記憶……
━━━西大陸、パレストア帝国、学園長室。
部屋に入るなり男は苛立ち、忌々しそうに舌打ちした。古ぼけた魔法の鏡に映るのは、髪に白い物が混じり。陰気な眼差しをさらに暗くさせながら、苛々と親指の爪を噛みしめる不機嫌そうな初老の男だった。
ふっと忌々しげな顔をして、椅子に座るのは、ゼノン宰相に代わりに、代理で学園長になったゼーダ・ソロンであった、
「何を考えてるゼノンめは……、せっかくこの僕が、魔王がいない今を狙って事を起こそうとしていたのに……、何故あれほどの魔力があるゼノンが、たったあれぽっちしか魔力がない魔王ピアンザに今もかしずくのだ?、あんな若造を敬うとは……、まったく愚かにも程がある」
ゼーダ・ソロンは、魔王の役割を知らぬ。ただ己の欲望を内に秘め。野望を燃やしていたゼーダは、
新しいく作らせた闇魔法を手に。苦々しく呟く、
ゼーダが作らせた魔法は三つ、数こそ少ないが、闇魔法は扱いが難しく。難易度の高い、精神に付与される魔法が多い。
『強制』(ギアス)
『魅了』(チャーム)
『誓約』(ギアス)
(この魔法があれば……)
魔人すら従える自信があった。
「俺に任せておけば、あんな若造どもに頼らずとも。あの程度の大陸など、消し去ってくれるものを……」
ゼーダが専門とするのは、大量魔力を用いて、魔方陣を使った。儀式魔法による大規模破壊兵器での殲滅であった、
何故闇魔法の製造を急いだのか……、大規模魔方陣を用いるには、魔力の素養が高いものを100名以上が必要だったからだ。
それらの魔導師を使って、電池の役目をやらせてようやく。大規模魔方陣を完成させることが出来た。理論上ならば時空すらねじ曲げることが可能であると……、ゼーダは自負していた。
━━いっそのこと……、城の地下にある封印ごと、消えてくれれば、良かったのに……、ゼーダの権力に対する執着心は、際限がない……、
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━━━レオール連合首都アージン。
━━竜厩舎を、昼過ぎに顔を出したリブラは。シニカルに笑みを浮かべながら入っていった。
すると若い竜達が一斉にリブラに対して、注目したが、すぐに視線を外して再び惰眠を貪ることにしたようだ。
「悪いな」
竜達に声を掛けながら、厩舎の奥。一際大きな厩舎があって、リブラは引戸を上に押し上げながら開けてゆく。
『グルルルル』(お早い目覚めだなリブラ)
直ぐにリブラに気付いた竜王ブライムが、ひょっこりと顔をだしていた。
『グルルルル?』
(どうした変な顔をして?)
竜王ブライムに問われて。おやっと首を傾げたリブラは違和感を感じていた、何故かプライムの厩舎に誰かの寝息が聞こえていたからだ、
「これは驚いた……」
何時もは惰眠を貪る竜王が起きていた理由が分かったかろだ。
━━確か昨夜会った。アレイク王国の重鎮。英雄オーラル准将……、
「あっリブラ将軍、おはようございます」
「おはようって時間じゃないが、おはようみんな」
「で、こいつは一体どんな状況なんだ?」
たまたま通りかかった竜騎士見習い。竜騎士がいたので尋ねた、
「ああ~オーラルさんですね。早朝に来られたんですよ。ブライムが珍しく側に居させたのでそのままにしちゃいました」
惚けてオーラルの様子を見ながらわ、二人の話を聞いてなるほどね、
一先ず納得はした
。
━━ただ……、普段の竜王プライムは、悠然と佇み。王者の美しさのある。青き竜である、今までリブラ以外。誰も近付けようとさせなかったのだから驚いていた……、
更にリブラを驚かせたのが、
『グルルルル♪』
(彼は仲間だ)
信頼を込めて、オーラルの体に頭から優しく触れていた。
「ん……、あれここは……」
『グルルルル?、グルルルル』
(寝坊助君、君が会いたがってたリブラが来たよ)
「ありがとうブライム、おはようございますリブラ将軍」
━━眠そうな顔。何時も寝癖が付いていた少年
『グルルルル~。グルルルル』
(君からは…。リブラと同じ匂いがする)
━━拙い銀のペンダント、マセタ可愛い娘
「それはそうだよプライム、僕はリブラの子ですから」
『グルルルル!、グルルルル』
(おおー!、やはりな)
目を細め低く唸るブライム。驚いたのは周りである。リブラ自身も驚き目を見開いていた。
ゆっくりと振り返るその姿は……、あの日の朝、出掛ける前に見た息子が、少しずつ成長していくのが、幻視で来ていた
「………………ああ」
「父の名はリブラ・ハウチューデン、母の名はララ・ハウチューデン、姉の名はミリア・ハウチューデン、父は土竜騎士で、20年前に行方不明になったんだ。父の土竜の名は暴君」
オーラルの澄んだ眼差しに、魂が揺さぶられていた。リブラは静かに涙する。
「あっ、アアアアアアアアアア?!」
━━孤児院で初めて出会ったあの日、僕は……、
リブラはガツンと、頭をぶん殴ぐられたような衝撃を受けていた。
「そうだ………」
━━幼いオーラルは……、暴君を助けるために、地下迷宮に迷い込んだ。
……親友のオリバーの小間物屋で、ミリアは嬉しそうに不細工な銀細工のネックレスをくれた。
……美しく。
……幼なじみの妻ララの顔が、全ての記憶が戻った………、
「ああ……。そうだ……、そうだ!?。俺の名前はリブラ・ハウチューデン、土竜騎士だ」
ようやく全てを思い出した。
照れ臭そうに笑う息子の顔は、幼い日の面影があった。
「父さん……、暴君に会って来たよ」
「そうか……」
そうとしか咄嗟に言えなかった。なんともしまらないな、気恥ずかしさを感じて、リブラが右目を隠していた。その仕草は、オーラルと同時で……、
みんな思わず納得していた。二人は紛れもなく親子だと。
だって……寝癖まで同じだから、木陰で見てたレイナは、また泣いていた。
イノワがレイナの背を優しく慰める。
━━━その夜……。新ためてリブラが、オーラルの父であること、20年前……、デスホールの近くの坑道で見付けた。赤の民の街で行方不明になったことが伝えられた。
「……リブラ殿。それはおそらく。赤の王の街」
今まで無言だったピアンザが、意を決意して口を開いた、そして魔王として、人間の知らない隠された赤の民の王と弟の物語を語り、場が騒然となる。
「貴方は一体……」
「俺は、魔王ヒザンの実子で、新たな黒の民の長。神の封印を守る一族だ」
傍らのギラムを促した。暫く迷っていたが、
「俺は、各地に隠れ住んでた緑の民の一族の出だ」
ギラムが追従した。全てを知らされたレオールの長老達は、顔色を変えていた。
「一応聞いてはいたが……、改めて言われると感慨深いの~」
懐かしそうに目を細めたオーダイ将軍が、髭をしごいていた。
「まあ~なんだ、俺は見付けた古い街で、老人と出会った。じいさんは赤の民を止めてくれと言って、巨大な魔方陣……、あれは街中はあったな。んでもって20年後に飛ばされて、頭を打ってさっきまで記憶喪失、思い出したらでかくなったガキと同い年とは……、やれやれだな」
シニカルに笑う。余りに重い現実に。人々は沈黙したが、リブラは顔色一つ変えず。魔王ピアンザは決意を新たにする。今全てを話すべきだと。
「俺は……、いや前魔王ヒザンも。来たるべき赤の民の軍勢が再びこの世界に現れないよう世界を守る必要があった」
太陽神アセードラの存在を用いた封印によって、中央大陸は、アビス世界に封じられていた。
「いつか中央大陸が復活する。その日までに、世界を統一するつもりだったんだ……」
━━ザワリ……、魔王となったピアンザの思いを知り。事の重大性を人々はようやく感じた。
レイナにとっても。この場に集まった人々にとっても。決してピアンザのしたことは、許されることでは無い、が、間違ってるとも……。誰も言えなくなっていた。
「ナタクは赤の民。最後の生き残りだと言ってた、リブラ殿が会った老人はもしや……、赤の王プロキシス王本人だった可能性があるでしょうね」
ピアンザはそっとオーラルを見て、小さく頷いた。
「オーラルは、隠された出来事を全て……。たった1人で調べあげていた。この日が来るのを密かに準備してました。我らを運んだあの海中船ですら。オーラルが密かに準備していたものでした……」
「なんとま~あれをか?」
隅に隠れていたサミュ宰相に視線が集まる。
「……はい、皆さんに言うのは此が初めてですね。実は……。我が国が中立国となり。こうして皆さんに連合の同盟を組むにあたり。下準備をまかされていたのは、間違いなくオーラル准将の頼みでした。さらにドヴィア国の難民を受け入れる準備も随分前から、計画されていましたよね」
今度こそ……。誰もが言葉を失っていた。
いや……魔王とて、オーダイ将軍、ギラムまで愕然としていた。
「父さんはもう、気付いてるよね?。赤の民の生き残りが……、実はまだ沢山いることに」
「ああ~、やっぱりか?」
やれやれ聞きたくなかったと。疲れたような顔をして、肩をすくめていた。訳が解らずピアンザは眉をひそめる。
「オーラル?」
「ピアンザ不思議に思わなかったか?、俺が普通の人より魔力が、高過ぎることに」
意味ありげな顔をしていた。一瞬問われたことが分からず。訝しげな顔をしていた。しかしオーラルの穏やかな顔と。リブラ将軍の光に照らされ赤く見えたことで、ハッと息を飲んでいた。
「だからナタクは……、オーラルに拘ったのか……」
ふっとオーダイ将軍も、何やら考え込む、
「うむ……、これはアレイク王国の王族のみ伝えられる秘密だが……、レゾン王なら赦されるだろう、かれこれ20年以上昔の話だ。酔ったレゾン王が珍しくある話をしてくれた」
オーダイ将軍は懐かしむように、皺を深めて、目を細めていた。
「あの年は色々なことがあったな~。鷲と王はターミナルの話んしておった時に、土竜騎士の話が出たのじゃ。そしてのうこう言われた此度にもしも赤の民の話が出たら。皆に聞かせよと言われていたことがある」
━━そもそも土竜騎士とは、地下に残った赤の民だったと。
「アレイク王国の建国の父と呼ばれている。聖アレイが実は、白の民出身だったとか、これはピアンザも知らないよね?」
顔をやや青ざめさせて、驚きながら頷いた。
「まさかそれで……ナタクは、ミレーヌ姫に手を出すなと怒ったのか……」
魔王ピアンザの口から生々しい戦略の裏側を語られると。皆言葉を飲み込み。静まりかえる。
会議室に集まる一同は顔を見合せ、ピアンザはただ嘆息していた。
「それで……、どうするのだオーラル?」
誰もが其処が問題だと、うんうん頷いていた。
「最後の鍵は、父さんだった……、僕は探してたんだ、中央大陸を世界に戻して、全てを終わらせる為の手段をね……」
にこやかに笑いながら、とんでも無いことさらりと言うのだ。我が子ながら、面白い育ち方をしたとリブラは思わず膝を叩いた。
オーラルが、ギル・エバーソン王に頼んだことは二つあった。その二つ目は。
赤の民の伝承を探すこと、同じことを黒衣の一族に。さらにレイナ、ファレイナ公国のミザイナにも調べるよう頼んでいた。




