始まり2
━━深夜未明……。
レオールの首都アージンにて……、
突如大地が隆起する。天変地異が起こった。
事態を終息すべく。レイナ宰相が命じたのは、住民の避難である。
「レイナさん!、化け物だ、化け物が、天変地異を起こしてる!」
頭から血を流して、青白い顔で駆け込んで来た竜騎士の1人で、唯一の女性であるイノワ・ミササ。彼女は竜騎兵の小隊長として、今夜の見廻りをしていたはずだ。
驚いたレイナは彼女の手当てをしながら話を聞いていた。
ミササは部下二人と夜半から。明け方までの哨戒任務を行っていた。何時ものように空から、街を見下ろしていると……、不気味な影を見つけた。直ちに警戒に当たったと言う……、
「まさか……あの」
先日南大陸で、猛威を振るった怪物の話を世界連合議長エバーソンから。聞いていた。
様々な情報は、ケンタウルスとの戦いに埋もれてしまって、詳しく見てはいなかった……、
「みんな……」
ミササの沈鬱な表情から、交戦したと気付いた。
「そう……」
ギリっと歯を食い縛る。魔人と呼ばれる存在は、通常の武器では傷付かず、人間には猛毒の瘴気を纏っているため、普通の兵士では勝てないとか。
「至急全竜騎士を召集。リブラ将軍に知らせて!、急いで私の竜装を準備してちょうだい」
リブラは昨夜から、ケンタウロスの王との会談で、出かけてる今。戦える者は限られていた。
一瞬で判断して、
「一般兵。市民は、魔人を見つけても逃げるよう、厳命して」
目端の利く。部族の若長が頷き。伝令兵を探しに走る。
「イノワ、部屋に来てちょうだい」
「はい」
怪我を理由に、戦線から外れるよう言われるかと、身構えてたイノワは、安堵と嬉しそうに微笑していた。
レイナは今まで……、宰相の地位にいるために。前線に立つことは叶わなかった……、それは人間相手では個の能力は。集団の物量の前では、敵わないのを理解していたからだ。様々な奇策を得意としたリブラ将軍がいたことも項をそうした。自分が前線に立つことの必要性を。考えることもなかったのが現状であった。
だが………、
もしもイノワ達が見たのが、魔人だとしたら。レイナが相手をするしかない。竜騎士に任せることも考えたが、与えられる被害を考えると、
「そうも言ってられないわね……。」
(今回ばかりは、物量こそ邪魔になりそうだし……、)
個の力こそが今は必要である。16部族最強の拳士がやるしか無いのだ……、幸い先だっての異変の時。竜の巣で殺された竜を持ち帰り、竜鱗竜骨を加工した鎧を造らせていたのは、他でもないリブラであった。
二対ある竜装は、一つをレイナ専用に調整していた。リブラの進言による。念のためだったのだが……、
「本当に……実践で使う日が。来るとはね」
リブラの予知とも言える進言は、殆ど神がかっていた。首から顎に掛けて、すっぽり隠すタイプの兜を被ると、竜が、人になったように見えるホルムだ。
竜の鱗は、あらゆる攻撃魔法に対して耐性を有する効果を持っていて、鎧、盾だの武具にするとかなり優秀だ、普通の竜のブレスならば、防ぐと伝説にはあった。
レイナ用の全身鎧に、身を包むことで、特集な効果を得ることが出来た。それが竜の耐性(毒、幻術、闇、光、炎、氷、雷)と。
微力な体力回復であった。リブラは竜鱗の剣、竜槍を造らせたが、レイナは武術家である。拳を用いた戦いを得意としており。魔法も肉体強化に特化していて、補助の回復魔法まではマスターしていた。
だけど……、リブラに言われて、竜爪を装着出来るようしてあった。レイナの腰には竜爪が、飾りのように揺れていた。
「レイナさん……」
竜装を着たのは、二度目。一度はリブラと腕試しで着たのだが。僅差で負けたのたが、
レイナ自身はかなりの手応えを感じていた。今日のような事があるなら。武器を作っておいて正解だった。
「結局必要になるのよね……」
やになるくらい。頼りになるんだから……、口内で呟いていた。
「ミササ私を、魔人の元に運んで」
一瞬……、顔色が変わる。
「分かりました……」
レオール連合最強の戦士は、他ならぬレイナ自身なのだ、止める言葉を飲み込んだイノワを、そっと抱き締めて、
「私は大丈夫……、それにね。オー君が来るから、少しでも格好付けしとかなきゃね……」
哨戒任務前……、レイナから聞かされていた。リブラにフラれたこともだ。イノワだけには話したのである。二人は幼馴染みでありイノワはアレイク王国にいるジーナの腹違いの妹である。
「はい……」
そっと涙を拭い。不敵な笑みを浮かべるレイナに、力強く頷いた。
━━城と言うより。大きな屋敷を4つ繋げた造りの総統府。中庭には、鍛錬場があって、二人は、中庭を通り西側の竜厩舎に向かう。
イノワの騎竜は、身体中傷だらけの荒くれと呼ばれる。短気な竜で、竜王に喧嘩を吹っ掛けては、負けを繰り返す。が、まるで諦めない。不屈の竜と知られていた。そんな竜が1人の少女を選んだ。
「レブラント……、レイナさんを、あの魔人の元まで運ぶから、力を貸して……」
強い。怒りの光を宿す。眼差しを受けて、傷だらけの竜レブラントは、信頼を込め。イノワの身体に頭を刷り寄せる。
「仲間の仇……、取らなきゃね……」
伝令に戻ったイノワ以外の部下は、みんな死んていた……、
竜レブラントは、真新しい傷から。血を流すのも構わず。身を起こした。
「悪いわね……。時間が無いから、簡単な手当てだけで、済ませるわ」
竜の鋭い嗅覚に。竜の匂いを真下に感じて、少しだけ驚きに眼を見張るが、
「レイナさん……」
鋭くも労る眼差しを認め。レブラントは我が身に触れることを許した、
「ありがとうレブラント」
レイナは元々、医師を目指してた。簡単な手当てはお手の物。補助の回復魔法まで使えるから、大怪我で無ければ、執務が無いとき、率先して医療に関わる女である。
「これで……少しはマシナはずよ」
━━グォオオオオ!!。
痛みが和らぎ、竜を纏う。強い目の人間に、信頼を込めた眼差しを送る。自らの意思で、背を託していた。




