エピローグ
「済まない……」
血を吐くように、項垂れた。
ちょっとしたことで、破綻しそうな危険な予兆すら予感させる。精神状態だとオーラルは感じた。
「ん……、ここは?」
優しい光を宿した、アイスブルーの瞳が、パチリと開き。辺りをキョロキョロ見回して、首を傾げた。鳴動は地鳴りのように、木霊していたが、彼女が目覚めると、鳴動が弱まったように感じた。
ピアンザから、かいつまみ今までの話を聞き終えると、シレーヌは眉をひそめ、何かを思い出すように、首を傾げた。
「あっ、そうだわ……確かこの先に、脱出ポットがありました!」
聞きなれない名前だが、脱出する手段があるのだと予感した。いちるの望みが生まれたのだ。
自力で歩くまで、なんとか回復した、シレーヌの案内によって、隠された仕掛けを作動させるや、下に下りる階段が現れた。みんな不安を抱えながら、下までどうにか降りて行くと。見たことない船があった。ミレーヌに言われるまま。全員が乗り込むと、かなり狭いが……、シレーヌが、船のコンソールの前に立ち、なにやら操作すると、船は生き返った。
『海底都市…の崩壊を確認しました、各員、席に着いてください』
「間も無く、出発しますから、皆さんは席に着いて、シートベルトしてくださいね」
言われるまま、席に着いて、椅子に付いてる。平べったい布の先に金属が、付いた物を、膝の外側にある。金属の穴に入れるとカチリ音がした。
『緊急発射5秒前……4、3、2、1……発射』
椅子に押し付けるような、負荷を全身に感じ。周囲の海中を映す映像は、凄まじいスピードで次々と変わる……、やがて……。
━━━ざっぷん。船が海上に浮き上がり。助かった。
「そうでしたか……貴方は、間違い無く黒の民ですわ」
ピアンザとシレーヌの声が聞こえてきた。
「気が付いたか、オーラル?」
心配そうな、ピアンザに、手を上げて答えた。
「何とかね」
微笑を浮かべていた。辺りを見ると、目覚めたのはオーラルだけらしい。
「腹減った……、エバーソンの奢りで、食べ放題かな?」
囁くような呟きに、悪夢を見てる様子の、エバーソンの眉根が寄り。呻き声が漏れた。代わりにイブロの顔から、満面の笑みが浮かんでいた。それでも寝ていると言うから……。二人は対照的ではあるが、器用な真似をしていた。
「まあ~、クスクス」
シレーヌが楽しそうに声をたて笑う。まだ終わりではないだろうが、この時の達成感を、みんなが一生忘れない。そんな予感がした。
━━余談だが、泥のように寝ていて。皆は知らないが、
翌朝。街ではちょっとした、騒ぎになっていた。季節外れの豊漁で、小さな漁港は賑わう………。
古代の民の街が消え、魚を遠ざける。魔法が消えた影響だとは誰も知らない━━。
10年後━━━。
━━聖アレイク王国…。庭園。
宮廷魔導師筆頭ケイタ・イナバは、ケレル殿下に呼ばれ、急ぎロイヤルガーデンに向かっていた。容姿こそ大人びているが、女性のような顔立ちは健在である。
先に来ていた、近衛連隊長セレスト・ブレア、
重騎士団長ギルバート・ガロン、
陸戦師団長カレイラ・バレス、
フロスト騎士団長ブラレール・ロワイ、
アレイ教大司教エレーナ・シタイン。
そうそうたる重鎮の中に、
財務大臣カレン・ダレス=シルビアの姿もある。ダレス家は世襲制である。公務では、カレン・ダレス名を名乗っている。
久しぶりに会う妻の元気そうな顔に。小さく微笑むと。シルビアの冷たい容貌もふわりと和らいで見えた。
「久しいな。宮廷魔導師筆頭殿」
研究者として名を馳せるケイタは、あまり研究所から出ないので有名である。次席のエドナ・カルメンのように、学園に入り浸る。魔導師は珍しいと言えたが、
「お久しぶりです。ケレル殿下」
優雅に一礼するケイタは、研究者とは言え、アレイ学園の卒業生、それなりに体は鍛えているようで、細身だが無駄のない筋肉を付けていた。
ケイタ夫妻には、双子の子供が生まれたと聞くが、それぞれ魔法と財務に、片鱗を見せてると言う、
「魔王について……旧友である。筆頭殿の意見が聞きたい」
カレイラ・バレスは現在、時期国王となるケレル殿下の懐刀であり、5人しかいない。
『オールラウンダー』の称号を持つ稀有な人物である。鋭い眼差しをケイタに向けた。
きたか……、重い溜め息を吐いた…。
あれから10年……、
先輩で、兄のように慕う人物を思い出した……、
まだ街にいる。そう聞いていた……。
そしてケイタは決断する。自分の国を滅ぼし国王になった、親友のことを…魔王ピアンザのことを。
エピローグ
━━━10年前。
アレイ学園。職員室。教頭バレンタイン次席から、報告書が上げられていた。筆頭エドナ・カルメン・オードリは、バレンタイン次席に、リリアからの報告書を見せ。顔を青ざめさせていた。手にした書類の認めて、頭を垂れていた。自分の無力さにエドナは唇を噛んでいた。
その書類には、こうあった。
『オーラル・ハウチューデンを退学処分とする』
と……。




