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新学年スタート ~登校~

開いていただきありがとうございます。

お楽しみください。

人が消えてからは、暴動が起きた―と言うことはなかった。事前に可能性については知っていたし、対応策も一応はあったためだ。もちろん、世界を渡った者達は、困惑したしたが。

それでも、全体としては落ち着いていた。これは各世界共通のことだった。


世界を渡った者達も、意外なことに手厚い対応を受けた。皆、明日は我が身かもしれないという思いがあったため、『異世界人』が何らかの方法で元の世界に帰ったときのことまで考えての行動だった。これも各世界共通のことだった。


実際帰るものも出た。来たときのように唐突に。


そうこうしている内に、人々は異世界にも慣れ、渡ったとしてもなんとかなるだろう、という認識になった。



―――本当の悲劇はここからだった


―――人々が『消滅』しだしたのだ―――


今までの渡り時とは、明らかに違うなんとも気持ちの悪い真っ白の『光』に包まれると皆苦悶の表情を浮かべ、捻れるように消える。


最初は新しいパターンかと思われたが、どの世界から帰ってきた者達に聞いても、「こちらには来ていなかった」ということだった。


そして、知る。


これは、『消滅』なのだと‥‥


そう、消えるのだ。どの世界からも、完全に‥‥



事態は加速する―――



世界が混ざり始めたのだ



世界の狭間はボヤけ、大地は、海は、静かにでも確実に溶けて混ざる。


そして、その間も『消滅』は止まらない。一人また一人と消えていく。それはさながら目次録のようであり、地獄絵図のような光景だった。


いつしか人々はこう思うようになる。


これは、世界がひとつになるときの歪みの調節なのだ、と


そしてそれは、正しい。そうこれは、調節だった。世界はひとつになるために、人の数を減らしたのだ‥‥‥


遂に世界は完全にひとつになった。いわゆる『界合』だ。


その時、各世界の人口はそれぞれ、四分の一にまで激減していた‥‥


―――それから五百年程の月日がたった今、残った様々な種族の人々は悲しみを乗り越え、暮らしていた。時に手をとり、時にぶつかりながら。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



流志は一人、暖かな春の日射しの中を歩く。家から学園までの道のりはそこまで遠くはなく、歩いて十五分といったところだ。

歩道の脇には様々な世界原産の色とりどりの花が植えられており、 流志に甘い香りを届ける。

今、歩いているこの道は花の彩りの鮮やかさから『フラワーロード』と呼ばれている。


流志はその『白眼』を細めると、花々を眺めながら今日の予定を考える。


(今日は確か、始業式の後にクラス発表をしてから、それぞれのクラスで軽い自己紹介の後に解散。っと、こんな感じだったかな?う~ん、それにしても自己紹介ねぇ……今回はなんにもなければいいけどなぁ)


流志は疲労半分、諦め半分といったかんじで苦笑した。


(まぁ、なるようになるかな。それに、いつものことだしなぁ、こんな状況も。)


そんなことを考えながら歩いていると、学園までの道のりの半分くらいまできていた。周りにはちらほらと学園の制服を着ている生徒が見受けられる

そして、この生徒達の容貌や体格は多種多様だ。耳が長く尖っているエルフ族の美しい女子生徒、背丈が百七十六リール粒子の半分しかない、ズングリムックリのドワーフ族の男子生徒。その他、黒い羽のはえた魔族、二リールを軽くこえるトロール族など本当に様々だ。


生徒達が友人と挨拶をかわし楽しそうにおしゃべりをしているなか、流志は一人きりである。それどころか、生徒達の流志をみる視線には軽蔑や嫌悪、憎悪などといった感情が込められている。


(帰りはスーパーでもよっていこうか。今日は『高田屋』が安売りをしてたなぁ)


しかしそんな視線には慣れてしまっている流志はなんともないようで、颯爽と通りすぎていく。真に残念な耐性であることは否定できない。


そんなこんなで学園――正式名称『都立海南創華学園とりつかいなんそうかがくえん』略して海創かいそう――に到着。無駄に豪華な校門をくぐり、これまたでかくて豪奢ごうしゃな体育館を目指す。


――淡い花の香りがした


振り返ると、そこには見知った顔があった。


「流志くん、おはようございます。いい天気だね!」


どこまでも優雅に朝の挨拶をする女子生徒の名前は神谷かみやりん

流志の数少ない友人のひとりだ。


「ああ、おはよう。本当に気持ちいい天気だね、神谷さん。」


すると凜はその綺麗な眉をよせ、少し頬をふくらました


「もうっ! 名前で呼んでって言っているでしょう!」


対する流志は苦笑をもらし


「ああ、うん。俺も名前で呼びたいのは山々なんだけどねぇ‥‥。そうしちゃうと、いろいろ大変なことになりそうだから。」


「っ! そんなこと気にしないでよ! あんなのはほっとけばいいのよ!」


「そうは言ってもね、なかなかどうして大変なんだよ、いろいろと。」


(まあ、俺に原因があるっちゃ、あるんだけど‥‥)


――神谷 凜は女神だ。これはなんの比喩でもなければ、冗談でもない。まぎれもない女神なのだ。


――天界に住んでいた種族である『神人』のなかの『女神ヴィーナス』の末裔のひとり――それが彼女である。


女神は例外なく皆眉目秀麗なのだが、凜の美しさは明らかに次元が違う。

つやのある黒髪は腰の辺りまでのばしている。切れ長でそれでいて優しげな瞳は黒く澄んでいて吸い込まれそうだ。鼻筋はすっとすきとおっている。その柔らかそうな唇はうす桃色に染まり、見るものを悩ませること間違いない。

ひとつひとつのパーツだけでも素晴らしく綺麗なのに、それらを黄金率とはかくや、といえるほど完璧に配置したその容姿は、綺麗を通り越して神々しい。


それだけでも注目の的なのに、二年で生徒会長という文武両道で人格も良く、人当たりもいいとくれば人気の程は推して知るべしであり、ファンクラブなど当たり前のようにある。


そんな凜と流志が仲がいいというのはあまり好ましいことではないといえる。まぁ、その原因は流志にあるのだが…………


「私は気にしないよ。流志くんは流志くんだもん!」


流志の顔に、ほんの少しだけ影が射したのがみえたのだろうか、凜は笑ってそう言った。


「……ありがとう。ああ、そろそろ時間だ。行こうか……凜。」


流志はお礼の意味を込めて名前を呼んだ。


凜の反応はというと――――


「~~~あっ、あああああ、うん。そ、しょうだね。流志くんッ!」


なんとなく、何かがまるわかりなものだった。



ご覧いただきありがとうございました。

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