表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ワイワイ♡みんなで生き残り大作戦!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/108

【鉄檻殺し】

足音が近づいてくる。

今までと違う。重い。地響きのような振動が床を伝い、足の裏から這い上がってくる。

「逃げるぞ」

ダリオが剣を抜いたまま走り出す。全員が続く。

後ろで、何かが砕ける音がした。壁だ。振り返ると、オークが壁を突き破って姿を現すところだった。丸太のような腕。他の追跡者より二回りは大きい。頭が天井に届きそうなほどの巨体が、瓦礫を踏み砕きながらこちらを見ている。

鉄檻殺し(ケージ・ブレイカー)】。

「見つけた」

「走れ!」

ダリオの声で我に返り、走った。全力で。

「こっちだ、抜け道がある」

フリントが先頭に立つ。この砦で兵士をしていた男だ。通路の構造が頭に入っている。角を曲がり、階段を駆け下り、また曲がる。

背後で壁が崩れる音が続いている。壊しながら追ってくる。そのたびに瓦礫が通路に散らばり、埃が舞い上がる。

「壁に隠れても意味がないって言っただろ」

オークの声が響く。楽しそうだ。

「俺には——壁なんか意味がない」

「あそこだ」

フリントが指さす。壁の割れ目。人間なら入れる。オークの巨体では無理だ。

「入れ、早く!」

ミラが最初に滑り込む。トマが続く。私も続く。ダリオが入り、最後にフリントが体をねじ込んだ。

狭い。息が詰まりそうだ。でも、ここなら——

足音が止まった。

壁の向こうに、影が見える。オークが立っている。

「隠れたか」

笑っている。壁を壊す気配がない。なぜ——

「壁を壊せば出てくると思ったか?」

轟音。

足元が揺れた。いや、足元の石が——崩れ落ちていく。

床を抜いた。壁じゃない。床を。

短い落下。背中を打つ。息が詰まる。瓦礫の上に転がっていた。

「大丈夫か!」

ダリオの声。全員、落ちたらしい。見上げると、天井に穴が開いている。さっきまでいた場所だ。

「出口を探せ!」

フリントが叫ぶ。ここは下の階だ。階段があるはず。戻れるはず。

通路を走る。角を曲がる。

行き止まりだった。瓦礫が積み上がって通路を塞いでいる。

「いつの間に……」

「さっきの音だ」

フリントの声が低い。

「床を抜く前に、ここを壊してやがった。退路を断ってから、俺たちを落とした」

二手先を読まれていた。

「壁に意識が向くから簡単すぎるんだよ」

声が響く。上からだ。天井の穴からオークが覗いている。

「下手に知恵があるだけ、すぐ騙される。つまんねー獲物だな」

嘲笑うように鼻を鳴らす。

「元人間のゾンビの方がまだ楽しめた」

ゾンビ。前のゲームの「獲物」のことだろう。あのオークたちは、何度もこれを繰り返してきたのだ。

「さて——追い詰めたし、降りていくか」

オークが穴から消えた。階段を探しているのだろう。すぐに来る。

「別の出口を探すぞ!」

ダリオが走り出す。全員が続く。

通路を走る。曲がる。また曲がる。

「こっちに階段が——」

フリントが足を止めた。

階段があった。でも——崩れている。上に続く道が、瓦礫で塞がれている。

「これも先に壊してあったのか……」

ダリオが壁を殴った。

「くそ! 全部読まれてる!」

足音が近づいてくる。重い。地響きのような音。通路を歩くたびに、瓦礫を踏み砕いている。奴が壊した壁の破片だ。

「来るぞ」

フリントが手槍を構える。ダリオが剣を抜く。

「ダリオ、フリント——」

「下がってろ。時間を稼ぐ」

ダリオの声は落ち着いていた。でも、勝てると思っていないのがわかる。

オークが姿を現した。通路いっぱいに広がる巨体。逃げ場がない。

「追い詰めたぞ」

笑っている。

「もう少し楽しめるかと思ったが——まあ、こんなもんか」

ダリオが斬りかかった。

オークは避けもしなかった。剣が腕に当たる。浅い。皮を切っただけだ。

「傭兵か。いい度胸だ」

殴り飛ばされた。ダリオの体が壁に叩きつけられ、崩れ落ちる。

「ダリオ!」

フリントが手槍を突く。オークの脇腹を狙う。刺さった。浅い。

「痛くもない」

フリントも殴り飛ばされた。床に転がり、起き上がれない。

二人だけになった。

トマが震えている。ミラが私の後ろに隠れている。

発射台を構える。矢は残り一本。緑の矢。これで最後だ。

狙いを定める。オークがゆっくりと近づいてくる。

「まだ何かあるのか」

撃った。

緑の矢がオークの胸に刺さる。

「……何だ、これは」

オークが矢を見下ろす。引き抜く。鼻で笑う。

「効かねえよ」

矢を握り潰した。

「それで終わりか?」

終わりだ。もう何もない。

オークが手を伸ばしてくる。

「さて——誰から殺す?」

ミラが私の服を掴む手に、力が入った。トマは腰が抜けて動けない。ダリオもフリントも倒れたまま。

もう終わりだ——

「——待て」

フリントの声だった。床に倒れたまま、首だけをこちらに向けている。

「あいつ……足元を見ろ」

足元?

オークの足元を見る。瓦礫が散らばっている。オークが壊した壁の破片。追いかけてくる間に、通路のあちこちに積み上がっていた。さっき踏み砕く音がしていたのは、自分で撒いた瓦礫だったのだ。

「壊しすぎて……自分で足場を悪くしてやがる」

オークが振り返った。

「何を言っている」

「お前の作戦は完璧だったよ」

フリントが笑う。口の端から血が流れている。でも、目が笑っている。

「退路を断って、追い詰めて、二手先を読んで——でもな」

「——でも、何だ」

「自分の足元だけは、読めなかったみたいだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ