新学年スタート~自己紹介~
開いていただきありがとうございます。
お楽しみ下さい。
「いっつも私とアイクの邪魔ばっかりするの止めなさいよ、アンタは!!」
「それはアタシのセリフだよ!だいたい、つい最近アイクの魅力に気づいた新参者のくせに!」
「愛に時間は関係ないのよ!大事なのは気持ちよ、気持ち!私とアイクの愛は海よりも深いのよ。アンタはお呼びじゃないの!!」
「んだと~、やんのか、コラ!」
「まあまあ、お二人とも落ち着いてくださいまし。ひとまず、紅茶でもお飲みになりませんか?今日は、最高級のブラック・リリアを持ってきましたのよ。」
「ああ~、ボクも紅茶飲みたい!」
「もちろん、あなたの分もありますわよ。」
「やったー!ちなみにお茶請けとかもある?」
「『フェアリーカフェ』の妖精クッキーをよいしてます。」
「やった、やった!ボク、あのクッキー大好きなんだよね~。」
「そいうことなので、どうですかお二人とも、ひとまず休戦ということにしては?」
「「いやよ(だ)、今日という今日は……」」
「アイク様はどうしますか?」
「ああ、俺もちょうどなにか飲みたかったところだ。」
「それでは、あちらの二人はぬきにしてお茶会でもしましょうか。」
「「ちょっと、待った!」」
「どうしました?」
「「私も混ぜて(ろよ)!」」
「喧嘩は…」
「「休戦します!」」
そんなこんなんで、話しがまとまったのか机を五台ほどくっつけてひとつの大きなテーブルにすると、 どこからともなく取り出したポットでお湯を沸かし、紅茶をいれる。そして、これまたどこから取り出したのか今話題沸騰中の洋菓子屋『フェアリーカフェ』の妖精クッキーを皿にのせ、一人ひとりに配る。
そして、にぎやかなお茶会が始まった――
―――教室のど真ん中、それも一時限目の授業中で――――――
ちなみに、クラス担任であるミーア・カーティス――二十五才、独身――はずっと前から来ているが、アイクたちのこのような奇行は去年からのことなので気にせず、新年度の授業の進み方や、上級生としての心構えなどを語っている。また、他の生徒も同じな様で、まったく気にもせず先生の話しに耳を傾けている。
「カオスだ……」
「下雄ね……」
流志はこれでもかというぐらい顔を引きつらせ、親友とその取り巻きの周囲の目をまったく気にしない自由すぎるスタンスに、盛大に頭を抱えた。
一方、凜は流志の言葉と響きはまったく同じであるが、アイクへの呆れや軽蔑を多分に含んだ新しい造語を呟く。実際、アイクを見ている凜おの瞳はものすご~く冷めたい。というか極寒である。その美しさと相まって非常に怖い。
一通りアイクを冷めた瞳で睨み付けたあと、ひとつ息をはき気をとり直すと、流志の方を向き訪ねた。
「前から思ってたんだけど、流志くんとアイクくんってどうして親友になったの?流志くんはアイクくんと違って誠実だし、性格もあんまり会いそうにないんだけど……」
「う~~ん、まあ神谷さんの言いたいことは分かるけど…俺とアイクは拳で語り合った仲というか……。これは言ってもいいのかなぁ……」
「いや、言いにくいことならいいの。っていうかごめんね。ちょっと私アイクくんに失礼なこと言っちゃったね。」
流志がかなり言い渋っているのをみた凜は、これは本当に言いにくい類いのことだと感じ、話を切ろうとする。自分の発言の反省を添えて。
「いや、別に言いにくいってほどのことじゃないんだけど。ただ、こんなに大勢の人が居るところだと、騒ぎになっちゃうかもしれないんだよねぇ……」
かなり思わせ振りな態度でうんうん唸っている流志を見ているうちに、また興味が湧いてきた凜は耐えきれなくなり、身を乗り出して流志に迫る。
「もう、そんなに焦らすぐらいなら教えてくれてもいいじゃない!流志くんのイジワルッ!」
不意に凜の整った顔が近づいてきたので、ドキッとした流志は、少し顔を赤くして目線をそらしながら返事をする。
「ああ~。うん。じゃあ、ヒント、というかまぁこれがほぼ答えでもあるんだけど、とりあえずほんのさわりだけ今は教えておくよ。後はまた次の機会にってことでいい?」
「いいよ、それで。一応ここで話したら騒ぎになるんでしょ?流志くんが言うことだから本当のことなんだろうし、それに後で話してくれるんなら問題ないよ………それに秘密の話しをするなら二人きりになれるかもしれないし……」
最後の方は非常に声が小さかったので流志は聞き取ることができなかった。
流志が首をかしげ少し困惑した顔で自分を眺めていることに気がついた凜は慌てて、じゃあヒント頂戴、ヒント、と話しを戻しにかかった。
かなり不自然な凜の態度にもう一度首をかしげた後、まあいいか、と考えることを止め、凜にヒントを告げるために耳元へ顔を近づけた。
「ヒントは三年前の『愚連隊壊滅事件』だよ。」
「……」
「ん?あれ?神谷さん聞いてる?」
「……」
顔の前で手を振ってみるが反応がない。どうやら、凜は流志が急に耳元にとに来たことで固まってしまったようだ。目の焦点は微妙にずれ、頬はリンゴかなにかのように赤く染まっている。そしてその表情はどことなく幸せそうである。どうやら自分からやるのは平気だがやられてしまうのはダメなようだ。
今度は肩を揺すってみることにした。やはり反応がない。このままでは話の続きができないので、流志は奥の手を使うことにした。
少しだけ声を大きくして、周りの生徒にも聞こえるように流志は喋りだした。
「中学三年生のころ、街角で女の子が悪漢に襲われているのを見つけて助けたけど、実はそれは映画の撮影で、しかも事情を説明しようと近寄ってきたイケメン俳優の獅子峰 条をボコ……」
「いやああぁ!!流志くんストーーップ!」
固まっていた凜は自らの失敗談を流志が語り始めると徐々に意識を覚醒させ、ついさっきまでとは違った意味で顔を真っ赤にして、ものすごい速さで流志の口を塞いだ。
「むぐッ 凜ッ 鼻までおさえてる!息ができないッ! そろそろちょっとヤバイ感じになってきちゃった………。あれ、何だか綺麗な川が見えるなぁ。あっ、お花畑もあるや。そういえば兄さんが新しい薬の開発に必要って言ってた花もありそうだ。渡っちゃおうかなぁ……」
「ああっ!ごめんなさい流志くん!大丈夫?」
「あはは。大丈夫だよ。あっ、今度は舟が来たみたい。えっ、お金を払わないと乗せてやらないって?そこをなんとかお願いしますよ。今持ち合わせがなくて。後でお支払しますから……」
「わーーっ!ダメダメ!流志くんその舟にのったらダメよ!!っていうかツケで支払おうってどうなの!!」
焦りのあまり凜に鼻と口の両方を押さえられ息をすることができない流志は、どうもあっちがわの世界へ旅立とうとしていた。それに気づいた凜は慌てて手を離し流志の様子を気遣うが、流志は虚空を見つめたまま、一人ぶつぶつと訳の分からないことを呟いている。
「帰ってきて流志くん!」
ぺシぺシ。流志の意識を取り戻そうと凜は流志の両頬をたたいた。
「あれ?どうしたんだろ俺?なんかさっきまでものすごく綺麗な川と花畑があった気
がするんだけど。」
凜の意識を覚醒させるはずが、自分の意識がバイバイしそうになったという、ミイラ取りがミイラになる典型的な例になったしまった流志であった。まあ一応、凜の意識は帰ってきたので目標は達成した訳だが……。
「まったく、神谷さんは完璧なのに時々こんなドジするんだからな~。口を押さえようとして鼻まで押さえるなんてねぇ。」
そう、神谷凜という少女は少しではあるがドジッ娘の気があるのだ。例えばさっきの流志の話の落ちを言うと、近寄ってきたイケメン俳優の獅子峰 条さえも悪漢と勘違いしてしまいボコボコにしてしまい、少女を連れてその場から逃走したのだ。その後、少女から事情を聞いた凜は少女をと一緒に撮影隊のもとにもどり、皆に謝ったのだ。凜にとっては非常に恥ずかしい思い出である。
「うぅ~、ごめんなさい…」
「いやいや、そんなに気にしないで。俺は大丈夫だし、いきなりあの話をした俺も悪かったからね。おあいこってことでどうかな?」
「……う、うん。そうね。…それじゃあ話を戻すけど流志くんとアイクくんはあの『愚連隊壊滅事件』で知り合ったこと?アイクくんの事は聞いてるけど流志くんも関係してたの?」
「まぁね。詳しいことはまた別の機会に話すけど、だいたいはそんなかんじかな。そこで俺はアイクのことを知って、親友になったってわけ。」
「なるほどね。あんな大きな事件で二人は親友になったんだ。」
「そうなんだ。それにアイクは凄く義理や人情にあついし、困っている人を見捨てない優しさだってあるんだよ。まあ、だから女の子が集まってしまうんだけど……。あとアイクのあの優柔不断というか女好きというような性格や態度にも理由があるんだ。」
アイクのことを語る流志の表情はとても穏やかかで、その顔からはアイクに対する確かな信頼と強い絆がうかがえる。
そんな流志の姿をみて、凜は少しだけモヤモヤした気持ちがわき出てくるのがわかった。自分の知らない流志の過去をアイクが共有していることに、そして自分ではなくアイクに向けられた厚い信頼に嫉妬したのだ。
もちろん凜にだってこれが親友どうしの友情だとは理解しているし、流志のことを理解してくれる人がいるのは嬉しい。しかし、流志に恋する一人の乙女の心情としては、どんな好意的な感情であっても自分に、いや本当は自分だけに向けて欲しいのである。これは凜だけではなく全ての恋する乙女に言えることであろう。
そんな凜のふくれている様子をどことなく感じ取った流志はアイクについての話を打ち切り、どうしたの、と凜に尋ねた。
「ううん。何でもないよ。ただ、ちょっと アイクくんの事が三割ましくらいで憎くなった気がするだけ………まったく、ハーレムだけでは飽きたらず流志くんからも信頼されてるなんて、もうヤっちゃおうかしら。」
「ええっ!?俺、アイクの良いところ言ったつもりだったのに好感度が下がっている!」
「冗談だよ。本当はアイクくんを少しは見直したよ。」
「ああ、冗談ね。よかった、安心したよ。」
「今では生き物と認識できるまでにはなったかな。」
「そのレベルで認識改善されても!」
「ちなみに前は路傍の石、いや路傍のゴミだと思っていたけど。」
「意外と改善されてる気がしてきたっ!」
流志が毒をはき続ける凜に律儀にツッコんでいると、教卓の方からミーア先生の一際大きな声が聞こえてきた。
「は~い皆さん、少し静かにしてください。新しいクラスになって嬉しかったり、新しい友達を作りたいのは分かりますが、これから新学年最初の授業恒例の自己紹介タイムに入りたいと思います。各自、自分の好きなものやチャームポイント、なんでもいいのでクラスの仲間にアピールしちゃいましょう!」
ミーア先生の言葉ににわかにソワソワし始めるクラス。皆、こらから一年を共にする仲間にいい印象を与え、なおかつでしゃばりすぎない紹介文を考えているのだろう。
しかし、まったくそんなことを気にしてない生徒も何人かはいる。凜や流志、アイク一行である。凜は生徒会長という立場上こんなことは慣れっこなのだ。まあ、アイク一行はまだお茶会の途中であんまり先生の話を聞いていなかったようだが。
そして流志はというと、かなりの不安を感じ、眉間にシワを寄せていた。もちろん自分に対する侮蔑や嘲笑のことではない。その後が問題なのだ。去年の自己紹介の時は、クラスメートの流志へのあからさまな態度にキレたアイク(アイクとは去年も同じクラスだった)が、特に流志に絡んでいた何人かのガラの悪い生徒を放課後呼び出し、ボコボコのギッタギタにしてしまったのだ。
今回はそうならないことを切実に願う流志は、どうしたもんかと考え込んでいるのである。しかしこればっかりはどうしようもなく、流志には穏便に済むように祈るしかない。
そんな流志の考えをよそに自己紹介はスタートしていった。どこに座るかは自由であるため自己紹介の順番は座席順である。右端の先頭の生徒からのようなので、流志は一番最後である。
それぞれ、自分の長所や趣味をできるだけ明るい調子で語っていく。これといった大きな事もなく順調に進んでいる。
そして、中盤まで進みアイクとその一行の番までやって来た。流志は無理かもしれないけどできれば何もなければいいなぁ、と半ば諦めの入った気持ちで耳を傾けた。
「んっ、なんだ自己紹介か。ええ~っと、知ってるやつも結構いると思うけど俺の名前はアイク・クロス・ダウナーだ。一応『勇者』だ。いろいろと迷惑かけるかもしれないが一年間よろしく頼む。……ああ、後同じ学年の東雲流志に手をあげるヤツは許さないのでそこんところよろしく。」
流志も同じ教室にいることに気づいていないのか、本人の目の前では決して言えないであろう恥ずかしいセリフを言ってのけたアイク。クラスの反応は正直言って微妙だ。『勇者』で人望もなかなかに厚いアイクの言葉には耳を傾けたいが、流志の事は受け入れがたいといったところであろう。
そして、流志の反応も微妙である。こんなに大勢の前であんな宣言をされてしまっては余計に風当たりが強くなってしまうのだ。とはいえ、自分のことを考えての行動ということは理解しているため嬉しくないといえば嘘になる。ゆえに流志は苦笑を浮かべるしかなかった。
そんなクラス全体の微妙な空気を感じ取ったのかミーア先生はアイクの周りに陣取っているメンバーに順番をまわす。
「私はカナメ・キャンベル『魔女』よ。得意なことは燃やすこと。まあ、周りからは『紅蓮の魔女』なんて呼ばれているわ。アイクの敵やアイクに害するヤツがいたら跡形も残さず燃やしてあげるから、よろしく。」
「アタシは鬼瓦 湊よ。これから一年間よろしくお願いします…だわ。…あれ?おねがいしますわだっけ?…ああ~もういいや!とりあえず一年間よろしく!アタシは、見てわかると思うけど『鬼族』だ。自分で言うのもアレだけどかなり強いぜ!」
「まったく、湊さんったら言葉遣いが乱れてますわよ。…失礼しました。私は、リリアナ・S・イスピニアですわ。いろいろとご迷惑お掛けするかもしれませんが、一年間よろしくお願いいたします。後、何かお困りのことがあったら私にご相談を。イスピニア財閥がどんな問題でも解決してみせますわ。」
「じゃあ、最後はボクだね!ボクの名前はミミ。ボクは『獣人族』のなかの『野兎族』だよ!趣味は、食べることかな!美味しい物って本当にスゴいよね!美味しいものは人を幸せにできるし、笑顔にできる!食が一番!」
四人は思い思いに自己紹介をしていった。様々な種族が入り乱れ、かなり個性的なクラスにおいても、このメンバー(アイクと四人のハーレム要因)はかなり存在感がある。
アイクと四人の自己紹介も終わり、クラスの半数の自己紹介がすんだ。残りの生徒たちも次々と自分のアピールを済ましてゆく。
しばらくすると凜の順番となった。
「神谷凜です。一年間みなさんと楽しく過ごしていけるよう生徒会長としてもいちクラスメートとして頑張るので、よろしくおねがいします。特技とかは、特にはないですが一応武術の心得はあります。」
挨拶をする姿ですら絵になるものだと隣の流志は心の底からそう思った。決して大声ではないのだが透き通るようなアルトボイスはクラス中に響き、その微笑みは種族や性別に関係なく魅了している。これは凜の次に自己紹介をする人はかわいそうだ。皆凜の自己紹介の余韻にひたっているためしばらくはどんな話も耳に入らないだろう。
さらに順番は進み遂に流志の番がやって来た。なごやかだった空気が少し冷たくなった気がする。アイクの発言もあり、表だって自己紹介の妨害や、流志への暴言を吐く者はいないが、好意的に感じていない者も多そうだ。流志はひとつため息をつくと、穏やかな声でしゃべりだした。
「ええ~っと、東雲流志っていいます。皆とは仲良くやっていけたらいいなと思います。特技はありません。一年間よろしくお願いします。」
流志の自己紹介は実にシンプルだった。だがそこには自嘲も自分を嫌っている者への怒りや拒絶も無かった。流志は自分に誇りを持っているし、差別的な考えは仕方ないことだと分かっている。そして、それは分かりあえることだということも。故に、自分から積極的に拒むことはせず、怒りをぶつけることもない。……最も自らの矜持や仲間が傷つけられそうになったときは別だが……。
と、流志の自己紹介が終わった瞬間
「ああーー! このクラスだったのか流志! やったな! 今年も同じクラスでうれしいぜ! ってそういや俺さっきお前が聞いてるとも知らずあんなこと言っちまったよ!」
「今ごろ気づくって、アイク……。まあ、大丈夫だよ。あの『東雲流志に手をあげるヤツは許さないのでそこんところよろしく』っていうセリフは俺の心の中に大事にしまっておくよ。」
「だぁー! だからそれを言うんじゃねぇよ! しかもいい感じにまとめようとしてるがニヤニヤをかくしきれてねぇよ! お前絶対からかってるだろ!」
「そんなことはないよ。」
「目をそらしながら言うな! そしていいかげんニヤニヤをやめろっ!」
二人のやりとりにクラス中から笑いがもれる。流志のことを嫌っている生徒も笑っていた。
……そんな中でカナメは流志に冷たい視線を送り続けていた。
――クラス全員の自己紹介も終わったので、少し詳しく凜やアイクについての紹介をしよう――
『神谷 凜』
種族は『女神』である。女神は例外なく美しいが凜の美しさは格別だ。肌は純白で、腰まで伸ばした黒髪とコントラストをなしている。少し切れ長の黒い瞳はどこまでも澄んでいて、覗きこめばすいこまれてしまいそうだ。鼻は高めで鼻筋はスッと通っている。そこから少し視線を下に下ろせば、ぷっくらと柔らかそうな薄桃色の唇がある。一つ一つのパーツですら美しいのにそれらを黄金率を体現したように配置したその容姿は綺麗を通り越して神々しい。
またプロポーションも完璧と言える。身長は170リール。大きすぎず小さすぎない胸は形のいい美乳である。腰はキュッとくびれていて華奢な感じを受ける。
これだけの美貌に加え、文武両道、品行方正、人当たりもよく、二年にして生徒会長とくればその人気は計り知れない。
『アイク・クロス・ダウナー』
種族は五百年以上前に世界間移動により誕生した『勇者』である。この学校の超有名人であり、問題児でもある。とにかくやることなすことが規模が大きく、この街で起こるほとんどの事件には関係していると言っていい(流志もそのほとんど全てに参加しているし、流志のおかげで解決したものも多いのだが…)。だがしかし、その自らの正義を貫く姿勢や人情に篤く、弱いものの為に戦う心意気、それに加え持ち前の明るさもあり、皆からはかなり慕われている(特に女子)。ただ、一つ難点は女好きで優柔不断ということだろう。これには一応理由はあるが……。
身長は流志よりも高く180リールある。無駄なく筋肉のついた引き締まった体は芸術の域に達している。
容姿はというと、男子が殺意を抱くほどのイケメンだ。サラサラの金髪は肩口で切り揃えられ、光を浴びればキラキラと輝くようだ。瞳はの色は碧色。その姿はまさに王子さま、もしくは何かの物語の主人公といったところだ。
『カナメ・キャンベル』
種族は『魔女』魔女界では期待の新星とされ、かなり噂になっている。実際の実力も高く彼女の火炎魔法の強力さとその赤髪をあわせて『紅蓮の魔女』という二つ名をすでにもっている。
少し目元がキツいが容姿もなかなか整っている。特徴的なのはルビーのような紅い瞳と赤髪である。
背格好は身長160リール前半で、スッと引き締まってはいるが、でるところはきっちりとでている。
アイクに惚れている。
『鬼瓦湊』
種族は力が強く好戦的な『鬼族』であり、昔は超がつくほどの不良で、広域レディース『苦偉畏武頭』の総統をやっていたほどだ。現在は引退して、女らしくなるためにリリアナに弟子入りしている。が、成果のほどは今一つのようである。
こちらも容姿のレベルは高い。気の強そうな眼に八重歯がポイントになっている口もと。そして、鬼族特有の二本の角も彼女の魅力だろう。
身長は170リール後半はある。スラッとした体格だが若干起伏にとぼしい。
アイクに惚れている。
『リリアナ・S・イスピニア』
種族は『サキュバス』でリリアナ財閥社長の一人娘。リリアナ財閥はこの世界の一般的な移動手段である魔科学自動四輪車の世界シェアの40パーセントを占める大財閥だ。その財力は計り知れない。
サキュバスらしい妖艶な魅力を持っている。アイクのハーレムメンバーの中でも断トツに女らしく、胸もかなりのサイズである。
アイクに惚れている。
『ミミ』
『獣人族』のなかでもウサギの特徴を持つ『野兎族』だ。他の三人とは違いこれといって特筆すべきことは無いが、幼い容姿と148リールしかない小さな体躯、それにウサ耳も相まってマスコットのような雰囲気を醸し出している。また、見かけによらず大食いで美食家だ。
容姿はすでに述べたように非常に童顔であるため綺麗よりはかわいいが似合う。体型も幼児体型だ。そしてウサ耳が特徴だ。
アイクに惚れている。
最後にミーア先生が締めの挨拶をして、この日の授業は終わりとなった。授業が終わるとすぐにアイクは流志のもとへとやってきた。もちろんハーレムメンバーを引き連れて。
「よう親友!あらためて言うが、お前と同じクラスになれてうれしいぜ!」
「俺もうれしいよ。これから一年よろしく!」
「ああ、よろしく! つっても俺の方が世話になりっぱなしだけどな。」
「そんなことは気にしなくていいよ。俺たち親友だからね。」
「……ありがとな。ところでこれからこいつらと一緒に飯でも食いに行こうと思ってるんだが、お前と凜も一緒にどうだ? 互いに親睦を深めようぜ!」
「ああ そういえばまだ挨拶もしてなかったね。ごめんごめん。こんにちわ。キャンベルさん、鬼瓦さん、イスピニアさん、ミミさん。これから一年間同じクラスメートとして仲良くしてください。」
アイクとの掛け合いが楽しかったために四人に挨拶しなかったことを謝り、笑いながら仲良くしていきたいという旨を伝える。
「いやいや、今さらそんな水くせーこと言うんじゃねえよ! 今のアタシがあんのもアンタとアイクの助けがあってこそだからな、アンタには感謝してるし、尊敬もしてんだぜ!」
「そうですわ、東雲さん。私も東雲さんにはいつもお世話になっています。それにあなたが素晴らしい方だということは重々承知しておりますわ。こちらのほうこそ、よろしくお願いしますですわ。」
「そうだね~。リュウくんの作る料理って本当に美味しいからね~。美味しいものを作れる人に悪い人はいないってね! こっちこそ一年間よろしくだよっ!」
湊、リリアナ、ミミ三は者三様に流志に挨拶を返した。流志の人柄を知っている三人には嫌悪の感情などはなく、流志に対し一人のクラスメートとして純粋な好意をを抱いているようだ。
このまま和やかに話が進むと思った矢先、それは起きた。
今まで黙っていたカナメが口を開き―――
「私は反対よ。こんな奴と一緒にご飯を食べるなんて嫌に決まってるでしょう。」
――流志を冷たい視線で睨みながらそう言いはなったのだ。
「おい、カナメ!そんな言い方はないだろう!」
「どうしてこんな奴をかばうのよ!こいつ、アレじゃない……」
楽しげな雰囲気が一瞬にして霧散した。凜は怒気をかなり含んだ眼でカナメを見つめ、拳を握りしめている。これがもしアイクの仲間でなければ殴りかかっていたかもしれない。アイクはアイクでカナメを注意しているが、聞く耳を持たず困っているようだ。残りの三人はなんとも言えない表情をしている。
しかし、とうの本人である流志は落ち着いている。何度も言うようだがこんなことは慣れている、故に怒りだすことでもない。これからの態度で誤解や偏見は解いていけることはもう知っている。
それに、カナメの気持ちも分からなくもない。自分の好きな人が、皆からいい印象をもたれていない流志とつるむのが心配なのだろう。そして―これは流志の知るところではないが―嫉妬もある。アイクが流志にむける信頼の感情が羨ましかったのだ。
そう、恋する乙女は凜だけではないのだ――
流志は凜を落ち着けるために、凜にだけ聞こえる小さな声で語りかける。
「凜、落ち着いて。俺は大丈夫だから。それにキャンベルさんとはまだ話したこともないから偏見があるのは仕方ないよ。」
「でも……」
「それに言ったでしょ。こういう問題は俺自身で解決していかないといけないんだって。」
「………わかった。」
「ありがとう、凜。」
(……本当にありがとう)
あまり納得していない凜の表情に温かいものを感じた流志は心の中でもう一度感謝する。
「それじゃあっと。ええ~っと、キャンベルさんはどうして俺の事が嫌いなのかな?」
「あんたそれ、本気で言ってるの? 自分の存在を考えてみなさいよ! アイクは親友って言ってるてるみたいだけど、どうせあんたが汚いまねでもしてアイクに言わせてるんでしょう。」
「カナメッ!」
「いいよ、アイク。う~ん、それじゃあ、どうにかして認めて貰える方法はないかな?」
「……そうね。私と勝負して勝ったなら認めてあげてもいいわ。まあ無理でしょうけど。」
「荒っぽいのは止めときたいんだけどなぁ…。何か別のことにしない?」
「はっ! やっぱり逃げるのね! これだから『忌み人』は……ああ、そいえばあんたの母親も同じらしいわね。きっとあんたみたいな弱い奴n」
「……やるよ。その勝負受ける。その代わり、俺が勝ったら今の発言を取り消して……」
流志の表情が変わった。これまでの優しそうな面影はなく、冷たく、氷のようだ。瞳のなかの光も鋭い。
「……っ! や、やる気になったようね。私が勝ったらアイクに二度と近づかないってことでいいでしょ。」
「……ああ。かまわないよ。」
――こうして流志の新しい一年は波乱と共に始まることが決まった。
ご覧くださってありがとうございました。




