新学年スタート ~登校前~
開いていただきありがとうございます。
お楽しみください。
ピピピッ ピピピッ ピピピッ―――
目覚まし時計のアラームが春独特の澄んだ空気を震わして、東雲流志に朝の訪れを告げる。時刻は五時半。
流志はぐずることなく、目を覚まし、アラームを止めベットから抜け出すと、この澄んだ空気を部屋にもっと取り込むために窓を開けた。
「ふぅ、新しい生活の始まりにはぴったりのあさだ」
本日四月七日の天気――快晴――
そう、今日は東雲 流志の高校生活二年目スタートの朝なのであった――――
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
流志は二階の自分の部屋を出ると一階に降り、洗面所で顔を洗い、意識を完全に覚醒させる。次に向かった先は一階の奥に面している兄の部屋だ。部屋の前に到着するとドアをノックする。しかし、まったく返事はない。
「修治兄さん、朝だけど~。」
――やはり返事はない。
「……これは、また夜更かししたな兄さん。しょうがない、入るよ。」
ドアを開けるとそこにはカオスな光景が広がっていた。
八畳ほどの部屋には、所せましと何かの道具やら資料やら得たいの知れない薬品のビンなどが敷き詰められて足のふみ場もない。
「げっ! これが人の住む部屋なのか!? また近いうちに掃除しないと……ハァ。」
流志は軽くため息をつきながら、部屋の主を探す。が、修治の姿はどこにもない。
「あれ? 修治兄さん? …………ん、机に何かあるな。」
机の上には、資料とは別の赤い紙が一枚置いてある。そこに書いてあった内容はシンプルだった――素晴らしいアイディアがひらめいたので、研究室に行ってくる――
「ああ、なるほど。いつもの症状が出たのね…。無理しなきゃいいけどなぁ。」
ここにはいない兄の心配をしつつ、流志は部屋を後にした。つづいて、二階の姉の部屋に向かおうとしたところで、ふと足をとめる。
「そういえば、氷里姉さんも合宿でいないんだっけ。父さん母さんは仕事でもう出てるだろうし…。てことは、今日は一人か。…なんか、寂しいもんだなぁ。」
新しい日々の始まりに一人で朝食を食べないといけないことに一抹の寂しさをおぼえながら台所に向かう。台所に着くとすぐに朝食の準備に取りかかる。慣れた手つきでネギをきざみ、鍋のなかに放り込み、味噌をとかして味噌汁を作ると、冷蔵庫から卵を取り出しアッという間にだし巻き玉子(ちなみに、甘め)をつくる。そして、できあがった料理を皿に盛り、テーブルに並べる。なんとなくもの足りなかったので買い置きの納豆も添えた。
「いただきますっと、やっぱり虚しいなぁ。」
流志は黙々と食べ進めた。味的には合格ラインではあったが、いかんせん薄味な気がした。
さっさと朝食をすますと食器を片付け、学園に通う準備を始める。カッターシャツに袖を通し、学園指定の黒いズボンをはく。最後に自室から鞄を取ってくると、流志は玄関のドアを開けた。
――瞬間、やわらかな風が頬をなでる。
なんとなく空を見上げ、流志はつぶやく。
「ああ、いい天気だ」
そして、流志は歩き出す。その耳にかかるほどの長さの『白髪』をゆらし、その『白眼』で前を見据えて。
ご覧いただきありがとうございました。




