表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ワイワイ♡みんなで生き残り大作戦!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/108

生存者たち

オークを倒した広間の奥に扉があった。

開けると倉庫だった。略奪品が山積みになっている。武器、食料、日用品。どれも誰かの持ち物だったもの。捕虜から奪ったのだろう。


「……武器がある」


ミラが呟いた。小さな声だが、初めてまともに喋った。

壁際に剣や斧や槍が並んでいる。選び放題だ。

ミラが短剣を手に取った。握りしめている手が震えている。父親を殺された。何もできなかった。だから今度は、と思っているのかもしれない。

ダリオが静かにミラの手を包んだ。


「やめておけ」


優しい声だった。


「素人が武器を持つと、奪われて自分に使われる」


「でも——」


「あいつらはそれも娯楽にしてる」


ダリオがゆっくりとミラの指を開かせて、短剣を取り上げた。


「戦い方を知らない奴が剣を持っても、重いだけだ」


ダリオが短剣を棚に戻した。


「振り回してる間に懐に入られて、奪われて、自分の剣で殺される。……何度も見てきた」


何度も。オークのやり口を、よく知っているのだ。


「じゃあ、何を持っていけばいいですか」


「殺傷力がなくて、荷物にならないものがいい」


ダリオが倉庫を物色し始めた。一緒に探した。



小さな瓶を見つけた。開けると、鼻を突く匂いがした。嗅ぎ塩だ。気絶した人を起こす気付け薬。

布袋に入った粉もあった。灰と香辛料だろうか。目潰しに使えるかもしれない。

縄や油の瓶も見つかった。


「これをお前たちに」


ダリオが嗅ぎ塩を渡してきた。


「俺は剣を使う」


ダリオは剣を腰に差し、縄も肩にかけた。それから棚に戻り、何かを探している。


「予備の武器がいる。いざという時、お前たちでも使えるやつだ」


ナイフを手に取った。刃を見て、首を振る。


「オークの皮膚は通らないな」


棚に戻し、手槍を選んだ。柄の長さを確かめてから、背中に斜めに背負う。


「これなら体重をかければ刺さる」


「目潰しと油は……後で誰かに持たせよう」


ぐるる。


遠くから音が聞こえた。獣の唸り声のような——いや、違う。鼻を鳴らす音だ。


「……来た」


ダリオが剣の柄に手をかけた。


「次のやつだ。行くぞ」


倉庫を出て、先に進んだ。通路を抜けると、また広間に出た。

人影が二つ見えた。身構えたが、一緒に捕まった人たちだ。農夫と革鎧の男。生きている。戦える人がもう一人いる——少しだけ心強い。

農夫がこちらを見て目を見開く。


「た、助けてくれ……」


縋りつくような声。

革鎧の男が、ダリオの返り血を見て頷く。


「合流できてよかった。戦えるのは俺とあんただけだ」


「ああ」


「ダリオだ、こっちはエマとリリア。」


「俺はフリント。元……まあ、兵士だ。逃げるのは得意でね、ここまで来れたのがその証拠さ」


「……さっきはニックって言ってませんでした?」


農夫がぼそっと言った。


「気にするな」


フリントは平然としている。

ダリオがそっと耳打ちしてきた。


「偽名だ。訛りと鎧の型からして、たぶんエンクレイヴの元兵士だな」


エンクレイヴ。リュウさんが言っていた、自由のない独裁国家。でも今は、詮索している場合じゃない。


「俺はトマです。農夫です」


声が震えていて、顔も青い。


「村ごと襲われて……気がついたら、ここにいて……」


目に涙が浮かんでいた。


「家族は、きっと逃げられたと思います。俺だけ……俺だけ捕まったんです」


「今はそれを考えるな。帰ってから考えろ」


フリントが言った。トマは口を噤んだ。


「北の橋を渡れば自由だ。まずはそこを目指す」


ダリオが全員を見回して言った。


「持ち物を分けよう。2人とも手ぶらだろう」


フリントとトマが頷いた。


「フリント、あんたなら使い方を知ってるはずだ」


目潰しの粉と油の瓶、それに手槍を差し出した。フリントが頷いて受け取った。


「トマ、これを持っていろ」


縄と布袋を差し出した。

トマが布袋の中を覗いた。赤い矢が入っている。


「これは……」


ダリオが矢を取り出して見せた。


「一度使った矢だ。見ろ、軸が歪んで矢羽根も取れてる。まともに飛ばん」


「……それなら、なぜ」


「見つかるとリリアが狙われる」


トマが頷いて、布袋をポケットに入れた。


ぐるる。


音が近づいてくる。


「来る」


ダリオが言った。広間の入り口にオークが現れた。【息継ぎ無し(ノー・ブレス)】より少し大きくて、鼻が大きい。


ぐるる。


鼻を鳴らして、匂いを嗅いでいる。背筋が冷たくなった。


「……いるな」


オークが笑った。


「5匹。匂いで分かる」


トマがフリントを見た。


「5匹……俺たちのことじゃ、ないよな?」


すがるような目だった。

フリントが首を振った。

トマの顔から血の気が引いた。

5匹。あの袋の匂いを思い出した。獣の匂い、汗、血、何かの肉。このゲームは人間だけじゃない。色んなものを狩ってきたのだ。


「冷や汗の匂い。恐怖の匂い」


オークがゆっくり近づいてきて、足を止めた。


「……なんだ、5匹固まってるのか」


つまらなそうな声だった。


「それじゃ追いかけっこにならねえだろ」


オークが腕を組んだ。


「10数えてやる。散らばれ」


ぐるる。


「隠れても無駄だ。お前たちがどこにいても——俺の鼻は見つける」


「1——」


逃げろ、とダリオが目で合図した。


「2——」


トマが動けなかった。


「待ってくれ、俺は走るの苦手で——」


フリントがトマの背中を押した。


「いいから走れ。止まったら死ぬぞ」


5人がバラバラに走り出す。


「3——」


鼻鳴らし(スノウト・グロウラー)。隠れても無駄——その意味が、今、分かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ