退学ですか?
プロローグ
━━━西大陸、元魔導王国=レバンナ
━━6年前……。
5つある国々は、魔導王国レバンナの魔王ヒエン・アオザによる。強大な力の前に屈していた……。
魔王とは……、数百年もの長き時を生きた存在であった。その力は海を割り、天候を変えると言われて、一国を1人で滅ぼしたとも言われていた。魔王の力は絶大である。この世のあらゆる強力な魔法が使え。無限とも言われる魔力を使い、最強とまで言われた暴君は、ピアンザ・カリアと言う若者に、敗北した……、
━━動乱の西大陸、それを平定し……、新たな魔王となったのは……。
「ピア……」
浅黒い肌。ややきつめの印象を与える切れ長の目。長身の青年は見るからに無愛想に思えたが、目に優しい光を宿し美しく成長した、妻の心配そうな顔に、優しく微笑していた。
「大丈夫……、俺が、世界を救うから…」
不安そうな妻を。安心させようとする不器用な優しさ、自分だって辛いのに……、
「はい……」
そっと涙ぐんでいた……、
「陛下。六将揃いました」
「わかった……」
ふっと……、
外を見て目を細めていた。
ピアンザはあの日の事を何故か思い出していた……。
━━━10年前。アレイ学園、
学園長室。
オーラルは『特待生』教諭リリアに行くよう命じられ。学園長がどうして学校にいないかを理解した。そして……、
エドナ宮廷魔導師筆頭から直々に。話を聞かされて、退学命令を受諾していた……。
━━━前日。夕方。
オーラル達、魔法討論会に出た代表生徒は、
ギル・ジータ王国より戻った翌日の夕方、
学園主催の祝賀会がもようされた。
数年振りの優勝校となった名誉に、学園側の配慮である。
━━壇上に上げられたケイタ・イナバを始め。
カレン・ダレス=シルビア、ダレス家の才媛が、ケイタの横顔をちらり。愛しい気に見つめているのが印象的である。その場でリリア教諭から、ケイタは優秀者として紹介された。
思わず真っ赤になって、照れた顔をしていた。ケイタを他所に。パーティーが華やかに行われた。
━━華やかな祝賀会の場。でもピアンザの面立ちは、胸中と同じく暗い。やはり考えるのは、海中都市で思い掛けず出会った古代の民シレーヌの事を。いつの間にか考えずにはいられない。まるで日に日に想いを募らせ、彼女に恋した少年である。
ピアンザにとって、ギル・ジータ王国で経験したとある事件は。自分の出生を知ることになった……、自分がまさか古代の民エルフであると知ったのである。ピアンザは物心着いた時から孤児院で育った。棄てられたと考えていた自分が、古代の民である。エルフだったとはな……、
皮肉な話である。
「オー君♪、ピアもお疲れさまだね~」
のほほんほんわかと可愛らしく笑うレイナ・フォルトは、北大陸出身ファルバス族と言う身体能力が、優れた一族の出である。
「草むしり君も♪頑張ったね~」
相変わらず。ケイタの名前を覚える気が無いようだ……、
「良くやったな!」
満面の笑み、上機嫌なミザイナ・アルタイルは、南大陸、剣の国ファレイナ公国。騎士団長パライラ・アルタイルのご息女である。
オーラル達、ミザイナ部隊の面々は、彼女の壮大な夢を叶えるため誓いを立て、部隊を組んでいた。ミザイナの機嫌がいいのにもその辺りに理由があった。今回アレイ学園が優勝した上に、優秀者に選ばれたケイタのお陰で、部隊には多大なポイント加算されることが決まったのだ。ミザイナの機嫌も良くなるか……、
「オーラル良くやったな!」
涼しげな目元だけ、和らげ、リリア・カーベン女史が、皮肉気に笑う。
「先生……、全然似合わない」
「煩い!、わかっておる」
朱に頬を染め、凶悪な、スタッフで、オーラルの頭を狙う、
ひょいとかわしながら、
「危ないですよ~」
ドレスアップした、リリアのソリッドの際どいチェニックスカートから、美脚が、露になった。
目が、釘付けになる生徒が、増え。どよめく。
「ちっ、貴様に話がある。後で、学園長室に来るがいい」
どう見られようが一切気にしないのだが、当たらないことが悔しく。本気で残念がるリリアに、気圧されながら。
「わかりました先生……」
首を傾げた。いつも不機嫌そうな顔だが、今日はいつも以上に不機嫌そうだった。
パーティーも一段落したところを見計らいオーラルは、1人学園長室に向かった。
「入りなさい」
ノックすると……、すぐに返事があった。聞き覚えのある声がして、眉をひそめていた。
そもそもアレイ学園長が、いるのは知ってたが、見た者はいない、成る程とオーラルは、理由に気が付いた。
「お久しぶりね……。オーラル君」
艶然と柔らかく微笑する。エドナ宮廷魔導師筆頭が出迎えた。
「ご無沙汰してます。エドナさん」
エドナ筆頭の手ずから、紅茶を馳走になり、彼女の面差しが辛そうで、何となく……嫌な予感がした。
「オーラル君……、ごめんなさい………」
唐突にエドナ筆頭が、学生でしかないオーラルに謝罪していた。戸惑い、怒り、不満、様々な思いが、オーラルの胸中を駆け抜けた━━。
━━静寂……、
楽しそうな、喧騒が、僅かに聞こえていた。そっとため息付いて、
「分かりました、短い間でしたが、お世話になりました」
承諾した……。
翌日……、
オーラル・ハウチューデンの退学が、学園長の名で正式に発表された…、
━━エドワード家の長男。エドワード・ブローザ殺害した容疑で……、
殺害されたのは、昨日早朝。近隣の住人から聞き取りが済み。無実なのは明らかであった。さらにバレンタイン次席が証言していた。
商会の商人までもが、オーラルがその日に居なかったことも証言したのだが……、
エドワード・ブリュクヒルは、オーラルを名指しした。子息を殺した犯人と決めつけ、打ち首にするよう訴えた。
だが……、
どう考えても不可能に近い、ただの言い掛かりである。
と、司法も認めた。
一方で━━。
王族に連なる者の命を、無視するには、あまりに難しく。学園として譲歩として、オーラルを退学処分するしかなかったのである。
これに激怒した学生達が、大挙して職員室に集まった。オーラルに救われた貴族の子息、子女までも含む多くの生徒達であった。さらには近隣の住民。大司教まで凄い剣幕で来られた時は、エドナ筆頭も唖然として驚かせた。
……が、
誠心誠意を込めて、辛い現状をとくと話して聞かせた。不承不承みんなが帰ったのは、夕刻である。
━━仕方ないとは言え……、エドナとて後悔していた、本当にこのままで良いのか?、苛々しながらも。何か策はないかと思案した。
パーティー終わりの……、晴れやかな笑顔を複雑な思いで見送るオーラルに、バレンタイン次席は、
「済まない……」
沈鬱な顔しながら、多額の契約金が渡され。重い足取りのまま帰宅した。




