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追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ワイワイ♡みんなで生き残り大作戦!

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C₉H₁₃NO₃。(アドレナリン)

針が押し当てられている。

ダリオは倒れている。フリントも動かない。

ミラが腕を引っ張っている。泣きながら、声にならない声で何か叫んでいる。でもオークは見向きもしない。ミラの力では、何も変わらない。

最終救護ラストレスキューも使えない。何も残っていない。

助けを呼びたい。声が出ない。

誰にも届かない。誰も来ない。



トマは座り込んでいた。

オークの背中が見える。リリアの頭を押さえつけている。針を構えている。

俺とミラは奴にとって獲物ですらない。あの子を連れて逃げられるかもしれない。——でも、あの足の速さだ。逃げ切れるわけがない。

石を拾った。握れる限り一番大きいやつを選んだ。立ち上がって、全力で投げた。

オークの背中に当たる。跳ね返って、地面に落ちた。

振り返らない。見向きもしない。さっきと同じだ。

ポケットに手を入れた。指先に何かが触れる。赤い矢だ。ダリオから預かったもの。

——見つかるとリリアが狙われる。

そう言われて渡された。でも今、リリアは狙われている。目の前で。

立ち上がった。

「おい!」

叫んだ。声が裏返った。

オークは振り返らない。

「こっちを見ろ!」

振り返らない。針がリリアのこめかみに近づいていく。

弱者は見ない。——そういう奴なのだ。

歩き出した。足音を殺さなかった。堂々と歩いた。オークの背後に近づいていく。

振り返らない。

首筋が見えた。

赤い矢を突き刺した。先端が首筋に沈んでいく。

オークの手が止まった。


リリアのこめかみから針が離れていく。

オークがやっと振り返る。トマがいた。震えている。涙が流れている。それでも矢から手を離さない。



「お前……」


目を細めた。


「いたのか」


笑う。


「見えてなかった。弱者は見ない。それが俺の——」


言葉が止まった。


——アドレナリン。

C₉H₁₃NO₃。

1900年、日本人の高峰譲吉と上中啓三が発見した。ウシの副腎から、世界で初めて結晶化に成功。

心臓が止まった人間を蘇生させる薬。100年以上、世界中で命を救い続けてきた「生かすための薬」だ。

心肺蘇生に用いる副腎髄質ホルモン製剤——すなわち、ヒーラーが装備可能な『治療器具』である!!



だが今、この薬は「止める」ために使われた。

12個の頭蓋骨。12回の死闘。より強い敵を求め、より激しい興奮を求め続けた果てに、この心臓はもう限界だった。


そして今日、刺され、焼かれ、穴だらけにされた。全員の攻撃が、少しずつ心臓を削っていたのだ。


たった一滴の「追加の刺激」——限界まで熱した鉄に、さらに火を注ぐようなものだった。

最後の一撃になった。



オークの目が見開かれる。体が震えている。だが苦しんではいない。


「ついに……ついに俺は……」


心の底から笑った。


「『熱い』ぞ……!」


首飾りに手を伸ばし、12個の頭蓋骨に触れた。


「お前たちと……同じところに……」


声がかすれ、動かなくなった。

立ったまま、笑ったまま。


位階の蒐集狂(ランク・コレクター)】のコレクションは12で終わった。13個目は——自分自身だった。



しばらく誰も動けなかった。

フリントが最初に立ち上がり、オークの亡骸を見つめる。


「……弱者を見ない、か。それが命取りになったな」


トマが座り込んだ。赤い矢を握ったまま、手が震えている。


「俺……俺が……」


ミラがそばに座り、何も言わずに手を握った。トマは声を上げて泣き崩れた。今まで堪えていたものが、一気に溢れ出すように。

ダリオが起き上がる。体中が痛むが、動けた。

フリントが肩を貸す。


「……生きてるか」

「なんとかな」


二人でリリアのところへ歩いていく。


「大丈夫か」


声をかけられた。ダリオの顔が見える。フリントの顔も見える。頷いたが、声は出なかった。

こめかみに手を当てる。血が滲んでいるが、穴は開いていない。

——生きてる。



トマの手から赤い矢が落ちた。握りしめていた力がようやく抜けたのだ。

ミラがそばにいる。何も言わない。ただ、そばにいる。

あの矢はダリオがトマに預けたものだった。「見つかるとリリアが狙われる」と言って渡した、武器としては使えない歪んだ矢。

それでトマは刺した。弱者だと思われていた。眼中にすらなかった。それが最後の一撃になったのだ。



立ち上がる。

オークが立っている。目を開けたまま、笑ったまま。

——『ごめんなさい』は言わなかった。

迷ったし、間違えたし、殴り飛ばされた。それでも謝る必要はなかった。

みんなが生きているのだから。

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