アレイク王国の受難。エピローグ
━━━二日後深夜。
━━━城塞都市ベセルから、急を知らせる報告が各所に上がった。
アレイク王国の国境を無理やり突破した、国籍不明の軍勢が現れたと……、
━━翌未明には、国の重鎮が集められていた。
「陛下。このギルバート・ガイロンにお任せください」
苛烈と知られるギルバート将軍は、数多の戦を経験した猛将である。
「うむ、ギルバート行ってくれるか?」
レゾン王の信ある眼差しに、身を引き締めながら。実直ゆえに明言する。
「はっ!、直ちに」
力強く。何時もなら絶対の信頼を与えてくれる偉丈夫の背を見送りながら、宮廷魔導師筆頭ケイタは、嫌な予感を拭えず。不安な顔が隠せなかった。
「如何したケイタ?」
小さな声であるがやけに響いた。ハッと我に戻るケイタだが、今は自分の考に没頭する時間ではないと。これからのこと精査しながら考えをまとめてゆく、
この数年。軍に魔導師を組合せる作業をしていたことを知った重鎮達も、発言力が上がってる筆頭宮廷魔導師であるケイタの様子を伺っていた。
「陛下……、情報を分析してたのですが、まさか……とは思いますが、あの(..)聖騎士団の可能性があります………」
「何だと!?」
即座に王座に座っていた泰然自若とした王が、顔色を無くしていた。
ざわめく会議室。さしものケレル王子も思わず。腹心のカレイラを見ると静かに首肯していた、ケイタ筆頭の言葉が事実ならば、ことは急を要する。
「申し上げます!、国境が突破され、身元不明の軍勢は、国境を越えると真っ直ぐ。ベセルに向かったと」
「早い……、速すぎる」
ジリジリ苛立ちを隠せず。王は城塞都市ベセルにいる。ブラレールの無事を祈った。
国境に駐屯していた千の駐屯軍が敗れた。
━━ベセルに、軍勢が迫ると急報が入ると。ブラレールは直ちに在中する。全フロスト騎士団を集めさせた。
総勢3000近い騎兵、
5000の歩兵、
後方に癒しの見習い侍祭を待機させる。ブラレール自身が、兵を率いて、迎え撃つため即日出撃した。
「フロスト騎士と交戦、紋章は獅子が竜を刈る。我、聖騎士団と認める」
ブラレールからの報告に。やはり生きていたのか、レゾン王は、苦虫を噛み砕いた顔をしていた。先ほど救援に向かったカレイラ、間もなく到着するギルバートが、生きて帰れるのか……、今までに無い不安を覚えた。
レゾン王は、その昔海上移動国ダナイで、一度だけ会った。
粗野な下世話な王よりも。騎士団長ナタクの苛烈な印象を思い出しハッとした……、
「今思えば……、あのとき助けてくれた若者は……」
ミレーヌが、オーラルと共にあることが、今は救いである。
「王妃を呼んでくれ……」
近衛連隊の見習いである。王の従者をしてる若者は、直ちにと部屋を出ていった。
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━━━フロスト騎士団の歩兵は勇猛果敢にも、聖騎士団相手に突撃する。既に半数は帰らぬ人となり、ブラレール自身、馬にすがり付いてると言う有り様であった。
敵はあまりに強く、強固な意思を見せる聖騎士団からは、一切の恐れも。疲れすら見受けられず……、
「何だ……これは?。あれは何だ?、最早人間じゃない……」
最初は拮抗していた戦端も。徐々に劣勢に陥る。
未だ……、
未だに……。
敵ただ1人すらも………、顔を晒す男にすらも、手が届かない…。
「申し上げます!、
西より、ガイロン重騎士団が到着、直ちに、下がられよとのこと」
「なんと……、ギルバート殿が………」
「ブラレール様!」
あわや落馬の危機を、見習い騎士が受け止めた。
「だれか癒しの使い手を!」
血を流しすぎた、ブラレールは気を失っていた。
━━━ブラレール・ロワイが重傷を負ったと知り、驚きよりも怒りを覚えた。
「侵略者を赦すな!、全軍突撃!」
「うぉおおおおお」
号令を受け、ニビ色に輝く。厚手鎧を着た騎士達が、分厚く、身を押し包む程大盾を身構え、前列からランスを手に、自叙に走り出した。凄まじい轟音を奏でながら突撃を開始する。
━━その数一万。聖騎士の優に三倍はあった、普通なら一方的な殲滅で終わる筈である。
━━━━カレイラは、ブラレール団長が重傷と聞いて、あまり驚かなかった。相手はあの聖騎士団である。ならばギルバート殿とて危ない。焦りを感じながらも、精錬されたカレイラ師団は足を速めた。
二度に渡る波状突撃。3000づつの編成で、三度の突撃を、あの聖騎士団……、僅か1000の歩兵に、穴を開けることすら敵わない……、
「なんと………」
目の前の光景を、信じられない思いで見ていた。
ガイロン重騎士団の盾は、魔法で強化してある特別製である。魔法が無かった場合は、小柄な女性程の重さがあった。ガイロン師団の重騎兵は、鎧の重さを無くす魔法を身に付けていた。
「強力な魔法ですら耐えられる我が………、重歩兵が……」
強化された盾ごと、まるで紙のように……、聖騎士の弓兵の矢を受けて倒れ行く……、
ありえない光景に。呆然と見ていた。次々と報告される負傷者の数々。
それが……、僅か二度の突撃で、半数近い損害が報告された、あまりのことに、ギルバートの補佐官は、協議すら忘れ、ギルバート程の猛将ですら、退却を考えていた。
「も、申し上げます。カレイラ師団が、東の窪地に陣営を整えました」
訝しげな補佐官が、ギルバートに意見を求める。
「続けろ……」
鋭い眼差しにさらされ、直立不動になった。
「はっ、我が魔法部隊を最大限に使う陣形を形成した、我が方に、引き込んで頂きたいとのこと」
「なっ……、あの若僧…、我々ガイロン重騎士団を愚弄気か!」
憤りを発する補佐官を制して、カレイラの力を持ってしても、地形と前準備しなくば勝てない。そう言うことか……、
「全軍に伝えよ。敵を引き付けながら、後退する!」
「はっ!」
一瞬の迷いなく。ギルバート・ガイロンは命じた。すると素早く伝令兵が、戦場に散って行ったのを見計らいながらも、
「突撃を開始する!」
ギルバート将軍自ら先頭に立ち、普通の馬の三倍はある巨馬に股がると、自分の身体より巨大な盾、長さ5m以上ある長大なランスを手に、面を下げる。
ガイロン重騎士団の中でも、エリートと呼ばれる千の騎兵は、ギルバート将軍を先頭に、轟音を立てながら突撃した。
特別に誂えた赤みがかった鎧に、無数の白銀の矢がギルバートの盾に突き立つ、だが今までと違い、貫くことは敵わないとわかると、すぐさま中央を割って、敵騎兵が出てきた。
「馬まで、白銀に輝いてる?」
訝しげな顔も一瞬、今は、戦いに専念するときである。聖騎兵は1人1人が、恐ろしく精強で、ギルバートですら苦戦すしていた。
普通の騎兵では、敵う筈がないと痛感した。
(ここは……カレイラの策に乗るしか活路は無いか)
ギルバート率いる重騎兵隊は、獅子奮迅の活躍をした。まかギルバート将軍が一騎駆を行い配下を鼓舞した。
「なるほど……かなりの使い手だ、が……、足りん…、まるで足りん。表舞台から消えてもらおうか」
凄惨な笑みを浮かべ、ナタクの手に剣が現れた。聖王の剣は、未だリトラニア公国で、城となっている。あちらでは、ラドワニア神国の軍勢が来たが、所詮紙くずと変わらない雑兵、瞬く間に殲滅した。それを剣が知らせてきた。
ただ1人で軍勢であり。聖剣の使い手となれば、国王となる。
この世でただ1人の聖騎士。それがナタク・レブロと名乗る男であった。
━━━凄まじい殺気。
━━咄嗟に、ギルバートは盾を手放し、ランスを捨てて、大剣を両手で構えた。ナタクはギルバートに向けて飛翔すると体重を課した豪剣を放つ、
凄まじい轟音を戦場で奏でながらも、受け止めていた。
「ほう……、我が一撃を受け止めるか」
ナタクは意外な結果に、満足そうに笑っていた。
「ふむ……、殺すには惜しいな……、しばし眠れ勇敢な戦士よ」
さらにナタクのスピードが上がって、ギルバート・ガイロンの狭まっていた視界の中では見失い。いつの間にか真横にいたナタクに顎先を素手で殴られ、崩れ落ちるように呆気なく昏倒する、蒼然となる重騎兵を、駆逐しながらカレイラの待つ窪地に向かっていた。
「ギルバート将軍重傷、ガイロン重騎士団壊滅……」
あまりにも馬鹿げた結末に、さしものカレイラすらも言葉を失っていた。
「カレイラ准将!来ます」
白銀の騎士団が、まっすぐ、罠を張った場所にわざわざやって来ることに、ここに来てカレイラも違和感を覚えた。
「全軍用意、構えよ!」
━━━カレイラは、大きな間違いを犯した。
カレイラ師団はそもそもラドワニア神国で、大勝してしまった。だから兵士が過信する。 カレイラ准将がいれば、大丈夫だと━━。
凄まじい数々の炎玉が、波状となって、窪地をも凄まじい高温を作り出していた。
その結果。ケイタ筆頭の考えが予想通りならば……、
辺り一面砂塵が視界を失わせていた。やがて……視界が戻り、大歓声が上がる。
あれほどの騎兵達が、魔法融合による影響か、着ていた鎧は高温に溶かされ、融解していた。辺りが白銀の水溜まりと貸してるのを見てカレイラは確信する勝てたと。
「よし……、これで……」
カレイラが勝ったと、確信した瞬間━━━、
まるでそれを嘲笑うかの如く、白銀の水溜まりは徐々に隆起して、騎兵が、さらに歩兵、弓兵が現れたではないか、
「なっ………、そっ、そんな馬鹿な……」
通常では、考えられないスピードで再び迫り始めた。余りのことに。魔法の使い手を……、手塩に掛けて育て上げた兵士達が、次々と命を落として行く……、悪夢である。
━━ザシュ、ザシュ、ザシュ、
ただ人を斬る音が、瞬く間カレイラに迫るナタク。
「お前は、不要だカレイラ、消えろ、弱き者よ」
突然現れたナタクは、カレイラを雑兵に向けるような眼差し剣を振りかぶる。
「くっ」
それは咄嗟にだった。長剣で受けていた。
「ほう……曲がりなりに、聖騎士の剣━━、その力を引き出せるか……、所詮は代用品よ」
「なっ、何を訳の解らないことを言ってる」
戸惑いながら、オーラルから譲られた剣の力が、カレイラの力を何倍にもしてることを理解する。
「勝てる?、そう思ったか、仮初めの『オールラウンダー』よ。貴様のそれは、所詮借り物の力よ、貴様は所詮は表舞台の脇役にすぎぬ━……、」
「何を……、視界がぶれ…」
「だから……さ、弱き者よ。既に斬られた毎にすら。気が付かなかったのだからな……」
カレイラの頭と右腕、胴体が切り刻まれ、全身バラバラにされていた。
━━物言わぬ亡骸を見下ろしたナタクは、『聖騎士の剣』
以前自分が使っていた剣を掴もうとして、顔をしかめるや剣を捨てていた、ナタクの手が焼きただれ、異臭が漂う。
「既に主を決めたか、『聖騎士の剣』よ」
白銀に輝く、聖なる輝きは。かつての主に答えるよう明滅した。
「ふん……、良かろう、いずれ剣を合わすこともあろうよ」
━━━聖アレイク王国、
母である王妃に呼ばれて、戦場のいく末を不安に感じていたケレルは、宮廷魔導師筆頭ケイタの元に伺うべく、身支度を整えていた。何時もなら、身の回りの世話をする。数人の侍女がいるはずなのだが……、
朝からバタバタしていて、自分で支度を済ませるしかなかった。
ふっとあまりに静かな気がして、違和感を覚えた。
「誰か、誰かいないか!」
可笑しい……、
いくらなんでも人の気配がない。流石に危機感をいた覚え、急ぎ廊下に出るべく、ノブを回すが、びくとも動かない、
「これは……」
何かがケレルを襲っている。直感していた。護身用のナイフを取り出して、辺りを伺う、
『無駄である…………』
誰もいるはずのない部屋。誰もいないはずの背後から耳元に囁かれる声を聴いて、驚きの声を……、
「なっ……、がっ……、がひゅー」
虚空から漆黒のナイフが唐突に現れるや、ケレルの喉を切り裂いた、血を溢れさせながら、訳も分からずケレルは喉を咄嗟に押さえた。
……解らない。
………何が起こったか、
………解らない。
でも理解した。
「助からんよ、お前は、表舞台から消えよ……」
錆のあるけれんみのみのある声音の人物は、それだけを告げると。闇の中に沈むように、気配すらも消え失せていた……、
やがて……、
人の気配が戻り…、
悲鳴が、上がった。
エピローグ
━━━南中継の街から、温泉の村に寄り、真新しい連結車を繋げて。再び地下迷宮を走り出した一行。
帰り道は、やや遠回りになるが、デスホール、
━━世界の穴……を。滝を、見てから聖アレイク王国に帰る毎になっていた。
新しい車両、お風呂は車両は、非常に女性陣に好評である。温泉の村で、お湯を分けてもらって来たかいもあった。これでしばらくは楽しめた。
「ん………?」
御者台に座っていたオーラルは、何だか言い知れぬ不安を覚えていた、何故か手紙を入れた懐を触りつつ、手触りを感じていた。
「ピアンザ……」
寡黙だった穏やかな友人が、どうして、魔王等に……、オーラルも知らぬ理由をピアンザが抱えているだろうことは察せれた。でもだからこそあのピアンザが世界を狙う理由が解らない。説明がつかないのだ。
「母さんに、お土産買ったし、部隊の皆にも……」
解らないことはひとまず置いといて、この時のオーラルはただ部下たちのことや母、姉のこと考えることにした。だからまさかこの時、カレイラ師団が、『オールラウンダー』のカレイラ、ガイロン重騎士団、フロスト騎士団の多くが、第1分隊を残し壊滅したことを知るのは、もう少し━━後の話である。




