殺戮
━━━殺戮は突然始まった……。
日も登らぬ早朝。
寝静まる人々を容赦なく、
襲う……。
レオールの首都アージンから1日程度南西にある小さな町に。異形の魔人は降り立った、
魔人は爬虫類に似た風貌、全身から瘴気を発しながら、剣呑な空気を纏っていた。
『相変わらず人間は増えるのが早いな、まるで虫のうようだわい』
異形の魔人は、怒り混じりに、無造作に破の剣を引き抜くと、禍々しい闇色が溢れ出す。
『さ~あ、人間よ。滅ぶがよい』
能力を発動した。
逆さに構えると、剣の根元まで大地に、突き刺した。
━━その瞬間。
剣を中心に巨大な魔方陣が、積層となり浮かび上がっていた。
………コロン
小さな石が突然浮き上がっていた。
それは始まりでしかなかった。
魔人の立っている四方の僅な範囲内。数メートルを残して…………、
大地の隆起が始まっていた。
そう魔剣破とは、大地を隆起させることで、建造物、町や城壁を崩壊させるほどの絶大な力を引き起こす。災害を起こす武器だったのだ。
もう一つの槌の能力は、剣の形状とは関係なく。叩き潰す力を持っていた。その力は魔力によっては、決まった範囲の重力変化を起こすほどであった。
逃げ惑う人々を、嘲笑うかのように、血肉に変えながら、人間の街を破壊して行く様に。まるで快楽にしたるかの如く、嫌らしくニタリと魔人タイランは、哄笑した。
『なんと脆弱な生き物だ……』
竜は、まだ歯ごたえがあったが、
『所詮は……、脆弱な人間に屈する下等生物か、竜など物の数ではないわ!』
槌を、叩き付けた瞬間。大地は隆起して、地割れを起こした。
巻き込まれた家屋、人間の断末魔、泣き崩れた様に、ただただ哄笑していた。
「そこまでよ!」
赤い閃光と凄まじい殺気を感じて、破で凪ぎ払う、ギャリン。
火花が散った。思わぬ強い抵抗で、逆に破が跳ね上げられた。
咄嗟にタイラントが後ろに跳んだ刹那。凄まじい打撃をまともに腹部に受けて、弾き跳んでいた。
崩れた家屋の壁に叩きつけれ。瓦礫に埋もれた魔人タイランは、怒りを顕に。素早く立ち上がって、槌を振るう。
『人間の分際で……、潰れてしまえ』
赤い鎧を纏う人間に向けて能力を放つ。重力変化であった、瞬く間に人間の体重が数十倍に羽上がる、
膝を付いた襲撃者だったが、人間の癖に耐えて、すぐさま立ち上がったではないか。
『なっ、なんだと』
それどころか、凄まじいスピードで、迫ってきたではないか。
『バカな!?』
唖然と惚けてる間にも。右手に竜爪装着して、連続の蹴りから、下方からの振り上げ、アッパーカットの斜め下からの軌道に、僅に反応が遅れてしまう、
『ぐっ、我に傷を付けるとは………』
頬をザックリ切り裂かれ、痛みに驚きを隠せない。
『何故だ……、神の祝福を受けし我が身に……』
油断のならない強敵と……、タイランは気を引き締めた。
゛今ので、仕留められなかったのは、痛いわね゛
内臓を圧迫した痛みに、顔を歪めながら、鎧に備わる回復魔法を使っていた。
このレイナ専用竜装には、攻撃と回復それぞれの魔法が任意で、使える牙が6つ取り付けられていた。さらに竜装には、僅だが普通の魔法の耐性があり。僅かながら体力回復もされる付与魔法が付けられていた、だからまだ動けていたが、口内に僅な血の味がした、
とは言え戦闘中でも、受けた傷は自分で回復させるしかないのだ、
その点竜装の兜にある牙は。事前に魔法が仕込まれていた。よって魔力を消費しなくても、回復または攻撃に魔法が使えるアイテムである。
竜の牙には、強い魔力が残像していて、加工を施すと、魔法を一つだけ、ストック出来る効果をもたらすのだ。
バキン……、
兜に付いてる。牙の1つが壊れた。高価な竜の牙は、そうそう手に入らず数に限りがあるため。そうそう作ることは出来ないのだが……。
身体の痛みが消えた瞬間。一気に魔力を消費して、身体能力を上げる魔法を使い。加速して魔人に、連続の攻撃を与えた。
『人間の癖に……、やるな』
タイランは忘れていた……、堕ちる前は強敵と剣を交えることに。高揚していた武人だったことを。毎日研鑽を積んで、剣技を磨いた赤の民最強の武人だったことを━━━、
だから堕ちたタイランは、強欲な笑みを浮かべる。この人間に苦痛を与え。赦しを乞うまで痛め付け。生きたまま殺してやっると、タイラントはおのが欲望を満足させる為に。更なる攻撃を開始する。
━━レイナは久しぶりの高揚を覚えていた。ギリギリの攻防。一つ間違いで自分は死ぬかもしれないと思える、ギリギリの攻防を背に。懐かしさすら覚えていた。
タイランの連撃。上下のコンビネーションに。自然と体は動いた。
身体を回転させながら、紙一重でかわしていたのだ。
素早く立ち上がり、隙の出来たタイランに迫る。しかし体勢を戻し始めたタイランに一撃を見舞ったとしても、後が続かない。咄嗟の判断でタイランの膝を足場に、弧を描きながら、レイナの蹴りが、顎を掠めた。
隙を突いたが、攻撃が不発になってしまう、再び対峙するレイナだが、消耗が激しく。肩で息をしていた、
対してタイランの方は、余裕すら伺える自然体であった。このまま長引くとレイナの不利は否めない、
『このままじゃ不味いわね』
臍を噛みながら、大技を仕掛けるタイミングを測る。
━━上空では、竜騎士達が集まり始めていた。その中で一際大きな竜、青い鱗が、朝日に映える美しさは、まさに竜王であった。
背に。竜王の鱗で作った、竜装に身を包み。槍を手にして、戦況を静観するリブラやその傍らに、やきもきしたイノワが戦況を見ていた、
「リブラ将軍!、レイナさんが……」
刹那の攻防に、一喜一憂。まるで百面相である。
「まだだ、あの魔人とレイナは、本気を出してない。力量は魔人がやや上まるがな……」
「将軍……」
非難の眼差しに晒されて思わず、苦笑していたが、動く気はまだない。
この先。リブラが大陸を離れてる間。あのような化け物が現れないとは言えないのだ、厳しいようだが、闘える者が居なければ。自ずとリブラに依存してしまう。それは国として考えれば、良いことではないのだ。
「あの程度の相手。レイナ1人で、倒して貰わなくてはな」
非情と言える一言に。顔色を無くしていた。
レイナは竜の気配を感じていた、眼前の魔人は、驚いたように、目を細めレイナではなく上空の竜を見ていた。
「舐めるな、魔人が!」
決死の覚悟を決めていた。ただ一撃に賭ける。
━━怒りが限界まで集中力を高めた。一瞬で魔力を全身に巡らせ。独特の呼吸方により。身体強化魔法を何重にも自身にかけていた、一気に加速した。
それはまるで魔力の弾丸であった。普通の人間では耐えられない速度となって、猛然と魔人の下に入り込んでいた。
『なっ』
慌てたタイランは、咄嗟のことだがレイナの攻撃をかわそうとした、だがレイナのスピードが勝り、タイランの懐に入っていた、烈迫の攻撃を、
『甘い!』
読んでいた、タイランは、紙一重で身体を回転させながらかわしていた、更には遠心力を用いた上下からの斬撃を放つ。
『避けた瞬間が、人間の最後よ……』
「はあぁああああ!」
左右の腕に取り付けた、竜爪で、あっさり受け止められてしまい。タイランは目を剥いた。
『なっなに!?』
注意散漫だったタイランは、自らの怠慢で、大きな隙を作っていた……、
剣を弾かれたため、がら空きになった胸に、両手をそっと添えて、溜め込んでた魔力を一気に解放する。
レイナの必殺技。双掌破
波に波紋を広げるように……、タイランの全身を何度も衝撃が駆け抜け。目、鼻、口、耳、ありとあらゆる場所から、血を流しながら、タイランは絶命していた。
この技こそ北の部族に伝えられた物で、肉体とは水との思想から生まれていた。伝承では千の打撃を与えるとも言われていた。
バサリ……、
巨大な竜は、ゆっくり旋回しながら、着陸した。竜王ブライムは、レイナを誉め称える
ように咆哮を放つ。
━━ガァアアアアアアアアアアアアアアアアイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
ごっそり魔力を使っていたレイナは、全身は限界まで酷似したため疲れ果て……、
「うぐっ……」
崩れ落ちるように座り込んでいた。
「はっはっ………」
喘ぐように、貪りながら空気を吸い込む、イノワが走りよりレイナに抱きついた。
「レイナさん……」
なんとか震える手を使って、兜を脱いでから、何度も何度も空気を吸い込み。体内の気息をととのえていた。
「はあ~、疲れた」
安堵で倒れ込み。温かみある朝日の光を浴びていた、ようやく輝く笑みを浮かべた。




