↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔みたいにかわいい彼女は、本物の悪魔でした  作者: わしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/61

第39話 - まるで旅館な家

「でか……」


 古き良き日本家屋といった佇まいに、大輝は圧倒される。ぴったりと閉じた門は、来る者を拒んでいるような威圧感だ。

 天音の家の前は何度も通ったことがあるのに、いざ入るとなると緊張する。今までは「ただの大きな家」と認識していたのが「彼女が住む豪邸」になったのだから、緊張して当然かもしれない。

 硬い顔の大輝とは対照的に、天音は楽しそうに、重厚な門を軽々と開く。


「どうぞ、入って入って~」

「お、お邪魔します……」


 大輝は恐る恐る敷地に足を踏み入れる。サクッと土を踏みしめたとき、突然周囲の喧騒がすっと消えた。


 そこには見事な日本庭園が広がっていた。大きな池は澄み渡り、母屋(おもや)らしき建物を鏡のように映している。紅葉前の木々のざわめきの中に、ししおどしの風情(ふぜい)ある音が響く。一見無造作な石も、きっと計算されて置かれているのだろう。


「すげぇ……」

「庭師さんがいつも整えてくれるんだよ。あ、庭に鯉(こい)がいるんだけど、ごはんあげる?」

「あ、じゃあ、うん」


 庭師がいることに驚く暇もなく、大輝は天音の提案にうなずく。天音はぱたぱたと母屋に入ると、すぐにカップを持って戻ってくる。鞄を持っていないのは、玄関に置いてきたからだろう。


 大輝は天音からカップを受け取り、池に近づく。よく見ると、確かに鯉が泳いでいる。柄は様々で、見慣れた赤と白や黒、金色の鯉もいる。

 鯉たちは大輝が餌を投げる前に水面から顔を出し、口をぱくぱくさせ始めた。餌をくれるとわかっているのだろう。

 大輝が茶色く丸い餌を投げると、鯉たちは一斉に水面に群がる。バシャバシャと水が跳ね、母屋の姿が波に歪んだ。


「すげー勢い」

「ごはんもらえて嬉しかったんだね」


 天音が口元に手を当て、いつになく楽しそうに笑う。大輝はまだ、心臓がバクバクしていた。


(これ、家の中なんだよな……)


 庭園に遊びに来た気持ちになっているが、ここは民家だ。非現実的な体験に戸惑いながら、大輝は天音にカップを返す。

 天音に連れられ、大輝は母屋の前にやって来る。天音が玄関を開けると、優しい木の匂いが鼻をくすぐった。


「どうぞ~」

「お、お邪魔します……」


 大輝は門をくぐったときと同じ緊張感で、玄関に足を踏み入れる。靴箱も上がり框(かまち)もその向こうの廊下も、明るく温かな木のぬくもりで統一されている。無駄なものがない整った様子は、まるで旅館のようだ。

 大輝はタイムスリップした気持ちで天音の背中を追う。案内された畳の部屋には、大きな座卓と座布団が置かれている。リビングだろうか。窓から見える庭は先ほど鯉に餌をあげた場所と同じだが、また違った趣を感じる。いきなり天音の部屋に入る可能性も考えていたので、そうはならず大輝は安心した。


「お茶淹(い)れてくるね。あと、当事者も呼んでくるから」


 大輝は慣れない正座をして、弾むように去る天音を見送る。言われて思い出したが、今日は文化祭でのノエの動向について話しに来たのだった。いつまでもぼーっとしていてはいけない。

 なんとか落ち着こうと、大輝は深呼吸する。するとすぐに襖(ふすま)が開き、盆を持った天音と正雄が入ってきた。


「お待たせ~。緑茶飲める?」

「あ、うん。えっと……正雄さん、こんにちは。お邪魔してます」

「はーい、こんにちは」


 大輝は正雄に頭を下げる。正雄はにこやかに、ひらひらと大輝に手を振る。今日はあのホストのようなスーツではなく、普通の……いや、「おじいちゃんは無敵」と書かれた謎のTシャツを着ている。

 正雄は天音が持つ盆から湯呑(ゆのみ)を取り、大輝の前に置く。


「大ちゃん、足崩しなよ。痺(しび)れるだろ」

「あ、ありがとうございます」


 大輝は言葉に甘えて足を崩す。足先はすでに痺れていた。

 天音が大輝の隣に、正雄が正面に座る。どうやら、文化祭で何かあったのは正雄らしい。


「いきなり本題に入るんだけど」


 正雄は眉間にしわを寄せ、真剣な顔で腕を組む。重たい話だろうかと、大輝はごくりと唾を飲みこむ。

 正雄は至極真面目な様子で口を開く。


「実は俺……エクソシストにわざとちょっかい出したんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。