捨てられ聖女はなぜか【奪い合われ】ています!
唐突に始まった「捨てられ聖女」編、今回でやっと終わります。 本当ですってば! 戻ってきてください!
お茶会が、日課になっていた。
「今日は俺の番だ」
アッシュが財布を出す。
「いや、さっきリリアが笑ったのは俺の話だろ」
リュウが異議を唱える。
「ゼクスが変な顔したからでしょ」
レイドが口を挟む。
ゼクスが無言で首を横に振った。
「その日、リリアを最初に笑わせた人」がお代を払う。
いつの間にか、そんなルールができていた。
でも——4人とも、自腹を切りたがっているようにしか見えない。
「はいはい、じゃあ今日はボクね」
レイドがさっと財布を取り出す。
アッシュとリュウが「ずるい」と声を揃えた。
カミラは、最近あまり顔を出さなくなっていた。
◇
その日は、村の近くでスライムが増えているという依頼だった。
村に着いた。
静かすぎた。
煙突から煙が上っている。
でも、通りに人がいない。
遠くの広場に、人だかりが見えた。
◇
赤い髪が見えた。
カミラだった。
村人たちに囲まれている。
「お前のせいだろ!」
太った男が詰め寄っていた。
「ハードスライムが群れで出たのは、テイマーか上位スライムの仕業だ!」
「どっちなんだ! 答えろ!」
リュウたち4人が、群衆をかき分けて前に出た。
「——テイマーって言いなよ」
レイドが、カミラに目配せした。
「テイマーなら、まだ話が通じる。ね?」
カミラは、俯いたまま——
「……ヒーラーです」
——
「……は?」
「嘘つけ!」
「ヒーラーがスライム操れるわけねぇだろ!」
「じゃあ上位スライムか!」
村人の一人が、カミラのスカーフに手を伸ばした。
「何隠してんだ!」
むしり取られた。
首筋に——黒い突起があった。
イボ、ではない。
まるで楔を打ち込まれたような、不自然な形状。
根元が皮膚の下に食い込んで、返しがついているように見える。
明らかに、人体の組織ではなかった。
「スライムになった奴は、みんなこれがあった!」
「やっぱりスライムじゃねぇか!」
「違う……これは、ただの……」
言葉が続かなかった。
「じゃあ証明しろ!」
太った男が、針を投げつけた。
「指に刺してみろ! スライムなら血が出ねぇ!」
カミラが、震える手で針を拾った。
指先に、刺す。
赤い血が、滲み出た。
「……ほら」
沈黙。
——一瞬だけ。
「指先じゃ分かんねぇな」
「腕を切って確かめねぇと」
「大丈夫だろ、スライムなら痛くねぇんだから」
◇
「待て」
リュウが前に出た。
「血が出ただろう。人間だ」
「うるせぇ! よそ者は引っ込んでろ!」
「そうだ! お前らもグルかもしれねぇ!」
アッシュが、カミラの前に立った。
「落ち着けって。話し合おう」
「話し合い? スライムと?」
「スライムじゃないから血が——」
「腕を切りゃ分かるって言ってんだろ!」
群衆が、押し寄せてきた。
4人では、止められない。
数が多すぎる。
押し返される。
囲まれる。
「やめろ!」
リュウが叫んだ。
聞こえていない。
誰も、聞いていない。
ナイフを持った男が、カミラに向かって突進してきた。
ゼクスが、間に入ろうとした。
間に合わない。
ナイフが、振り下ろされた。
◇
カミラの太ももに、刃が突き刺さった。
「——っ!」
悲鳴。
男がナイフを引き抜いた。
血が、噴き出した。
カミラが、崩れ落ちた。
「カミラ!」
リリアが駆け寄った。
回復魔法を唱える。
傷は塞がる。
でも——
「まだだ!」
「スライムを殺せ!」
村人たちが、また押し寄せてくる。
ナイフを持った男が、もう一度振りかぶった。
(今すぐ回復しないと——いや、それだけじゃダメだ)
原因がなくならない限り、カミラに第二、第三の刃が振り下ろされる。
心臓を狙われたら。
首を切られたら。
リリアの魔法でも、回復は不可能だ。
(犠牲者は、出したくない——!)
その時。
リリアの身体が、光を放った。
ついにリリアさんだけでなく、作者にも限界が来た「捨てられ聖女」シリーズ。
お茶会で誰がお代を払うか揉めていたボンクラ4人(追放聖女溺愛アフタヌーンティー脳)が、理性を失った群衆(雑な展開になった時の人狼よりもひどいなろう地平の現実)を前にして、いかに無力かを痛感する回となりました。
そして聖女の次は、やっぱり唐突な人狼っぽい吊るし展開、節操なさすぎます!
あ、私は占い師です!!!
次回、まだこの路線が続くのか、リリアさんと作者に溜まりに溜まったゆりもどしが来るのか……お楽しみに!




