人造神とその結末
━━ファレイナ公国。
━━時は、神々の神器に選ばれし冒険者が、ファレイナ公国の港に到着した頃に戻る。
港に近付く海中船を発見した人々は、思わず二度見したほど、大層驚いたと言う。
そもそもいきなり暗色に染まる海。視界の悪い曇り空。しかも海中より船が現れたのだ。度肝を抜かされたはずである。
━━その日。
前日に到着していた。護衛役の兵士達は、豪奢な大型馬車を港に運んでいた、そして英雄達の到着をいまかいまかと待っていた。見張りの兵の報告を………。
ファレイナ公国のミザイナ女王は。此度のことに精鋭の剣士達を護衛に送っていた、民
は何事かと。海と港にある兵士の詰所ち注目していた。対して護衛役の剣士達と違い。見張りの兵はそこまで注意はしていなかったので、船は見当たらないとの報告が重なり。くつろいでいた。
「おい大変だ?!」
護衛役の剣士の一人が、慌ただしく事務所に駆け込んできた。
「おいおいどうした。そんなに息を切らしてよ、大丈夫か?」
「そっそれどころじゃない。急げ。使者の皆様が到着した」
「はぁあっ?、冗談はやめろや見張りからはそんな報告なんて……」
「しっ失礼します、見張りから海中から突然船が出現したと」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
二人は顔を見合わせていた。
━━多くの人々が、港に集まっていた。
多くは、港の仕事に着いていたもの達である。他国とは違いまだ海側は穏やかなファレイナ公国の港に、
慌ただしく護衛役の剣士達がやって来た。全員が乗り込んでも余裕のある大きな馬車であった、
「おっ、お待たせ致しました」
「護衛役の方々ですね?」
「はっ、はい」
それぞれ簡単な挨拶を済ませ。海中船に乗せてある保存食、武器、医療品を下ろすようにサミュ宰相が命じて、
早速皆で乗り込み、首都に向け。一同港を出発した。
━━数時間後。
窓際で、呑気に風景を見ながら、揺られていたオーダイ将軍の隣にギラム、
前の席に魔王ピアンザとオーラル准将、後方に配下のエル・フィアン少佐とカール中佐、その後ろにサミュ・リジル宰相と補佐官が座っていたのだが……、
━━━いつの間にやら隣に座っていた筈のオーダイ将軍か消えていた……、
「なっ……」
唐突の出来事に。隣に座っていたギラムが驚いていた。
「将軍はいったい…………」
確かに……。
今の今までに隣にいたはずである。思わず辺りを伺い見ていると、オーラルと目が合った、気まずいながらも。思わず睨み付けるような眼差しで問うていた。
「お前では……、まだ見切れなかったか、将軍ならば、宿場町にいた『道化』(クラウン)を見つけたようだ」
ため息一つついて、仕方なく。肩を竦めながら答えてやった。
「………まさか、町に入り込んでいたのか?」
「ああ……、その為の策は用意してあったのだが、この分では必要無さそうだな」
あきれ果てたピアンザの物言いに。ピアンザも気が付いていたことに。気が付いていて、ギラムは戸惑いを隠せない。
「あの御老体は、其ほどの?」
オーダイの実力を、いまいち把握出来ていないようだ、
それもある意味仕方ないことだが……、
「あの御老体はなギラム……、ナタク以上の実力者だ」
ピアンザの珍しくも素直な賛辞に、ギラムは顔を強ばらせていた。
「そんな、まさか……」
信じられないと首を振る。
「気になるなら、付いてくといい。この通りの先にまだいるから」
何でも無いことのように。ピアンザは呟き、その目は今も、遥か先をゆったり歩む、オーダイの姿を捕らえていた。
一瞬。何を言われているのか分からず戸惑っていた。が、直ぐにピアンザの言いたい事が分かった。ギラムには……、
まだ迷いがあった。自分が何故ここにいるのかを。
……何故、神器の一つである。『聖騎士の剣』は自分なんかを選んだのか………、
また恋人のこともあって、胸中は複雑であった。
「俺は構わないと思う。城に行っても正直な所。このメンバーなら俺とピアンザが顔を出せば、済む話だからな」
何でもないことだとオーラルが言ってくれた。結果ギラムの背を押していた、
「……今は、その言葉に甘える」
一瞬躊躇したが、やはり複雑な顔をして、迷いを抱えながらも。馬車から音もなく外に飛び出していた。
……わだかまりはまだ消えた訳ではない。
ピアンザと目が合った……、
自分たちとて、付き合い方を、未だに模索してるのだから……。
二人のギラムとピアンザの目は、苦笑を交わし合っていた。
━━━城下に近い。一つ手前の宿場町。
馬車が森に入った瞬間。オーダイは視線を感じていた、
「ふむ」
嫌な視線が気になりチラリオーラルに視線を送ると。魔王ピアンザまでが、此方に視線を寄越してきた。
(ほほ~う二人も気付いていたか、これはこれで面白いものよの~う、流石は魔王といった所かのう)
では遠慮なく行かせてもらおうか、楽しげ微笑しなが。自身の存在感を徐々に消して、気配を無くした。
驚く。視線の相手とギラム、僅かに動揺を誘ったようだ。
(相手は何者か分からぬが、よっほどの相手と見たわい、)
扉を開けることなる。馬車の外に出ると、オーダイは気配を探った……、
(ふむ)
ある考えに至る。恐らく道化であろうか、どうやら広域に気配を広げる察知能力と。人の中にいて、人に似せ気配を薄めさせる能力を持っていたようだが………、
オーダイの察知能力範囲内ならば意味はない、直ぐ様相手を察知する事が出来た。
━━オーダイは元々。一流の猟師だった。この手の狩りは得意中の得意であった、
相手の意表を突いて、僅かな動揺させてから、何処獲物が居るのか見つけていた━━━、
━━成る程と、小さく笑み。
(なかなか面白そうな獲物を見付けたのだ、存分に狩りを楽しまなければの~う)
オーダイは高揚していた。
オーダイは軽く馬車の屋根から飛んで音もなく着地する、
それから馬車から出たと同じ能力『瞬動』(しゅんどう)と呼ばれる。能力を使って、視線の死角に飛んでいた。この弓の能力は、己が見える範囲ならば。空間を越えて、移動出来た。なかなか使い勝手のよい能力であった。
(さてさてどうするかの~う)
オーダイのもつ神器である。『神の弓』の力は、主に4つ。
『浮遊』(ふゆう)
『瞬動』(しゅんどう)
『固定』(ロック)
『無限』(むげん)であった。
オーダイはそもそも、生まれつき。見える範囲意外の動きが感じられるといた、気配察知の能力があった。
━━それは……、今まで、幼き日より猟師として、森で生活するうちに身に付いたスキルだと思っていた、
のだが………、オーダイの察知能力とその範囲は、人知を軽く越えてると、最近になってオーラルに指摘されて、
ああ~そうかも。と納得したものである。
だから少年次代の事を思い出したのだが……、
その頃には、気配察知の能力を使いこなしていたのだなと思う、
だから当事、幼いオーダイは、森に入った瞬間から。森で生活する。あらゆる動物の気配を感じていて、何処に何が居るのか、手に取るように分かっていた。オーダイは最近まで、それが当たり前のことだと思っていた。しかしオーラルに言われるまで、それが特別なことだと理解していなかった。
━━当初オーダイは、王の命令とは言え。三体の怪物討伐など。また面倒な……、しかし仕方なく参加したのだ………、
これが中々面白そうなメンバーに、思わず膝を叩いていた、珍しく国王に感謝すらしていた。
「魔王か……。まさかヒザン殿の子息であったか、あの者はオーラル並みかのう、それにオーラルの部下二人。あれは尖った面白そうな逸材だ。育て方に依るが、オーラルに比肩しうる可能性もあるか……、ん?」
僅かな気配の揺らぎを、背後に感じていた、
(ほほ~うそうするか)
思わず笑みを深めていた。
「緑眼の騎士か。素質は群を抜いているが。いかんせん甘すぎる……、魔王辺りの入れ知恵かの?」
足を止めて、しばし待っていると、長身の目立つ若者が現れた。
「遅かったの~?」
指で、左の耳をホジホジ。フーっとゴミを払う、嫌そうな顔で、流れたゴミから身を交わす。色々聞きたそうな顔をしとるが、あえて自分から何か教えるつもりはない。あやつら二人も、もがき苦しみ。未だにあがき続けいた。
そして厳しくも辛い英雄等と呼ばれる。切り立った崖をまさに命懸けで切り開いていく道だ。
まだまだ目の前の青年を青いなと鼻で笑う。
オーダイのそんな態度に。見るからにムッとしたとギラムに。オーダイは鼻を鳴らしてから、背を向けてゆったり歩き出した。
「ちょ……」
仕方なく。またはとりあえず付いていくか。ギラムはそんな心構えかの?。
やれやれ骨が折れるわい。内心嘆息していた。
……そして、
時は竜が、落とさせた時に戻る……。
━━道化は、竜から転がり落ちて、慌てて逃げる振りをしていた。
自身を大狼を演じて、姿まで変化させるや。人間の集落を目指した。
━━途中で。女神の気配が、消えてしまい、眉をひそめたが、
歩みは順調で、小さな集落を間もなく見つけた。
━━早朝……。
たまたま家から出てきた若者を、背後から襲い。殺してから姿を奪い演じた。
若者は毎日、集落で決められた。荷運びの仕事に付いてた。その事が、項をそうした、
ついでに荷運びように飼われていた。馬を殺してから、道化は自分の両足を切り離して。自分の体を殺した青年に合わせた。また両足を使ってそれぞれ馬と大狼を演じさせ。馬には納屋にあった古い馬車を繋ぎ、青年は御者になって身分を誤魔化すことにした。駆って、大狼には森を行かせて、偵察させることにして、道化は演じる若者の姿を使って、安全にファレイナ公国を目指すことにした。
国境にあった検問を抜けて、苦もなくファレイナ公国に入り込んでいた。
道化は大きな町に入り込むと。町に溶け込んでいた……、
見た目は何処にでもいるぼくとつとした。田舎の青年である。朗らかに大麦を商店で売り払い、多少の金を手に入れて、
千年振りの食糧を確保してから、あらためて道化は考えていた。
『主の願いは、近隣の国々を瓦解させることだ』
主は言っていた。
『この世界は我がしる世界と異なりつまらない』
と、自分が知っていた世界とは、騒乱の世界であって。神々の代行者として、好き勝手にしていたのだ。それが下等な人間が、大きな顔をしていたこと、魔王が代替わりしていたこと、あまりにも平和すぎていたことだ。
人間の情報を得ることは、道化の能力を使えば容易いことだ、今も道化が見ている町の人間から話を聞く内容は、主に自動的に知らせることになっていた。
(主は言っていた、もしも黒竜が倒された場合)
道化はなるべく地位ある者として。入れ替わる必要があった。
ぼくとつとした若者を疑う人間はいない。田舎から出てきたいかにもな若者の様子に、好感を持って、色々と教えてくれたのだ。
それから間もなくのこと。道化が数日町に潜伏していると。
━━黒竜が討伐されたと聞いた、
流石に驚きを隠せなかった。
「明日。なんでも各国の有力者がファレイナ公国に、集まるってよ」
道化は、酒場で安酒をちびり飲みながら情報を集めていると。そんな噂が広がっていた、
思わず道化はほくそ笑む。おあつらいむきの有力者の情報である。チャンスを伺い、その中の1人と成り変わることに決めると。
酒場を後にして、再び町に溶け込み。機会を伺うことにした……。
……若者に化けてた道化は、馬に化けさせた足を。別の人間に化けさせて移動させた。
その間に偵察に出ている大狼には、分体のこと見張らせ。自分を追跡している。二人を襲いどうなるか、見張らせることにした………、
上手く行けば、追跡者と成り代われるなとほくそえむ。
━━最悪。両足を失ったとしても。いずれ両足分の体積は元に戻るのだ。
自分は生き残る事が目的の道化である。内には強い生存本能を持っていた。
分体が移動したことで、追跡者二人は、直ぐに騙され分体に向かって移動していく。
隠れていた道化は、急いで離れようとした瞬間。再び動揺していた。
「なんだと?!」
━━僅か数瞬で、両足が消えていた。
「馬鹿な……、そんなことあり得ない……」
忘れてた恐怖心が、ムクムク沸き上がる。あの気配が再び消えた。悲鳴を慌てて飲み込んていた。
手汗をかいて、道化は、主からの命を忘れていた、ただここにいるのが無性に恐ろしかった。
もう主の命令を忘れ。ファレイナ公国から逃げるべく。空に飛び上がった。
━━刹那、
さくさくさく
「えっ………?」
自分の核を貫いた、銀の細い金属を、不思議な顔で見ていた、
「ばかな……」
道化は絶命していた。
「ふむ他愛ないのう、まあよいか、ぬしはあれを、持ってきてくれんかの~?」
血の気を失い、力量の違いを目の当たりにして、ギラムはただ。首を縦に動かしていた。
「ラグラド程ではないが……」
幻の魔法を得意としていたギラムは、一度オーラルに受けた怪我で、右眼の力を失っていた……、
「こんな魔眼の使い方もあったのか……」
そのお陰で……、相手をただ魔眼の力を使って、ただ相手を殺す力を用いずともよいと知った。ギラムは相手に幻術を見せることが出来るだけで。このような手段が、可能になるとはと………、
(まるで弟の神の眼に似ているか)
神の目とは、物事の本質だけを見る能力であるが、持ち主の魔力次第では、自分に放たれた魔法であっても。魔法や現象。使い方によっては、怪我すら無かった事に出来てしまう。強い能力であった。使い勝手は悪く、燃費も酷いからギラムの魔眼に比べると。
使い勝手の悪い力であった。
僅か数日のことだがギラムは、自分の剣の腕が上だったことに気が付いた。
まさかオーダイ将軍に助言されて、受け入れただけでこれであった。
だがオーダイ将軍から指摘され自分の弱点も知った。絶対的な必殺の魔眼とて、弱いと思っていた幻影の魔眼とて。使い方と状況によるのだと。
今までは剣の腕に、自信があった。魔眼を切り札としていた、性格から真っ向勝負事を好んでいた。
緑眼の騎士等と呼ばれてはいたが、所詮は敗北者だったのだ……、
「まさかこんな簡単に、上手く行くとは……」
ギラムは、オーダイに言われた通りにしただけ。頻りにりに首を振りながら、狐につままれたような顔をしていた。
「人間にはのう。向き不向きがあるのじゃよ。お前さんの本質は真っ向から戦うには不向きじゃった。不運なのはそれを可能にしてしまった。中途半端な力量あったことで、邪魔をしていたのじゃよ」
こうまで結果が出されればその通りなのであろう、
返す言葉もない。
項垂れたギラムの肩を叩きながら、
「あの二人は別格じゃて、自分で、自分の本質を知ることが出来るものはのう、人は天才と呼ぶ。お前さんはそうではあるまい?」
「はい……」
その通りなので、悔しいが唇を噛みしめていた。
どうにか自分の中の葛藤と折り合いを付けてつつ、ギラムは指を鳴らしていた。すると森が消え失せ。ただの荒れ地に戻っていた。そうギラムの幻術眼の力を消していたのだ。
━━すると辺りに見えていた森所か。遠くに見えていた宿場町。遥か遠くに見えていた城や。はたまた街道も何もかもが、消えていた。
それどころか急に。辺りは明るくなっていて。太陽が登っていたことを知った。
「実に見事なものじゃな、お前さんは十分。あの二人とためを張れる才能があるわい。精進するがよい」
「はい………、ありがとうございました………」
生まれて初めて。ギラムはピアンザ以外に。頭を下げていた。自分の本質をあっさり見抜き。ラグラドの十八番である。幻術こそが自分の才能を生かせる力であると。ようやく認めた。
こうなってしまえば分かる。ただ自分はラグラドを守る為だけに剣を選び。騎士等と呼ばれていたことに……、
(確かにそうだ……、ラグラドに対しても遠慮していたのだな俺は……)
今なら分かる。自分を省みないようにしていたことを。
━━魔眼にまさか……、
一人に見せるのではなく。相手意外の範囲を固定することで、空間を幻惑させて、幻の空間を作り出すことが可能だと。考えもしなかった、
(あれはまるで……………)
本物のように見せることが出来た……、
それもあれもこれも。『聖騎士の剣』があったからこそだ、この剣の能力は、使い手の能力を補助することだ。
『聖騎士の剣』とは。
剣であるが、媒体であり、
あらゆる磨耗に耐えうる杖である。
さらに剣に宿る。狂喜の女神ルグワイトの力は……、
幻影能力だ……。ギラムの魔眼の能力と相性が良かった。
強力な力を手にした感覚があった。
「時間的感覚までが、ずれるのが問題ですね」
率直な意見に。オーダイも苦笑を滲ませていた。
「まあ~たしかにの」
幻影空間を制御している間は。空間と同じ景色を見てた、その為に時間の感覚がずれてしまうのは確かだ、
━━二人は宿場町に入り込むと。気配を追っていたが、直ぐ宿場町から郊外に出たと分かる。
その瞬間から、オーダイに言われてギラムは様々な助言を受け入れて、道化に気付かれることなく。どうにか罠にはめて、惑わせることに成功した。
当初オーダイに言われるまま、自分の能力について話していた。
「ふむ幻影の魔眼か、使い方によっては面白いのう」
を使って、時間だけ最初狂わせることになった、
━━初日は、道化を見付けると徐々に時間の感覚をずらしていった。
━━だが、ギラムが思うよりも容易く。道化は幻影にはまりこみ。時間の牢獄に入っていた。
そうなると次に視角。聴覚。感覚。作り出していた分体すらも騙せていた、
━━三日目には、道化を荒れ地にまで移動させた、
次第にギラムは自身の能力を理解していった。
今までこれほど幻影の魔眼を使ったことはなかったが、魔力の消費も少ないため、直ぐに回復して、常時幻影の魔眼が使えることを知った。
初日こそ気を張っていて、自身の変化にも気付かなかったが、この三日でごっそり。魔力を失っていたようだ……、
「ラグラド……、俺は…」
高揚が胸中に広がった。死体を担いで、二人は、オーラル達のいる。ファレイナ公国の都に急いだ。
━━ほんの半日。
王座の間から、オーラル達が退席した時に戻る。
「ちょっと良いか……、オーラル」
バローナが、困った顔をしていた、何とも言えぬ。笑みすら浮かべて。何かある……。
エル、カールの二人に先に戻るよう伝えた。
「構わない……」
と答えると、見るからに安堵した様子のバローナ、
何となく予期せぬ事が起こった……、そう認識した。
バローナが案内したのは、エドワルド公爵が公務で使う屋敷で、バローナとデーアは、離れを借りてると聞いた。
エドワルド公の屋敷に、人の気配はなく。
使用人まで居ないのは……、
「地下は物置と。牢屋がある」
何となく。話が見えてきた。
━━バローナの話によると、
黒竜討伐後。間もなくのこと……、
『バローナ様。人が倒れております!』
戦場に人?、違和感があったが、女の子が、頭から血を流して、倒れていると聞いて、その女の子を見たら……、ほっておく訳にはいかなくなったのだと言う。
オーラルとてその場合は、同じことした可能性は高い。
バローナは一度国境の街ローンに戻る予定だったので、一応バローナの屋敷に運ばせた。
「目覚めた女の子は、自分を女神と名乗った……」
「…………そうか……」
厄介な事になったな、胸中で複雑な思いを抱えながら、バローナと供に地下に降りてく。
━━清廉な、強い魔力を感じた、
━━まるで神殿に詣でたような。清らかな気持ちにされた。
三人は、一番奥の牢屋の前に足った。
鉄格子の代わりに、牢屋には強力な結界が張られていた。
改めてオーラルは牢屋の中を見れば、髪はブロンド、物憂げな顔立ちがなんとも、保護欲を抱かせる美しい少女が座り込んでいた。
彼女は落ち込んだように膝を抱えて、備え付けの固いベッドに座っていた。
「あっ………、バローナ様♪」
バローナの顔を認めると。安堵を浮かべる女神と呼ばれる少女を見ていると、バローナは気遣わしそうな眼差しを女神に向けていた、
昔の姿からは想像できない。優しい眼差し、見たことないような優しい笑顔すら浮かべていた。
「惚れたか……」
「なっ……」
真っ赤になって、動揺しまくるバローナ、困ったようだけど、ちょっと嬉しそうな女神の姿に。
「これはまた厄介な……」
天を仰いだ。
女神=メルディスは、人間だった記憶を残していた。
彼女は、女神の力を発動してる間は。あらゆる魔法。あらゆる武器の攻撃をカウンターする。絶対防御と言う能力を有するそうだ。
彼女は光の女神の遺物。その一部を体内に埋め込まれた被験者だと言った……、
「話は解った……、可能かは分からないが、エルに彼女を任せようと思う」
「エルとは?、お前が連れて来たあの女の子のことか」
訝しげに目を見張るバローナの顔に。言い知れぬ陰が落ちる。
「驚き、不審に思う気持ちは判る。だがエルは、お前とも縁がある。宮廷魔導師筆頭ケイタの義娘で、次の筆頭になる予定の子だ。安心しろとは言わない。が、信用は出来る」
ハッと息を飲んで、顔を上げたバローナは、驚きが広がる。
「彼女を侮るなよ?、あの子は心が読める能力があるからな」
オーラルの一言に。今度こそ青ざめる。よろり机に手を着いて、
「そっ、その……」
「……とても彼女は苦労した。お前の動揺は解る。しかし、一国君主になったのだろ、ならば民を背負った以上。割り切るんだ」
彼は、エルの義父ケイタと因縁を抱えていた。オーラルが苦労をしなければならなかった原因も。バローナが作ったのだから━━━。
ぐっと歯を食い縛り、そうだなと力強く頷いた。




