激動の序章
━━━国境の街ローン━━━、
グレビー・アスナルは、バーロナ将軍に忠誠を誓い。街の警備を任されていた。その後少佐の地位に着いて、最初の任務がある男を待っていた。何者か知らないが、手紙を渡すよう頼まれたのだ。
「グレビー?」
昔。砦だった古い建物は既に壊され、亡くなった人の冥福を慰める石碑が造られていた。
今日非番のアスナルは、待ち合わせとしてこの場所を選んでいた。仮にもアスナルは、ダーレンで将軍の地位にいたので、石碑を見舞う事を、見咎められないようにとの、理由付けになるからだ、
「君が、オーラルかい?」
目印の赤い手甲、確かに土竜騎士の物で、待ち合わせの人物が、土竜騎士であることを聞いていた。
「確かに預かった……、バーロナに伝えとけ、いずれ会おうと」
いささか困惑気味のアスナルに、
「土竜ギルドには話してある。俺の名を言えば、手紙は届くようにな……、これは貸しだ、伝えれば解る」
オーラルと名乗った男が何者か、後日知ることになるが、それはまた別の話。
━━━オーラルが1人ローンの街に来たのは、ミザイナに頼まれたからだ、
「オーラル、バーロナを覚えているか?」
忘れる筈がない……、オーラルが、学園を追われる原因になった男である。ミザイナから何度か彼奴が変わったと言われても、しこりが消えることはない、
「彼奴は、軍国ローレンの将軍をしている」
何の冗談かと思ったが、ミザイナは真剣だった……、軍国ローレンとファレイナ公国との戦は、聞いていた。軍国ローレンの成り立ちも、情報で知っている。将軍の人柄と、オーラルが知ってるバーロナの人柄は、一致しない……、それは認める。苛烈だが、公平な人物、ギリギリ信用出来ると判断出来た。
ミザイナは言った、バーロナは傀儡の将軍でしかなく、本当の支配者は商人だと 、さらにその商人は、魔王の配下である。裏に六将の双子が、関わっていると聞かされ、信じられないが……、
何故バーロナがと。今もとどまる理由が理解出来た。
「オーラル黒衣を信じるな!、彼奴は、王家の犬だ、バーロナは、ケレル殿下に暗殺されかけていた」
「何だと?、あのケレル殿下が……」
多少なりにショックが………隠せない、
だが……、オーラルの動向を探ってた節を感じてはいた。
「なるほど……、で、いつ知ったミザイナ?」
内密に北大陸、東大陸、南大陸をつなぐ情報ネットワークを確立してたことをだ。
「オーラルお前は優秀だ、それゆえに吉備にさとい、カレイラやケレルが疎んじる可能性を考えてた筈だ、それに情に厚く、仲間を見捨てられない性格なのも解る。オーラルわかってるな?」
ミザイナの警告、静かに頷く。旅の同行者に、何故リーラ侍祭がいたのか……、
そこにはエレーナ大司教の警告でもあったのだ。
━━もう1人の母の気遣いに、感謝しながら、聖アレイク王国の闇を、感じていた。
矛盾する理。出来すぎた英雄など━━、
国には不要である、いずれ使い捨てにすればよい、意に沿わなければ……、やがて消されるのは、オーラルの方である。
━━ミレーヌ姫は、健気に公務をこなされた、帰郷の徒に着かれる日まで━━。
ファレイナ公国、剣将ルルフが、ターミナルまで護衛を努める最中。見送る数多の民、剣に生きる。剣士は可憐な笑みの王女を忘れない、精一杯手を振り、惜しむ民は笑みで見送っていた。
━━━東大陸、リドラニア公国━━、
国交の正常化を望む民のため。ラトワニア神国から将軍スイデンが駆り出され、雑務を押し付けられていた、
憤りながらも、国に巣くうアンデットの殲滅を行っていたのだ。
「忌々しい、何が『オールラウンダー』だ……」
自分がこんな雑務をやらなければならないのも。元を正せば自分の過ちのせいであった。敵前逃亡したスイデンは、後々問題となりとりなした太陽神アセードラ、大僧正の伯父にまで、激しく叱責されたのだ。いつしか抱いた妬みは、強い恨みに変わり、王室でぬくぬく住まう、二人の姫の為など、やってられない愚考だ。
「これもすべてあの二人のせいだ!」
そう考えていた。
「申し上げます!。敵が……、我が軍を襲って、凄まじい勢いでこちらに向かっております」
「何だと!まだ残党がいたのか」
激しい怒りのあまり、伝令兵は畏縮する。
「して、アンデットはどのくらいだ」
血走る眼差しに、射抜かれる伝令兵は、
「そっ、それが……」
言い淀む様が、スイデンの怒りを煽る。
「はっきりせぬか!……」
凄まじい爆音が、スイデンの言葉、怒りすら刈り取る。
「なっ、何事だ!」
爆音がしたのは、スイデンの主力。配下が陣営を張る。陣地である。
「ギャァー!」
「グォ……」
数多の悲鳴、肉を断つ音……戦場に生きる。スイデンには、何か化け物が現れたのではないか、戦々恐々と蒼白になっていた。みるみる音は近づき、白銀の鎧が眼に入る。そして……胸元にある紋章は……、
「まっ…、まさか聖帝の…」
伝説を目にした畏怖……、獅子が竜を刈る紋章こそ、聖帝の騎士団、聖騎士の証。
そして……、聖騎士の紋章を持つものは、この世にただ1人、
「騎士団長……ナタク……ぷつ」
全て言い終わる前に、銀光が、スイデンの首筋に現れ、首が落ちていた。
「脆弱な……、『オールラウンダー』がいなければ、こんなものか……」
実につまらなそうに殺戮を終えていた、眼下の跡をみやる。
「つまらんが……、魔王との……、嫌。あやつとの約束。この国を我の物とする」
手にした、聖王の剣を、大地に突き刺した。
━━大地が、ナタクの言葉を体現したように、聖王の剣は、おのがもうひとつの姿を、大地に顕現させていた━━。
それは、西大陸にかつてあって、一夜にして消えた城……、美しい白銀の城。聖帝城が、リドラニア公国内に現れた……、
そして……、城の中から、ナタクと同じ紋章を着けた、千の騎兵、千の歩兵、千の弓兵が、整列した。
「この地を聖帝国とする」
ガチャン、ただ1人で、一国の軍勢である。聖王の剣……、この剣の主は、絶対死なず、疲弊しない軍勢を手にする。
神々の祝福を与えられた伝説の武器が一つ『聖王の剣』━━。
この世界の守り手であるナタク、世界の門番たる闇の民。魔王ピアンザは、来たるべき決戦を前に。世界を統べる決意をしていた、この世界の全て……全力をもって、挑み。勝率は僅かである。
「見せてみろ。貴様らの力を……」
既にオーラルの力は知っていた、未熟ながら、あれは俺を超える力を秘めている。問題はもう1人……、
「カレイラとケレルを消す……、聞いてるな?」
ナタクの背後、闇が濃くなり、凝縮して現れる者がいた、
「ああ、ケレルはまかせろ」
ケレンな錆のある声が、全身を黒装束に身を包み。闇の魔法で、視覚を狂わせる。暗殺技術は帝国一。闇の民と人間のハーフである。六将が1人は、闇に溶けて消えていた。
「聖アレイク王国へ!」
ざっ、聖騎士団は、ナタクの号令にて、烈風の如くスピードで進軍していく。




