表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放ヒーラーですが【発明者が医師】なのでガトリング砲を使います!  作者: とらいぽっど
ワイワイ♡みんなで生き残り大作戦!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/108

殺しのゲーム

それは——止まった心臓を、再び動かす薬だった。

——アドレナリン。

C₉H₁₃NO₃。

1900年、日本人の高峰譲吉と上中啓三が発見した。ウシの副腎から、世界で初めて結晶化に成功。心臓が止まった人間を蘇生させる薬であり、100年以上、世界中で命を救い続けてきた。

「生かすための薬」。

心肺蘇生に用いる副腎髄質ホルモン製剤——すなわち、ヒーラーが装備可能な『治療器具』である!!

オークの目が見開かれ、体が震えている。

「ついに……ついに俺は……」

笑った。心の底から、嬉しそうに。

「『熱い』ぞ……!」

——これは、その数時間前の話。

街道を歩いていた。次の町まであと半日、日が暮れる前には着けるだろう。そう思っていた。

異変に気づいたのは森の中だった。静かすぎる——鳥の声も虫の音もせず、風が止まり、木々が息を潜めている。

嫌な予感がした。足を速め、走り出そうとしたその瞬間。

「——見ィつけた」

声は上から降ってきた。嫌な笑いを含んだ、ねっとりした声。

木の上から影が落ちてきた。巨大な体、緑がかった肌、獣のような目——オークだ。1匹じゃない。右にも左にも後ろにも、囲まれている。

鼓動が激しくなるのがわかる、足が震えた。逃げなきゃ——でも、どこに。

「——最終救護ラストレスキュー

何か出さないと、何でもいい、武器になるものを。光が収束する——はずだった。何も起きない。手の中は空っぽのまま。

……そうだ。この回復魔法は、自分のためには使えない。

その瞬間——殴られた。頭に衝撃が走り、視界が白く弾けた。地面が近づいてくる。倒れる。受け身も取れない。意識が遠くなっていく。

……目を開けた。

暗い、冷たい、硬い床。体を起こそうとして、頭がずきりと痛んだ。殴られた場所だ。血が固まっている。

周りを見た。鉄格子と松明の明かり、その向こうにオークが何匹も見える。檻の中だ——捕まったのだ。

オークたちがこちらを見ている。ゲラゲラと大声で笑いながら、何か言葉を投げかけてくる。聞き取れなかったのは幸いだった。私を見る目が、家畜を品定めするような目で……気持ち悪い。

……おかしい。

今まで戦ったモンスターは、殺意か本能で襲ってきた。だから分かりやすかった。殺される前に逃げる、それだけだった。でもオークは違う。

さっき、殺せたはずだ。囲まれていた。逃げ場はなかった。なのに——殺さなかった。殴って、気絶させて、運んで、檻に入れた。生かしてある。

……何のために?

オークたちが楽しそうに笑っている。何かを待っている。

……何を待っている?

分からない。分からないのが一番怖い。

「起きたか」

人間の声だ。隣の檻に男がいた。鍛えられた体つきで傷だらけ——傭兵か何かだろうか。少しだけ安心した。戦える人がいる。

「……ここは」

声がかすれた。喉が渇いている。

「分からん。俺も気づいたらここにいた」

男が指差した。

「他にも何人かいる」

指の先に、檻がいくつも並んでいた。若い女がいた——まだ少女と言っていい年齢で、膝を抱えて俯いている。怯えているのが伝わってきて、胸が痛んだ。農夫らしき男は震えて歯をカチカチ鳴らしている。革鎧を着た男は壁にもたれて天井を睨んでいた。あの人も戦えるのだろうか——だとしたら、また少しだけ心強い。

みんな捕まったのだ。みんな私と同じだ。

体を確認した。救急鞄がない。ローブもない。持ち物は全部奪われ、薄汚れた囚人服だけが残されている。

でも——最終救護ラストレスキューは使える。口を封じない限り、ヒーラーから回復魔法は奪えない。

……いや、使えるか分からない。

この魔法はいつでも好きな時に使えるわけじゃない。どこかの世界のヒーラーと心が繋がった時だけ。「逃げたい」「助かりたい」——そんな気持ちだけでは繋がれない。さっきも自分を守ろうとして、何も出なかった。

今、私は誰かと繋がれるだろうか。

……分からない。

それに、相手の目的が分からない。殺すつもりならもう殺している。殺さないで生かしている理由がある。それが分からないうちに動いたら、何が起きるか分からない。

オークたちが笑っている。丸腰だと思っている。何もできないと思っている。きっと、人間なんて弱い獲物だと思っているのだろう。

……そう思われたままでいい。今は何もしない。いつか——繋がれる時が来るかもしれない。

どれくらい経っただろう。

突然、声が響いた。檻の中からじゃない。壁から——伝声管だ。

「——聞こえるか、獲物ども」

低い声が響いた。楽しそうな——嬉しそうな響き。

ぞくりとした。獲物。私たちのことだ。

「これからゲームを始める」



2026年新章開始です! 

1章2章のゴブリン、ゾンビ以来、オーソドックスなモンスターが出てなかったのでオーク回にしてみました。


さすがに「集団で襲ってくるのガトリング砲で倒すだけ」だけだと芋虫と変わらないな…と、人間並みに知能や文化があるモンスターなのでゲーム感覚で殺人ゲームをやっているおかしいやつらにしてしまいましたが、世間的にはもっとカジュアルに「オークが襲って来たぞ!」くらいの使い方ができるポジションみたいですね。


しまった、リリアさんの治療器具を考えるのもっと楽ができたのに!!!


いつもは3話目くらいでモンスターが出てくるところ、1話目から登場と変則的な章となりましたが

おつきあいいただけると幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ