第一分隊出撃ですね。
━━2日後……。
慌ただしくクエナ、オーラル率いる。先方を勤める第一分隊が出発するのを。カレイラ准将は見送りに出ていた。だが一抹の不安を抱いていたのも事実。
「魔王の狙いが、別にあるのでは?」
深く危惧していた……、そして……、僅か数ヶ月で動き出した。世界情勢を熟考する。
急速に勢力拡大を狙う魔王軍は、北大陸に進軍した。一月とせず魔王軍の船団が、北大陸の西側。沖合いに停泊して、北大陸に上陸。直ちに陣営展開して、16部族を攻める準備を始めた。しかし魔王もまさか短期間の間に。16部族が統一され。パレストア帝国と比肩する大国となっていたとは予想外な出来事であった。レオール連合と名乗る一軍の奇襲を受け、先陣を期した先見部隊は壊滅させられてしまい。それから苦戦を強いられていた。
━━レオールの宰相となったレイナ・フォルトは、女性でありながらたぐいまれな手腕を発揮して、群雄割拠していた、16部族と16郡都をまとめあげ、構想から僅か半年で、レオール連合国の基礎を作り上げた鬼才である。後に分かるが、魔王軍が、いつ来るかまで予測していた節があった。
レオール連合は、王国制ではなく。16部族の長を議長とした元老院を設立していた。これが短期間に16部族をまとめあげた方法である。あくまでも形は、長達に認められたレイナ・フォルト嬢によって、16部族の戦士を指揮する権限を与えた形ではあるようだが、今では実質彼女こそが、レオール連合のトップである。
━━戦前のアレイク王国参謀の見立てでは、パルストア帝国の圧勝と思われていた。このような事態を誰もが、予想だにしていなく。
現状魔王軍は、苦しい膠着状態が続いているという。
そこて詳しく状況を調べるため。ケレル殿下は黒衣に調べさせた。さらに内容をカレイラが参謀達に解析させた結果。その一因が、北大陸だけに生息する太陽の下で、動ける土竜が要因であると言うのだ。確かに我が国でも土竜を操るには、特殊な技術が必要である。魔王軍の船団では、馬を用意せず人員のみ輸送した。しかし北大陸は広大である。魔王もまさか北大陸で。馬がほとんどいないことをしらなかった。無論ケレル殿下を始めたあれいらおらずアレイク王国首脳陣とて。黒衣の調べで始めて知ったことだった。
北大陸で一般的な移動手段は、主に北大陸固有の太陽の光を克服した土竜を使う。しかし魔王軍に土竜を操るに技術も。馬を運ぶ時間も用意もしていなかった。だから移動は主に徒歩になったこと。広大である北大陸にでである。
それよりも問題は、戦前にはいなかった人物。レオール連合の将軍を勤める男が、恐ろしく優秀だからだとカレイラは考えた。
黒衣の報告書を見たが、かの将軍は奇策の名手で、帝国の襲撃を何度も阻んでいるのは見事と言えた。それでもレオール連合が攻め滅ぼされるのも時間の問題であるとも予測していた。何せ魔王軍を率いる将は、常勝と二つ名で呼ばれた。魔王の六将が1人。ランバスタ将軍なのだからだ。
しかし……そんなカレイラの予想は、裏切られた。未だに膠着状態は続いており。魔王軍の進軍は一進一退である。あくまでも噂の類いだが……、黒衣が持ち帰った中に。件の将軍のことも含まれていて。どうやら異国の人物ではないかとのこと、まだ若いが、ことごとく魔王軍の先手を見通して、罠を張る絶妙な妙手を仕掛け。魔王軍を翻弄しているとのこと。この時期になるとケレル殿下も考えを変えていた。彼の国の将軍は歴然の名将のようだと、カレイラすら唸らせた。
「気になるのは、南大陸もか……」
東大陸と南大陸を繋ぐ航路は、謎の嵐で交易不可のままである。
━━現在、土竜馬車の交易に頼っている。そのせいで南大陸では、塩不足が深刻であるとか、東大陸では、鉱石やラッカルの病が再び蔓延し始め。薬が不足していた。こまったことに謎の嵐はもう……、半年以上続いていることになる……。
━━その為、南大陸の小国では、塩処か、食糧が軒並み値上がり、貧困が深刻化していて、食料難で、何百人もの餓死者を出してしまったという話だ。
━━━ついに……小国ダーレンで、農民が蜂起した……、圧政していた、国王一族を惨殺。そのまま近隣の村、街を襲い、隣国に勢力を拡大、ファレイナ公国、国境まで迫る勢いであると……。
「ミザイナ嬢が、無事だと良いが…」
ケレル殿下、カレイラには、夢があった……、
ケイタ筆頭は、二人の夢に共感してくれた。数少ない協力者で、以前から魔導師が、隊列に加わればと、画策していた。
まだ世界中の国々を見ても、攻撃魔法の専門家、魔導師自体が少なく。独自のギルドを作ってるため、軍に引き抜くのは困難であった、カレイラは、宮廷魔導師筆頭のケイタ・イナバの協力を得て、試験的に、第一分隊に宮廷魔導師を編入させていた。
未だ……魔導師は、学園や、閉鎖的なギルド内で、惰性手にしか動かない、そんな魔導師達を軍に編入させ育てたら……、
一方で━━閉じ籠る性質の者が多い。魔導師達の意識を変えるため。ケイタ筆頭含め、有志の魔導師達は、ギルドの改革に着手している。困難であるのは承知していたが、ケイタは笑う。
━━━改革の一歩として、カレイラの理想とケイタの理念で、義理の娘エルを入隊させた。
そんな第一分隊の成果とは━━━、カレイラやケイタにとっても、小さな希望であったのだ………、
それが……、
オーラルの活躍があったとは言え。エルが活躍したのは明白。
カレイラ師団に、魔導師部隊が編入される運びとなった、その為編成に多少時間が掛かっていた。実際に魔導師を部隊に入れての今回は試金石でもあった。魔導師を含めた実戦経験があるのは、現在第一分隊、アロ補佐官だけである。時間は無いが、此度の戦の結果は必ずや、ケレル殿下、レゾン陛下に良い報告が出来ると、確信していた。
━━━ラトワニア神国を一望出来る。
希望の丘━━、
病んだ眼差しの緑がかった美しい髪の女を、気遣わしく思いながら、長身の美丈夫は、右目の下に道化のような。星の刺青をした顔を眼下に向けていた。ドヴィア騎士団の到着を見ていたようだ。
「予定通りね……、噂では、カレイラが動くらしいわ」
どす黒い憎悪を、目に宿して、
「あのオーラルも……」
毒を含むような、暗い笑みを浮かべたていた。あの男オーラルは、自分に……瀕死の重症を負わせ、愛するギラムの片目を奪った、憎い男……、
既に、ラトワニアには、100以上の配下を配している。
「チャンスはいずれ来るわ。王妃……いいえナターシャ女王の暗殺を。あの男の目の前でね」
「わかってる……、あの男の目の前で、殺してやる」
狂喜に、彩られた眼差しは、少女から甘さを奪い、顔に狂喜を孕む。
ギラムの不安を煽った……。
「二度と、お前を傷つけさせない……」
ギラムの呟きは、狂喜に、犯された少女に届くことはなかった……。
━━━ドヴィア騎士団到着から、5日後……。
聖アレイク王国が誇る。二人の『オールラウンダー』が1人率いる。第一分隊が到着した。
張りつめ緊迫した城内を、案内され、王座の間に、通されたオーラルとクエナは、荘厳で、厳粛な空気に包まれた王座の間に案内された。
光輝く一枚の絵画、精悍な顔の男と、美しい憂いを帯びた眼差しの女性が談笑していた……、噂に違わぬたおやかな笑みを、此方に向けて来て。思わず。クエナは息を飲み、緊張でガチガチになっていた。
オーラルにとって懐かしい顔である。
「女王陛下━━…」
やや上ずり、膝を着いたのクエナを尻目に、軽い感じで、
「久しぶりナターシャ、イブロ」
何の気兼ねなく、スタスタ女王陛下に近付くのである。いかな聖アレイク王国の『オールラウンダー』とて、あまりな暴挙。ゆえ呆気にとられる一同。
「あっ、オー君お久しぶりね♪」
そんな周りの事など気にした様子もなく。ぱっと顔を輝かせるナターシャ女王、
「よ~オーラル、ようやく芽が出たな」
いかにも武人で、礼儀作法に、煩いはずのイブロ騎士団長まで、嬉しそうに、出迎える。
「ちょ、ちょっとオーラル!?」
慌てるクエナ、呆気にとられる宮廷の重鎮達、ようやく三人は気付き、気不味そうに見合い、(苦笑)し合う。
「じゃ、一応。聖アレイク王国。カレイラ師団第一分隊副隊長。オーラル・ハウチューデン中尉です。こちらは同僚の━━」
「くっ、クエナ・ガイロンです陛下」
生真面目なクエナに、好意的な眼差しを送り、
「クエナさんよく参戦くださいまして。我がラトワニア神国は、貴女を歓迎いたします。と同時に、皆さんこちらのオーラル・ハウチューデンは、私と姉セシル、こちらのイブロとは旧友ですの、懐かしく、公務を忘れてしまいました、許してくださいね」
ナターシャ女王自らの謝辞に、各神殿の有力者は、成る程と納得した、
「へっ。陛下と、あっ、あのイブロ騎士団長が、オーラルと旧友………」
流石の事態に。眼を白黒させ、戸惑うクエナに、イブロは同情的な眼差しを向けた。
━━一方で、
女王ナターシャが、悪戯ぽくクスクス笑いながら、
オーラルを通じて知り合った、皆を懐かしく思い出す。ふっと眼差しに陰りを宿したナターシャに、気遣わし気な視線をオーラルが見せ、ナターシャは嬉しく思い、目礼する。
「でも、良かったですわ、オーラルとイブロがいれば、暗殺者から守ってもらえますね♪」
女王の爆弾発言に、ザワリ……、辺りがざわめいた。
「既に、炙り出しは終わってるよナターシャ、今頃オーラルの部隊と制圧は終了している」
イブロの目配せに頷き、
「早と眠れ」
イブロの魔法を食らい。クエナが崩れ落ちた。
「何を……」
喋る前に、オーラルが、クエナを取り押さえ。顔に触れられるや、魔法が掻き消えて、見知らぬ小柄な男が、現れる。
さらにイブロは、魔法を放ち、数人を魔法で眠らせ、オーラルが、神殿の有力者だった者を、次々と拘束した。
「女王陛下━━これはいったい…」
ざわめく場内。
急展開に付いて行けない様子であった。そこに足早に王座の間に入って来たのは、
「オーラル、クエナは無事だ」
無事救出された、各神殿の有力者達を連れ、カール・シタインは片眼を瞑る。
端整な甘いマスクと自信に溢れた眼差し。きびきびした身のこなしから武人としてもかなりの腕と分かる。幾人かの美しい少女達は色めき立ち、熱い眼差しをカールに向けた。
カールはカールで、ニコリと見惚れるような笑みを少女達に向けたから。何時の間にか、華やかな声が広がっていた。正に場を変えてしまったカールは、鼻高々に胸を張った瞬間。
ドス。鈍い音が響き。カールは九の字に倒れ、苦痛にのたうち回る。
「カールの癖に……偉そう」
やや不機嫌そうなエルが、邪魔と言わんばかりにスタッフの尖った先端で、脇を突いたようだ、
あれは痛い……同情的な、眼を向ける女の子達は、鋭い眼差しのエルに負けてタジログ。
「やれやれ……」
小さく嘆息するオーラルとイブロは、ほぼ同時にナイフを投げた、空中で、金属音がして弾かれた。
「ちっ、」
緑がかった髪の女が、舌打ちしながら、憎悪の眼差しで、辺りを平眼する。傍らには………、
長身の美しい顔立ちの剣士を伴い。悔しそうに唇を噛みしめ、オーラルを見付けるや、憎悪の眼を向けた、
「必ずお前を殺してやるオーラル・ハウチューデン!」
少女が呟く間に、各神殿の有力者達が、神に奇跡を祈り、神は答え、様々な奇跡を起こした、
「チッ逃げられたか……」
イブロの呟きに、静かにオーラルが頷いた。




