隠れた英雄の片鱗
━━神々の神殿・跡……。
神殿からほど近くにある険しい岩山地帯。
山頂の頂きには石作の神殿があって、その奥は洞窟になっていた。
幾つもの部屋が作られていた。
また人形だった頃の生活の面影が多くのこっていた
ただ材木等ないので、その多くは朽ちた家財道具。土を精製して何とか作り出した。陶器の寝台に、動物の毛皮を敷いた寝床が部屋毎にあった。
━━━洞窟最下層。
━━闇の女神カーレルの神殿。
魔人の王レイアスは、此度の人間が……、思いがけず予想外にも中央大陸に乗り込んでくるなど、完全な予想外な行動であった。
困ったことに。空ゆを飛べない筈の人間が………、
人間にとって猛毒の瘴気の溢れる。
中央大陸に拠点を作り出したのだ。
なによりも許せぬのが、太陽神の神器で、拠点を作ったこと。あまりにも目障りだった。
魔人達は、元はと言えば。元赤の民である。赤の民と言えば、太陽神アセードラが作り出した。古代の民だ。
━━それがだ………。
あまりにも赤の民は変わりすぎてしまっていた。
古代の民だった美しい姿を失い。皮膚は爛れ、悪臭を放つようになっていた。
古代の民であった魔人達は、
人間に強い嫉妬を抱くことになった。
だから余計に、人間が許せなかったのだ。
腐っても元赤の民である万全を期していた。
レイアスは魔人の中でも、7神官に継ぐ。闇の魔力に優れた使い手を集めた。更に大陸に溢れるほど凶悪な魔物を集めていた。
安全を期した上で。大軍を送り出したのにだ。それが未だに人間達を制圧できずにいた。
余りにも不甲斐ない結果に。怒りが沸き上がっていた。
『たかが、人間の分際で………』
思わず力任せに、岩を加工して作ったテーブルに。拳を叩きつけた。
『おのれ人間め……、王に逆らうとは』
怒りの咆哮を上げていた。
━━ピシリ……、ドゴン!?。
あまりにも強大な魔力が、吹き出したため。ただの八つ当たりとて。岩のテーブルなど簡単に粉砕していた。
『人間が……、人間ごときが』
ギリリ異音が、レイアスの口から聞こえてきた。
『こうなれば……』
多少のリスクは仕方ない。怒りに身を任せながら、頭では冷静に考える。その異形の手には、神の骨で作られた。闇のスタッフがあった、
『あれを使うしかないか……』
暗い瞳のなかには、狂気の黄色い輝きが溢れだす。
━━レイアスは、闇の神殿、更に奥にある。魔力の溢れる闇の聖地に降りていた。
━━そこは……、広大な地底湖であった。
辺り一面。鍾乳洞となっていて、湖には混沌のほの暗い瘴気が毒を垂れ流す。
『オオオ…………』
怨さ声が辺りに響き渡る。黒い瘴気のあまり気付かないかもしれないが、湖の中心にある小さな島には、
次々と怨念の呻きを上げる死者が、湖に身を浸しては、やがて消えていった。
ここは魔人の王レイアスの秘密の場所であった。
━━その昔。召喚術の使い手であったレイアスは、魔人となってから、闇の召喚魔法を得意としていた。
レイアスは、死者の兵を呼び出して使役する。死霊術師だったのだ。
普段使うことがない死霊召喚を、この場でなら幾らでも作り出す事が出来た。
コポリ、粘着質な水の底が微かに見えた。数多の骨が沈められていた。
『まあよい。所詮は人間であろう』
死者の杖を掲げ、膨大な闇の魔力を注ぎ込む。
『生きとし生けるものを食らえ。ただ食らえ。人間を腐らせ。呪いの連鎖に魂を捕わせる。そして何時らの魂を契約に。戦士として永久の時を履行せよ。さあ~戦士達よ。人間を喰らい尽くせ!?』
━━呪い呪われ、呪い尽くせ。暗く高く。
時に怨念を込める闇の呪文は、朗々と。陰陰と。
闇の女神を讃える讃美歌となる。
魔人王レイアスは、集まった膨大な魔力を闇の女神カーレルに捧げた。
濃密な魔素は、猛毒の瘴気となっていて、まるで海中の中にいるような息苦しさと。行動の阻害を与えていた。扱うこと自体が非常に難しい魔力。それが闇の魔力瘴気であった。
闇色に暗く輝く。魔方陣が現れた。
6積層を越える高度な魔方陣は、緩やかに動き出した。陰陰鬱々。亡者歓喜の叫び。
湖がにわかに騒がしくなって行く。
━━コポリ。コポリと泡立ち始め。
ズゾリ。湖の底に沈んでいた無数の骸骨。死体が蠢き始めた。何年。何百年。
魔人レイアスが、自分達のために犠牲にした命あった者達。
ゆっくりとゆっくりと湖から抜け出して行った。
『黄泉の死者の兵』は、やがて大地を埋め尽くす程の勢いで、地上に溢れだした。
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最初の発見者は、ならず者の冒険者達だった。
報せを聞いた人々は、どよめいた。
「また不死者か……、面倒なことになるね~」
カールだけは小さく笑うと。集まりだした聖職者の中から。太陽神アセードラの大僧正ルメージを見つけると。訳知り顔で苦笑していた。
「大変なことになりましたな、カール大尉」
「今回ばかりは、魔導兵でも難しいね~」
大僧正相手に。随分と軽い物言いに。控えていた侍司祭の何人か、険しい顔をカールに向けていた。
「皆よ。このかたはアレイ教大司教エレーナ様のご子息、更に言えばオーラル准将の左腕と名高いカール・シタイン大尉です、皆も顔繋ぎしておくとよいかもな」
「?!」
「はっ、はい、よっ、よろしくお願いいたします」
慌てる若い侍司祭に、ピコピコ適当に手をヒラヒラさせていた。あまりにも軽い物言いに。鼻白む侍司祭に軽く笑いかけながら。
「アレ出来そうかな?」
意味ありげな物言いに。一瞬虚を突かれた顔をしたルメージ大僧正だったが、
「……なるほど。アレをやるつもりですかな?」
にっこり人好きする容姿に。悪戯ぽくウインクしてから。実に楽しげに笑うルメージに、カールは普段見せてる。軽薄な笑みではなく。不敵な自信に満ちた男の顔をしていた。
「ほっほほほ。エレーナ様は善きご子息を持たれましたな。なるほど、さて行きますかなカール将軍殿?」
「ああ~、いい呼び名だね~。俺は将来アレイク王国の将軍になる男だから~」
(ほ~う。半分冗談であったが、これはなかなかな、愉快な御仁であるな)
内心ルメージは驚いていた。と同時に、不思議な感慨を覚えていた。
(不思議な物だ……、オーラル殿があまりにも強く輝いている。だからまだその輝きに気付かないか)
ルメージは。人の運命とは分からないものだ……、
しみじみ思うのであった。
━━この数年。つくずくそう思う事ばかり、
ルメージ他。四大神を祭る神殿は、権力を得る場所。ルメージも以前はそう思っていた。
大僧正になって、初心を忘れていた頃は、ただひたすら金、金、金ばかりだった。今思えば、いかに愚かしいか、少なくともルメージ大僧正を変えてくれたのは、
(オーラル准将とナターシャ女王には感謝、感謝であるな)
そっとこの場を去る。カール・シタインの背を見送った。
(カール・シタイン殿ももしかしたら……、今は分からない小さな芽ぶいたかも知れぬな)
彼ならばもしかして………。
いずれそうなるかもと。ルメージはそう思った。
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