新学年スタート~始業式~
開いていただきありがとうございます。
お楽しみ下さい。
「う~ん。いつみても無駄だよなぁ、この豪華さ。もっと他のことにまわせばいいのに。」
「私もそう思うけど、この都市一番の学園だし、それなりのものにしないといけないんじゃない。面子やプライドもあるからね。」
「まあ、それはわかるっちゃわかるけどさ。」
そんなことをつぶやく流志と凜が今いる場所は、体育か前だ。始業式のために集まった学生達が中に入ろうとして込み合い、列をなしている。
流志と凜もその列に並んでいるのだが、彼らの周囲に人はいない。列の前後の者でさえ、大体二リールは離れたところから、時おりちらちらと二人を見るだけである。
理由は簡単で、それは二人の異質さにある。凜はその美貌に加え、文武両道、生徒会長までこなすといった超完璧美少女なのだ。纏っているオーラもそうとうなもので、そこいらの学生では声をかけることさえ難しいものがある、らしい。まあ、凜についていろいろと詳しい流志にとっては、なんだそれっ、といったところなのである‥‥
だが、そんな凜のオーラうんぬんよりも周囲を遠ざけている原因はやはり流志にあると言えるだろう。流志の存在というのはこの世界においいて好かれるものではなく、恐怖、軽蔑、憎悪の対照になってまう。『白髪』『白眼』は神世界の誕生の象徴であり、五百年前の悲劇の象徴でもあるのだ。五百年たって、悲しみは薄れたといっても負の感情というのはなかなか消えるものではない。
実際、今ちらちらと流志をみる視線にもそんな感情があからさまにみてとれる。口には出さないが決して近づきたくないというのが本音だろう。
そんな二人が、並んで楽しそうに話しているのだ。それはもう、彼らの周りに絶対防御壁を築いているようなものである。
まあ、そんな事を気にしない者も極少数ではあるがいるにはいるのだが………
(……俺がどう思われるかはそこまでの問題じゃないんだけど、凜の評価にも関わるかもしれないし、難しいところだね)
流志が凜のことを名前で呼ばなかったりするのはそういう問題を懸念してのことである。凜は気にしないと言ってはいるが、実際凜の周りの人々からは流志との付き合いをやめたほうがいいという声も上がっている。
もっとも、凜はそのことについて憤慨しているようで、さっきみたいにトゲのある感じでかえしているようだが……
「――ぇ、ねぇったら! 流志くん! 聞いてる? もう入り口についたよ!」
「ごめんごめん。ちょっと考え事しててね。」
「もうっ! 話しかけても全然反応しなくなるんだもの、無視され、てる、かと……」
「違う違う!俺が凜の事無視するわけないよ」
自分で言ってたことにショックを受けたのか、徐々に青ざめ目に涙をため始めた凜に、慌ててフォローする流志。
「本当に?無視とかしてないのね?」
「もちろん、当たり前でしょ。」
「よかったぁ。流志くんに無視されたら私……」
「いや、だからそんなことないって!なにこの無限ループ!」
またもや自分の発言に落ち込む凜をなだめすかして、流志は体育館の中にはいる。中の様子は外見にたがわず豪華そのものであった。一万人以上は軽く入るであろう体育館の細部にいたるまで素晴らしい装飾がほどこされ、まるでお城のようだ。舞台上にある講談用の机も魔界区特産の『魔木』を使っていて、明らかに高級品だというのがわかる。
正直言ってこんなに高級品やら凝った装飾などがある場所で運動など、気をつかってできるわけがなく、体育館の意味をなしているのかが甚だ疑問である。
「それじゃあ私、準備があるからそろそろ行くね。」
「ん、ああ。そういえば神谷さんは生徒会長挨拶があったね。頑張って!」
「そうなの。まあ新入生の入学式のときに一度やっているから、平気なんだけどね。‥‥ていうか流志くん、また名字で呼んでるっ!」
「いや、人が大勢いるし‥」
流志は人目が多いところやでは、凜のことを名字で呼ぶようにつとめている。これは、凜の評判などへの配慮である。まあ、さっきのように凜が落ち込んでりのをなぐさめたり、動揺したのを落ち着けたりするときはべつだが。
「もうっ!だからそんなこと気にしないでっていってるのに!だいたい皆、流志くんのことを何にも知らないのに偏見だ‥‥‥」
「ああ~、分かったから。もう時間ないから早く行って、行って!」
このままでは、らちがあかないと思った流志は凜の話をぶった切り、舞台そでの先生方や生徒会役員が集まっているところに早く行くように急かす。
「ああっ、まだ話し終わってないのに!」
流志はぐずる凜の背を押して、集合場所につれていった。凜は渋々であったが時間はないのは本当のことだったので、なんとか納得してくれた。
凜を送り届けた流志は、体育館全体を見渡す。そこには、二、三年生のほぼ全てである三千人程度(一学年千五百人ほどいる)の生徒がいた。ちなみに、一年生は今日は休みだ。
(……まだ皆は来てないか。まあ皆自由な人だからなぁ‥)
流志には友達は少ないが、居ないわけではない。どんな苦しいときも支えあい、背中を預けられる親友が四人いる。一癖も二癖もある者たちだが、共に笑い、共に泣き、共に闘ってきた最高の仲間であり、その絆は鋼のようにかたい。
ちなみに、そのなかに凜ははいっていない。凜との関係はまた別である。仲がいいのは確かだし、凜にしてみればその先……
流志は親友たちがいないことが分かると、空いている席を探し、腰を下ろした。
ピンポンパンポン― これから始業式をはじめますので生徒の皆さんは席についてください。
放送部の人だろうか―人混みのせいで詳しくはみえないが―とても綺麗な声が響いた。すると、ガヤガヤと立ち話をしていた生徒達も話をやめ、それぞれ空いてる席に座った。
―まずは学校長挨拶です。マリウス・ウインター校長先生お願いします。
その名前を聞いたとき、流志はものすごーくどんよりした顔をしたが、見ているものはいなかった。
マリウス校長はツカツカと舞台上に上がり、机の机に置いてあるマイクの高さに調節すると、一言―――
「学生諸君、今を楽しみなさい!!!以上!」
そう言いきった。ドヤ顔で………
(全くあの人は、自由すぎるというか、なんというか……いや、考えるだけ無駄かな)
流志は諸事情によりマリウス校長とは面識がある、かなりの回数で。
とまぁ、普通の学校では長くて眠たくなる子守唄のような校長先生挨拶は、たった一言という真にスピーディーにすまされた。
生徒にとってはありがたいことこの上ないが、一つの学校を背負って立つ者としてはひじょ~に微妙な感じである。
それから、一つ二つ都市教育庁代表やら何やらの挨拶を終え、いよいよ生徒会長挨拶の時がきた。
凜はその美しい黒髪をなびかせ、その名にふさわしい凜とした態度で舞台上にあがる。その姿はまさに絶世の美少女で、学園じゅうの視線を一身に集めている。
「みなさん、おはようございます。本日は天気にも恵まれ、あたらしい一歩を踏み出す私たちを祝福しています。これから、一年間楽しいことばかりではないかもしれません。しかし、私たちには素晴らしい仲間がいます。頼れる先生方もいます。辛いことも、苦しいことも、楽しいことも、嬉しいことも、皆で分かち合い、実り多い素晴らしい一年間にしましょう。生徒会長、神谷 凜」
完璧ともいえる挨拶を、これまた完璧な礼で締めくくった凜は、黒髪を揺らして舞台上から降りた。その間生徒達はおろか、先生の中にも何人かはボーッと凜を見つめていた。
一方流志はもちろん美しさには見とれたが
(こういった場面だと本当に完璧なのになぁ……。これなら、ファンクラブができるの納得だね。普段の甘えん坊や駄々っ子の感じとはおおちがいだ。)
少しだけ苦笑をもらしながらそんなことを思っていた。
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始業式もとどこおりなく終わり、凜と二人でクラス分けが張り出されているボードの前に流志はいた。
「俺は2ーDか。神谷さんはどこ?」
「私も2ーDだ!うれしい!今年は流志くんと一緒のクラスだ!」
「うんうん、俺もうれしいよ。これからもよろしく!それに、アイクも同じクラスみたいだし!」
「え~~。アイク君もいるの? あんなの女の子の敵じゃない。邪魔なだけよ!」
流志は凜のあんまりな発言に、親友をフォローしようと思い口を開きかけたが、内容がかなり的を得ていたため、フォローを諦め、ため息をひとつ漏らした。
「まぁ、とりあえずクラスに行こうか。」
クラスに着くと、席は自由のようで 二人は左隅の席に座った。隣同士で。
あれほど凜の評判を気にしていた流志が何故こうもあっさりOKしたかというと、承諾しなければ凜がスネ承諾するまで駄々をこねるのは分かりきっていたからだ。……名字で呼ぶのは凜がスネないギリギリのラインなのだ。
二人で談笑していると、外から騒がしい声が聞こえる。
「……来たね。」
「……………そうみたい。残念だけど。」
――――ガシャン
「だぁー!始業式終わってやがる!」
流志の親友のひとり、『勇者』アイク・クロス・ダウナーが現れた。
「あんた、邪魔よ!アイクの側によれないじゃない!」
「はんっ!そっちが邪魔でしょうが!アイクもアタシの方がいいに決まってるわ!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いてくださいまし。皆でアイク様をシェアすればいいんですわ。」
「ああ、それボクもさんせーい!」
――――――女の子を四人も引き連れて
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