海賊中尉ですか?
プロローグ
━━━━南大陸、ファレイナ公国。
大洞窟から、数日。山岳に囲まれた。堅牢で、重厚な城門を抜けて、
見事な馬体の漆黒の馬が、豪奢な馬車を引く、なだらかな舗装された坂道を。
やがて開場された南門を抜けて、王城に向かう、公式な帰還とは言え。
こう固っ苦しいのは苦手なミザイナには苦痛であった。
━━現聖アレイク王国。在任の大使をしているミザイナにとって。実に三年振りの帰郷になのだが……、
勇壮な霊峰グラミスを右手に、通称桜花庭園と呼ばれる。美しい林道は、四季の花を、美しく愛でる。
春は、ミザイナの好きな桜と呼ばれる。遥か昔あった。中央大陸の木々が、ピンクの可愛らし花を咲かせている。幼少のころ、木剣片手に通った道だ。思わず。懐かしげに、眼を細めた……。
━━━ミザイナの父アルタイト・アルタイルは、防衛の要パライラの街に拠点を置く。パライラ騎士団の長であり。現国王が兄と言う王族、公爵の娘━━姫と呼ばれるのだが……、ファレイナ王族は、生まれながらの剣士が多く。女性の騎士、剣士も珍しくない。ミザイナほど剣に愛された者は希と、まっこと囁かれる。が、本人は知らない━━、
ミザイナは国王どころか、国民が認める程の剣の才能に恵まれた剣の申し子。ファレイナ有数の剣士であった。
此度の帰郷。伯父である。国王直々の帰還命令……、嫌な、胸騒ぎを覚えて、早々に帰還したのだが……、
「国王陛下、ただいま帰還致しました」
古めかしい、歴史を感じさせる。王座の間━━━、
しかしと……眉をひそめていた。国の中枢である王座の間に、僅かな、兵士しかいないことに、違和感を感じたのだ。
いかに寛容な伯父とはいえ━━━。
かなり珍しいと言えた。
「急な帰還命……、済まぬなミザイナよ……、我が国は、現在戦中である!」
「なっ……」
驚くミザイナ、苦笑すら浮かべ。伯父である国王は、告げる。あまりのことに絶句した。
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━━東大陸中部。遥か昔より神の住まわす国と呼ばれる。癒しの担い手、あまたの聖人を排出した。
秩序と規律美しき国━━ラトワニア神国………。
聖アレイク王国。建国の父、聖人アレイは、ラトワニアの生まれだと言われている。さらに建国の後ろ楯となった。当時のラトワニア神王は、後に、ラトワニアでも信望される。
大地の女神アレの神殿を、友好国アレイク……さらに。聖人アレイに敬意を表して建てたと言われてい
る。
以来━━両国の友好関係は続いている。
ラトワニア神国の首都。四方に当たる東西南北の門にには、古き神々の祖神が祭られていて。各神殿の兵士によって。荘厳な神殿門番の役割と。国内外の流通を担っており、神殿事態が、各四方の首都を守る堅牢な門となっているのだ。
その間の新しい大通りを守るように、八柱の神々の神殿がある。調度一年の暦を、それぞれ。12神の神殿で、受け持ち、様々な催事にあたるように。
━━現ラトワニア神王崩御━━。
危篤と━━伝え聞く。僅か3日後に……、息をひきとる━━享年41であった……。
若くして王妃となった。ナターシャ・アークは、元来の気弱さを垣間見せるが、姉のセシル・アークの夫、旧友イブロが、数百もの歴戦の戦士を連れ、救援に来ると聞き、一時の安堵を漏らす。
「ナターシャ王妃陛下、友国アレイクより報せがまいりました」
「聞きましょう…」
魔王ピアンザの魔手に、晒される何の国では、
あまりに過度な期待は出来ない……。
だが、旧友のオーラルがいる。僅かな期待を伺うも、不安からナターシャのほっそりした指先は、震え、王座を掴む手に力が入る。
『我が国は、友国ラトワニアの急報を聞き、我が国が誇る。二人の『オールラウンダー』を救援に向かわせる━━、主な兵数はカレイラ師団のみとなるが、許されよ━━』
ザワザワ……、驚きに場内が、ざわめいた。
「そうですか……、聖アレイク国王レゾン王に、感謝を伝えください」
使者に礼を述べ、久しぶりに魅せる。艶やかな、可憐な笑みに、使者は顔を紅葉させていた、おいとまをつげ出る間も走り出す勢いで、慌てる使者に、久しく忘れていた……、安堵の吐息が漏れでると、自然と城内は優しい笑いに、包まれた。
━━急遽カレイラ師団は、ラトワニア神国の救援に向かうべく、急ピッチで、準備が整えられていた。
そんな忙しい中。カレイラ師団にあり、劇的な立場の変化を受けたのが……、
補佐官=アロ・ジムス少佐であろうか、かの人物、二階級特進と言う、離れ業をした。すっかりカレイラ師団内で、一目置かれる存在となりつつある。補佐官とは現場の指揮権が与えられる師団内の役職で、中佐と同列に扱われる。
元々、細々した仕事を得意とするアロ・ジムスは、カレイラ師団内で、解らないことは、アロに聞けと言われていて。カレイラ准将の腹心と黙された。数日としないうちに。アロは有能な管理者としての才能を発揮する。
軍部でははやくも経理の天才と噂がされたが、本人としては、遺憾であろう、
……青白い顔は、相も変わらずで、師団領内を生き生き這いずり回る姿は、徘徊するアンデットのようで、ちょっと怖いと陰で噂されていたりする。
第一分隊━━、
念願の増員、56名を超える大所帯になって、ようやく分隊としての名目も経った頃。それぞれ小隊を任されることになった。オーラル、クエナ、カール、ミラが隊長として、同じ扱いではあるがエルには、年齢と本人の資質を加味して、特別に、補佐としてジン・ゲルマン軍曹が配属されることになった。
あいつは顔は怖いが、面倒見が良く、意外と子供好きだから、良い組み合わせだと、アロ補佐官の人事に友人を心配していたロート・ハレースはひっそりと呟いた。そんな心配性なロートはオーラル小隊に配属された。
━━━あれは半月前になるか……。
オーラル達が、任務から帰還した翌日から。3日の休暇をもらっていた。家で寝ていたオーラルを意外な人物が訪問した。
「エレーナ大司教様!」
酷く慌てる母を、優しく制止して、
「オーラルは居ますか?」
「部屋に………」
━━返事も早々に、大司教は、オーラルの部屋に入るなり、驚く、オーラルに抱き付いて、
「ありがとうオーラル……あの子が………」
歓喜に震えながら、エレーナ母様の涙声で、カールの顔が浮かぶ、
ようやく話せたのか……、
子供のようにしゃくりあげ。泣きじゃくるエレーナ母様は、何度も……何度も…、感謝を言葉に、オーラルにすがる。
「良かった……」
事情通の母は、静かに涙を拭い、微笑んでいた。
━━休暇を終えたオーラル達は、新しい小隊を指揮下に、訓練を始めた。
のだが……、
大して訓練が積まれていない第一分隊に、命令が下ったのは。それから間もなくのこと━━。
秋の始まりを告げる。豊作を願う祭りが、準備される頃である。国王より正式に命が下る。
『カレイラ陸戦師団将兵に命ずる。3日後。ラトワニア神国の救援に向かうこととする』
軍人にとって国王の命は絶対である。慌ただしく、準備に奔走することになったのである。
師団内では、アロ・ジムス補佐官の手腕で、たまたま食料の備蓄があり、遠征に必要な物質は、事足りた。足りないのは武具だった。これもオーラルの紹介で、知り合いの小間物屋を営む、職人に顔の広いオリバーさんの人力で、何とか間に合う算段であった。
━━カレイラは、次々懸念が晴らされるアロの采配に、舌を巻いていた、師団内の経理をアロに任せる一方で、
━━オーラルを密かに呼び出していた。
ケレル殿下とカレイラとの秘密会議を行っていた━━。
「オーラル、ドルガと言う海賊を知ってるかい?」
ケレル殿下の問いに、素直に首を振る。
「黒衣の調べでは、ドルガには子供がいた。アル・センバードと言う名の海賊としてね。彼はリドラニア公女を助け、公女との間に子をなし。現在子は消息不明らしい……」
にこやかなケレル殿下の言いたいこと、狙いが解らないが、理由があるはずだ。
「ナターシャ王妃。いや女王陛下は、君と旧友と耳にしている。新しい部隊編成をカレイラとケイタ筆頭に任せ。君には、第一分隊を率いて、魔王の狙い、女王の暗殺の阻止。肥大した四人の大僧正に、楔を撃ち込んで貰いたい。なるべく急務でね」
ようやくケレル殿下の言いたいことがわかってきた。オーラルは静かに首肯した。
━━━国民に、出兵が発表がされたのは、さらに数日後である。
アロが本来、率いていた分隊だが、補佐官の仕事が多忙で、本陣に残る事が決まった。よってクエナとオーラルの二人が、第1分隊を率いる副隊長に任命されることになった。クエナなど………責任の重さに何かと困惑気味であるのだが……。
急な出兵に、まだ部下の扱いに慣れない新任の隊長である三人は、慌ただしく奔走していた。そんな小隊長を優しく見詰める。軍曹のロート・ハレース、何かと世話の掛かる。エルの面倒を見てるジン・ゲルマン達第一分隊の兵士達は、オーラルがいるから大丈夫だと、歴戦の戦士の面持ちであった。




