ナンパで軽薄な英雄と魔王
━━落雷が無数に降り注ぐなか、
魔法によって、地下に落とされたカール・シタインを筆頭に、ルルフ、エフィ含めた土竜騎士達6名は、
はぐれワームが、地下に作ったと思われる。ワームの巣に紛れ込んでいた。
「なんで地下なのよ!」
「頭を下げろ」
喚くルルフをカールは押し倒した。
「なっ、ちょ、ちょっと?!」
真っ赤になって、誤解してアワアワするルルフの頭を抱えるように下げさせる。
二人の頭上を、殺気が籠った何らかの塊が、轟音立てながら通りすぎて行き、岩か何かが壁に激突する。
「ルルフ?!」
慌てた感じで、少し離れた場所にいた。エフィの焦った声が暗闇に響く。
「ひぇええ、なっなんなのよも~?!」
ルルフは頭を抱えて、泣きそうな声を上げる。
「喚く暇があったら、急いで立て」
その僅かな時間も惜しい。カールは明りの魔法を周囲に放つ。
「うそ、はぐれワームが一杯じゃない!!」
辺りを見て、ようやく理解して、慌てるルルフに向かい、はぐれワームが口を開けて迫っていた、
「いやぁああああああ?!」
パニクるルルフを仕方なく抱き抱えて、カールは飛び退く。
ルルフの今まで立っていた岩だなを。喰らいながら通り過ぎて行った、
「ルルフ無事」
安堵するエフィだったが、
━━その瞬間にも別のはぐれワームが、エフィに向かっていた。
「エフィ危ない!」
「へっ」
振り替えるとエフィ。間近に迫るはぐれワーム。
「チッ」
カールは素早く惚けるルルフを横脇に抱えて、大きくバックステップしていた、
「加速」
加速の魔法を3重に自信に掛ける。
どさりとルルフを下に棄てたカールは。
必殺の刺突の構えを取っていた。
『こんなところで切り札を切ることになるとはな………』
ギラリ、カールの眼光が鋭く細まる。更に思考加速化の補助魔法まで使う。
(間に合うか………、魔法によって僅かな時間だが、体感時間が倍になったが………。彼女を助けられるかは紙一重だ)
エフィに迫るはぐれワーム、
獰猛な口を開く。無数の刃のような牙が回転しながら岩を砕いている様が見えた。
「くっ」
体が軋む音が聞こえた。
「シッ」
瞬きすること二回。一瞬の間にカールは、はぐれワームの側面に立っていた……、
「はぁあああああああああ?!」
━━バシュ、
はぐれワームの側頭部が弾けとんでいた。凄まじ威力、近くにいたルルフ、エフィの二人は、キーンと耳鳴りがしていた。
ドガとはぐれワームが壁に激突したために、弾みで土塊が降り注いできた。
「「キャアアアアア!」」
惚けてるエフィを抱えて運び、ルルフの側に落とせば、ようやく我に返った二人が悲鳴を上げていた。
━━その間にも。土竜騎士の三人は、素早く結界を張っていて、防御を固めていた。
━━もうもうと上がる土煙。
視界0……、何が起こったか、さしもの剣将二人にも理解出来ていなかったのだ。
ようやく視界がクリアとなって。二人が見たのは……、
巣の壁に激突したまま動かない。はぐれワームの巨体であった。
二人も何が起こったか、ようやく理解したようだ………、
どうにか立ち上がり、唯一手にし手にして剣を抜こうとしていた。
その間にも。働き者の土竜騎士達は、もう不用と結界を解いていた、
「流石ですな、はぐれワームの倒し方と側面からの攻撃に弱いと知っておられましたか?」
「ああ~オーラルから、聞いてたからね~」
お気楽な返事が反ってきて、二人は顔を見合わせていた。
……ようやくだ、
二人は息を飲んでいた。
はぐれワームの頭部に、大穴が開いていたからだ……。
「ヤレヤレ~難儀だね~、優秀な義弟を持つとさ」
軽薄に気楽に言うが、カールの気転によって二人の命を助けたのだが………、
「やぱり使えるね~」
魔力剣を惚れ惚れ見ては。嬉しそうに笑っていた。
この剣に魔力を込めれば、風の刃を作り出し、気流すら生み出せた。これがまた使い勝手がいいから。カールのお気に入りであった。
補助魔法を習得してから、カールの戦略は広がっていた、
今では魔法剣の長所と短所を見極め。我が力としていた。
「あっ、あんたが……あれを?」
二人は、今の今まで、カールの見た目から、力量を疑っていた。しかし実際はどうだ?、慌てるばかりで、役に立たない二人に比べて、非常に危ない場面もカールや土竜騎士の三人は、余裕をもって行動できていた。そんなギャップに、二人は唖然としていた。
「たっ、助かったわ……、あっ、あの……、一応お礼は言うわ、その……ありがとう」
短くルルフが礼を述べて、顔を上げた時だ。今まで見せてきたのはいったい………、
そう思わせる。生真面目そうな青年がそこにいた。
思わずまじまじと見詰めていた、
そこには、いつものようなへらへら軽薄な空気は消え失せていて。鋭く精悍な顔のまま目が細められる姿は。
ひとかどの者。それ所が凄まじい存在感すら漂わせていた。まるで英雄と呼ばれるオーラル准将や世界に混乱を起こした魔王ピアンザに匹敵しているような………、
「……あんた、本当に同一人物かい?」
些か失礼なエフィの物言いだが、エフィの物言いも無理もないとことだと。同行してた、土竜騎士3人は訳知り顔である。
「ルルフ、エフィ!、茶化してる場合じゃないぜ、直ぐに次が来るからな」
にやり不敵に笑ってカールは、レイピアを構えていた。注意を受けた二人はカールの真剣なまなざしに。女心を貫ぬかれ。ブルリ体をくねらせ、顔を赤くしていた。
「はっ、はい」
「うっ、うん」
妙に素直に返事をしていた。
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━━━その頃。
幻影のシャドウを先に走らせ。落雷をかわしながらも追走するギラムと弓を袈裟懸けにしたオーダイが、面倒そうな顔をして、唐突に立ち止まる。
「やれやれ……、此を殺す訳にはいかんのがな……」
オーダイの目に捕らえた者が、大木に背を預けながら、苦しそうに、顔を歪める青年を見付けていた。
彼の身体から、信じられない程の膨大な魔力が、空に向かって放たれている。この状況を見てしまえば、青年が天候を支配する魔法を使ってるのが、分かった。
「これは………、むちゃくちゃだな……」
あれだけの魔力を。短時間とは言え。ずっと放出し続ければ、命に関わる場合もあった。一抹の不安と悲しみを覚えながら。ギラムは『聖騎士の剣』を手にして、迷いが滲む。
「まて、お前さんじゃ~、あやつを殺してしまうのう~。どれどれここは一つ、わしが手本を見せてやろうかのう」
ギラムを制して、オーダイは、青年を観察していた。まるで獲物の状態を把握するかのような、淡々とした湖畔のような不可思議な眼差し。
「おい……、あれを殺さずに、倒せると言うのか?」
「まあの~、わしなら可能じゃて」
こともなく愉しげに微笑んでいた。
素早くオーダイは、弓の能力の一つ『固定』(ロック)を用いて、青年の魂を見ていた、
(ふむあれかの?、黒い淀みのような物が、魂を黒く変質させておるな。
「もっともワシとて賭けになるがの~」
小さく呟く、弓に魔力を与えて行く。
(余分な部分だけ削れば良いか)
狙いを定める。弓には視認出来る。矢等が装填されていなかったが、魔力で作られた見えない矢が、つがえられていた、
━━キン!、
澄んだ音を立てて、放たれた矢は、魂に絡み付く何かを少し削り破壊した。
次々と。魔力の矢が放たれて、魂に絡み付く黒い何かを削り続けることしばし、
━━絶え間なく。幻影であるシャドウを攻撃してた落雷は、徐々に減っていった、
………やがて。
風雨のみとなった━━、
「うぐっ………」
青年は顔を青ざめさせて。
やがて安堵したような顔で、膝を崩していた。
「彼は?」
「生きている。魔王ならば、これを何とかするだろう」
好好爺といった空気を纏うオーダイは、かかっと愉しげに笑う、
「……そうか……」
ギラムは安堵したような、複雑な眼差しを変わり果てた元同僚を一瞥して、少しづつ変化した心境のまま。僅かな信頼を込めて一つ頷いていた。
「さて……、ワシらは雨が止むまで、どこか休める場所を見つけとくかの。流石につかれたわい」
「……そうだな」
オーダイに代わり、青年━━弟の方だと思うグラムを肩に担いで、二人は森の中を歩いていった。
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━━━ぐるるる。
鋭い嗅覚を持つ。雷獣ヌエは、遥か遠くで、空に集まっていた魔力を集め、雲を作り出している。双子の片割れを見つけていた。
ヌエと意識を繋げていたピアンザは、ヌエに向かうよう命じた。
追走するオーラルには。ミザイナ部隊で使っていた、ハンドサインで知らせた、
━━やがて二人がたどり着いたのは、大きな村の跡地であった、それと分かるのも、開けた場所にあって、近くに川がある立地。周囲には家が壊れたか、瓦礫が散乱していた。
ここら辺り一面雑草に覆われていた、今や見る影もないが平野になっているが、野性種になった小麦粉、野菜がちらほら見受けれる、
現在地から計算すると。軍国ローレンと魔導師の塔の中間にあるようだ、地形的に山岳地が右側にあるため。雨季になる頃は霧が発生しやすい地形であった。
やや高地にあるため、まるで雲に包まれてるような錯覚を得ていた。また山岳の向こうは大海原が見渡せる絶景となっているようだが。この場所ならば天候を操るに、うってつけの場所のようだ。
徐々に村跡に近付くにつれて、目のよいピアンザは、瓦礫の中心に立って、此方を睨み付ける青年を発見していた。
「あっ、あううう…………」
言葉すら口に出来ないのか、ただ呻くだけの青年は、ゆっくりとピアンザに向けて、手を伸ばしていた。
まるでアンデットのように、青白い顔をしていた。
━━手を掲げた青年は、膨大な魔力をみるみる内に集め、ピアンザに放つ。
「くっ」
━━ピアンザは咄嗟に。魔王の杖を横に振るう、
━━キン。澄んだ金属音。もう一度杖を振るう。
ゾクリ……、嫌な予感がして、ヌエにもっと高く飛ぶよう……命じた瞬間、
翻ったヌエを狙って、無数の雹が、真横から殴り付けるように、一陣の風に混じり通り抜けた。
「何だ……今のは」
ゾクリ………、
まただ、
(問答する間はない……、)
上下左右、あらゆる方向から、無尽蔵に雹混じりの風が、ピアンザを狙い続ける。
まるで拳大の雹が、流星群のように、ピアンザの後を追っていた。
四方から迫る無数の雹に包まれ、逃げ場を失ったピアンザは咄嗟に、ヌエから飛び降りていた、
「戻れ」
杖をヌエに向かってに刺すと。杖から鎖が伸びてヌエを連れ戻した。
その間も自由落下に任せて、ピアンザは何とか雹の包囲網から抜け出した。
このままでは対応しきれないか、素早く判断する。
杖に繋がれた獣から、ウオルフを解き放つ。
巨大なウオルフは、通常の狼の数倍。馬より一回りは大きなウオルフで、落下するピアンザを、下から飛び上がり、背に受け止め上空から落ちてくる雹の攻撃を避けていた、
叩きつけるような雹を。ウオルフがジグザグに駆けながら、回避してゆく。
「やはりな……」
まるで自分の考えがない……、
「オーラル頼んだ……」
信頼を込めて呟いた。




