跡だ。ざらざらした舌の感触が残っている。


——似た者同士、かもね。


エステルの声が、まだ耳に残っている。

胸の奥が、まだ温かい。



随分と長居してしまった。冬の陽は早い。


三本松が見えてきた。村の入り口の目印だ。


……なんだか少ない気がする。


暗くて見間違えたのかもしれない。手のひらに光魔法を灯した。


足元を照らしながら歩く。冷たい風が頬を撫でていくけれど、不思議と寒くない。身体の芯が温まっているからだろう。



救急鞄の中で、小さな包みが揺れている。エステルからもらった油だ。


——爪の根元にも。毎日塗って。


そうだ、ミラにもやってあげなきゃ。


あの子の手を取った時、驚いた。爪が薄くて、白っぽくて。オークの砦で、どれだけ辛い思いをしたんだろう。私は自分の傷ばかり治していて、気づいてあげられなかった。


今夜は、ちゃんと見てあげよう。手を取って、爪を見て、油を塗って。エステルが私にしてくれたみたいに。



——チーズを食べなさい。身体を作るものが足りてないんだよ。


エステルの言葉を思い出す。


チーズ。


……そういえば、約束してたんだった。


「旨いチーズを見つけたら、お土産にたのむ!」


鉄ヒゲの声が、不意によみがえった。


あの鉱山で、私は初めて誰かの食卓を変えた。三十年変わらなかったシチューに、白いチーズをふりかけた。それだけのことが、あんなに嬉しかった。


マルタさんの煮込みにも、合うかもしれない。


……今度、言ってみようか。



明日は、ミラも連れてエステルのところに行こう。


三人でヴズヴァルを飲んで、ペルラを撫でて。リーザも来たら、四人と一匹だ。パッチも入れたら、四人と二匹。


……にぎやかだ。


戦場では、仲間が増えるのは怖いことだった。増えた分だけ、失う可能性が増える。誰かと親しくなるたび、その人の死に方を想像してしまう。だから、深入りしない。名前だけ覚えて、顔は覚えない。そう決めていた。


なのに今、みんなの顔が浮かぶ。


エステルの、少し不器用な笑い方。ペルラの、ざらざらした舌。リーザの、猫を抱きしめる腕。マルタさんの、大きな手。


ミラの、私の服を掴む小さな指。


全部、覚えている。全部、大事だと思っている。


……明日、何をしよう。


そんなことを考えている自分に気づいて、足が止まった。


いつもは「明日、生きているだろうか」だった。朝起きたら、まず鞄の中身を確認する。包帯は足りるか、薬は残っているか。今日死なないための準備。明日を楽しみに思う余裕なんて、どこにもなかった。


なのに今、明日が待ち遠しい。


いつぶりだろう。思い出せないくらい、遠い昔のことだ。


風が吹いた。冷たいはずなのに、寒くなかった。



——待ってる。


ミラの声が、不意によぎった。


あの子は毎晩、私の隣で眠る。何も聞かない。でも、服の裾を掴む小さな手が、聞いている。


……答えは、まだ出せない。


考えないようにして、歩き出した。



畑の横を通り過ぎる。


柵が倒れていた。木の破片が地面に散らばっている。


……風かな。冬は風が強いから。


指先が冷たくなってきた。ヴズヴァルの温もりが、少しずつ抜けていく。


歩き続けた。



村が見えてきた。


煙が上がっている。マルタさんの煮込み、今日は何だろう。蕪かな、豆かな。


……煙突の位置じゃない。


指先が、急に冷えた。


屋根から。


壁から。


黒い煙が、村のあちこちから立ち上っている。


悲鳴が聞こえた。気づいた時には、もう走り出していた。

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