迷走
「お帰りなさいオーラル……。ギル・ジータ王国はどうだった?」
既に、退学のこと聞いていた筈の母は、いつも通りだった……、
「オーラルお土産は~」
姉など夕べ渡せなかった。お土産の催促である。苦笑しながら姉の顔を見て、小さく息を飲んだ。普段から気の強い姉の目は、真っ赤だったからだ………、
何時ものつんと澄ました。顔を作っていたが、無理してるのが解る。母が小さく頷き、姉の気持ちが、痛いほど嬉しかった、だから気付かないふりをして、
「うん、あっちで友達が出来てね」
笑みながら姉に、似合いいそうなサムエのカラフルな布地、銀のペンダント、母の好きなハープティー、高価な香辛料を渡して……、
ずしり重い。革袋をテーブルに置いて、
「魔法が売れた、契約金……、これだけあれば、数年は安心して食べていけるね」
にこやかに微笑する。いつも通り……、やる気の見えぬ弟を……、ついに我慢出来ず、抱き寄せ……、すがるように泣き崩れた。
「なんであんたが……、あんなに頑張ってたじゃないの……」
それで十分だった……、オーラルの代わりに、憤ってくれる姉……、
優しい気持ちに感謝した。
「さあ……ミリア、冷めない内に、食べましょう…」
うっすら涙ぐむ母に、促され、こうしてしめぽい夕食を終え、眠りに着いた。
━━翌朝……、
学園側から。正式な発表がなされ。リリア女史は、苛々しながら教壇に立ち。エドワード・ブリュクヒルの言い掛かりを、隠しもせず。『特待生』に話した、
何もかも……、
リリア女史は怒っていた、何も出来ない自分に……、
レイナ・フオルトは珍しく。その日。昼食を忘れた。
ピアンザ・カリアは終始不機嫌で、何も語らなかった。
ケイタ・イナバは泣いた、泣いて……、自分を責めた……、もっと……、もっと…、自分が強くならなきゃ…。決意させる程に。
ただ1人、オーラルから全て聞かされていたミザイナは、親友として、何も出来ぬ悔しさに。静かに唇を噛んでいた。
まるで全てを耐えるように……。きめ細かな肌に、強く爪をたてすぎて、血が滲む。
……数日後。
ピアンザは迷っていた……、
少ない友のオーラルの身を案じていたから。
自分がオーラルに会いに行ってよいのかと、
それでも決意して家に行くと、オーラルの母から、孤児院の手伝いで、先生をしてると聞いて、少くなからず驚いた。
━━東大通りから、郊外の外れに。アレイ教の孤児院があった。そこで見たオーラルの姿に、流石に眼を丸くした。
「オー先生!、これ読んで~」
おしゃまな女の子が、おねだりしてると、僕も、私も、せがまれ、もみくちゃにされながら、優しく、子供達の頭を撫でてやれる。そんな優しい顔を見て。子供達はオーラルになついてた。
意外な、気がしたが……、考えてみれば、ケイタの面倒見て、学園を退学になったくらいである。面倒みはいいのかもしれないな。そう思い直したら……、意外とオーラルの先生姿は、似合うなと納得していた。
「お兄ちゃん~、誰?」
「ん?」
いつの間に小さな女の子が、ピアンザのズボンの端を握りしめていた。
「あっいや…」
困り果てていると、
「オー先生。ラナが、知らない。お兄ちゃんになついてるよ~」
柄にもなく、慌てるピアンザに気付いたオーラルは、人の悪い笑みが浮ぶ。
「あのお兄ちゃん先生の友達だから、遊んで貰いなさい!」
「なっ」慌てるピアンザ、言い訳すら言えず。大歓声に消えていた。
子供のパワーは……恐るべし。遠慮などしない子供達。散々ピアンザを引きずり回して、いつの間にか考えることも馬鹿馬鹿しくなる程。
「本当に疲れた……」
暗くなるまで、子供達と遊び、夕食を共にして、帰る頃には、ヘトヘトにっていた。
それにオーラルの元気な様子が見れて。多少なりとも安心していた……、
「家族か……」
孤児院の子供達を見てると。強く願う、今日は有意義な1日となっていた…。
━━その日の夜中……。
郊外、街外れの林で、オーラルは、木刀を手に、1人訓練をしていた……、
それは迷い……、
父と同じ土竜騎士になるかの葛藤……、今もどうするか迷いがあった……、
母は、何も言わない……、
行方不明の父、
母は、父と同じ土竜騎士になること望んでいる。
今日ピアンザと会って余計に感じた。仲間から置いてかれた不安……、
1人だけ残されたような、漠然とした恐怖が、胸中にあった。
「ピアンザ…、ミザイナ、レイナ、ケイタ……」
ミザイナ部隊の面々の顔が、脳裏を走る。言い知れぬ不満が、剣先に現れ、乱れた斬撃となり。木の幹に弾かれ、手が痺れた。
「何をしてるんだ俺は……」
だから苦悩した。




