表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ワイワイ♡みんなで生き残り大作戦!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/108

ゲーム

「お前たちは砦に放り込まれる」


伝声管から、声が続く。


「砦を抜けて、橋まで辿り着け。橋を渡れば自由だ」


「お前たちの荷物はゴールに置いてある。辿り着けば返してやる。そのまま帰れ」


「ただし——追跡者を放つ」


「捕まったら、死ぬ」

「これまで3人が達成している」


最後だけ、声のトーンが変わった。聞いて喜べ、とでも言うように。

……3人。でも、何人がこのゲームに参加させられて、そのうちの3人なのかは分からない。

それに——声がずっと楽しそうだった。無抵抗の相手を殺してもつまらないのだろう。希望を持たせて、必死に逃げるところを追いかける——それが楽しいのだ。

笑い声が響いた。オークたちも笑っている。楽しそうに、嬉しそうに。これから始まるショーを待ちきれないみたいに。


「——では、始めよう」



檻が開いて、オークが入ってきた。腕を掴まれた——痛い。指が太くて力が強すぎて、抵抗しようとしてもできなかった。


頭に袋をかぶせられて、視界が真っ暗になった。息がしづらい。布越しに空気を吸うと、匂いが鼻を突いた。獣の匂い、汗、血、何かの肉——この袋、前にも誰かに使われていた。


考えないようにした。今は、生き延びることだけ考えないと。

体が持ち上げられて、肩に担がれた。荷物みたいに運ばれていく。笑い声が聞こえる。笑われているのだろう。何もできない。



気づいたら、投げ出されていた。硬い床の上。袋は剥ぎ取られていて、目に光が刺さる。


……ここは?



砦の中だった。薄暗くて、古くて、ところどころ崩れている。窓から外を見た。断崖だった。崖の下に川が流れていて、白く泡立っている。落ちたら助からない。反対側も見た——同じ。どこを見ても断崖絶壁で、出られる場所は橋しかない。逃げ場がないから、ここを選んだのだろう。


歩き出した。狭い通路を抜けて、階段を上って、曲がり角を曲がる。入り組んでいて、どこに向かえばいいのか分からない。でも、逃げなかったら——あいつらを楽しませなかったら、どうなるか分からない。とにかく、橋を目指すしかない。



伝声管から、声が響いた。


「追跡者を放つ」


「【息継ぎ無し(ノー・ブレス)】」


「——足が速いぞ、気をつけろ」


笑い声が響いた。


ぞわ、と肌が粟立った。二つ名——意味は分からない。でも、このゲームで人を殺し続けるうちについた名前なのだと、直感で分かった。


そいつが今、自分たちを追いかけてくる。背筋が凍った。



足音が聞こえた。遠くから——でも、近づいてくる。速い。

走った。どこへ行けばいいか分からない。でも止まったら追いつかれる。心臓がうるさくて、息が上がって、足がもつれそうになる。



悲鳴が聞こえた。遠くない——この先だ。誰かが追いつかれた。曲がり角を抜けると、広間に出た。オークがいた。


他のオークより細身で、脚が長い。【息継ぎ無し(ノー・ブレス)】。そして人間が二人——さっき隣の檻にいた男と、膝を抱えていたあの少女。男は少女を庇って壁際に追い詰められていた。丸腰で、武器がない。


「——よく走った」


息継ぎ無し(ノー・ブレス)】が笑う。


「だが、お前らの息はもう上がってる。俺はまだ——息継ぎすらしてない」


戦える人が、戦えない人を庇って殺される。……これが見たかったのか。殺すことだけが目的なら、戦えない者だけ集めればいい。歯ごたえが欲しいなら、戦える者だけでいい。


オークが腕を振り上げた。二人が殺される——犠牲者を出すわけにはいかない。

鋼鉄の守護神(ガトリング砲)——だめだ、少女も巻き込む。火竜の吐息(火炎放射器)——狭すぎる、全員焼ける。


迷った。その瞬間、何も呼び出せなかった。オークの腕が振り下ろされる。間に合わない。


何でもいい——!


「——最終救護ラストレスキュー


光が収束する。手の中に現れたのは——革のケース。手のひらに収まる大きさ。

開いた。中には3本の矢。赤、青、緑。手のひらほどの長さで、先端に細い針がついている。柄の部分は透明で、中に液体が見える。


柄に細かい文字が刻まれている。


C₉H₁₃NO₃

C₂₅₇H₃₈₃N₆₅O₇₇S₆

C₁₀H₁₅NO


読めない。何かの記号だろうか。


そして発射台のようなもの。石弓に似ているけど、弓も弦もない。矢を乗せる溝があって、後ろに突起がある。

使い方は分かる。溝に矢を乗せて、構えて、突起を押す。

どの矢を使う? 赤、青、緑——どれが何なのか分からない。考えている時間がない。赤い矢を乗せた。構えた。手が震えている。狙いがつけられない。オークの腕が振り上がる。


今しかない。息を止めた。震えが止まった一瞬、突起を押した。


赤い矢が飛んだ。オークが少女を殴る動作で、わずかに体が動いた。矢はその横を通り過ぎて、壁に刺さった。外れた。オークの腕は止まらない。


でも——オークが振り返った。矢が壁に刺さった音に反応したのだ。こちらを見た。


「……女?」


獣のような目がこちらを捉えた。笑っている——面白がっている。


「お前、やるじゃねえか」


男と少女から視線を外して、こちらに向き直った。


「逃がしてやったのに、出てくるとはな。順番を変えてやる——お前が先だ」


向かってくる。速い。



逃げた。考える暇もなく通路に飛び込んで、走って、曲がった。後ろから足音。近づいてくる。速い、速すぎる。


「逃げても無駄だ」


声がすぐ後ろにある。


「お前が一度息をする間に——俺は三歩詰める」


息継ぎ無し(ノー・ブレス)——その名前の意味を、今、体で理解した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ