↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔みたいにかわいい彼女は、本物の悪魔でした  作者: わしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/61

第30話 - 突然のあいさつイベント

 大輝と天音は、一日で校舎内の出し物を回りつくした。まだ見ていない体育館と校庭は人が多く、明日行っても安心だろうという予想だ。

 そして迎えた二日目。早速校庭に行こうとしたのだが、急遽(きゅうきょ)自分のクラスの展示を見守ることになった。午前中の当番の生徒が、体調不良で来られなくなったのだ。


「私もいますから、大丈夫でしょう。とはいえ……」


 教卓の前に立つ有馬が、教室全体を見渡す。


「誰も来なさすぎではないでしょうか」


 教室の中には、大輝と天音と有馬の三人しかいなかった。

 大輝は苦笑いで展示物を見る。模造紙をつなげた大きな紙に書かれているのは、大輝たちの学校の校章だ。それはよく見ると、全て手形でできている。


(手形で作った校章とか、誰も見に来ないよなぁ……)


 大輝たちのクラスは、文化祭の出し物に全く興味がなかった。やる気がない中で、準備に時間をかけず、材料も学校にあるものだけでできたのが、この大きな校章だった。


「家族くらい来てもいいと思いますけどね……オレは呼んでませんけど」

「呼んでも、クラスの展示を見せる気はないのでしょうね」


 大輝と有馬は同時にため息をつく。天音も困った顔をしている。

 この場にいないノエも、最初で最後の文化祭の出し物がこれというのは気の毒だ。出し物を決めたとき、まだ編入生の情報はなかった。もし先にわかっていたら、少しマシなものを考えただろう。


 そのとき、開きっぱなしの扉から二人の大人が顔を覗かせる。その姿に、天音の表情がぱっと明るくなった。


「お父さん! お母さん!」


 天音が後方の出入口の方に駆けていく。有馬もそれに続くが、大輝は咄嗟に固まってしまった。


(羽生さんのご両親……!?)


 大輝の体に緊張が広がり、手のひらがじわじわと汗ばんでいく。こんなところで「彼女の両親へのあいさつイベント」が発生するなど、全く予想していなかった。

 大輝は勝手に、天音の親は来ないものと思っていた。なぜなら、学校にはエクソシストがいるからだ。わざわざ危険に足を踏み入れる必要はない。


(なんでご両親が……!? 先生も来るってわかってた顔してるし……。え? エクソシストは? 平気なの??)


 大輝が混乱している間に、天音の両親は教室の中ほどまで入ってきている。大輝に向かってきている気がするが、気のせいだろうか。いや、気のせいではない。天音が両親を大輝の方へ誘導している。展示の前を素通りして、まっすぐに大輝に向かってきている。

 大輝は慌てて姿勢を正す。学ランが第二ボタンまで開いているが、直している時間はなかった。


 天音たちが大輝の目の前で止まる。天音は大輝に目を向けながら、揃えた指を両親に向けた。


「佐藤くん、紹介するね、私のお父さんとお母さん」

「は、はじめまして! 佐藤です!」


 大輝は直角にお辞儀をする。失礼はないだろうか、作法は問題ないだろうかと、心の中には不安が広がっている。


「はじめまして~。天音ちゃんがお世話になってます~」


 柔らかい女性の声が頭上から降ってくる。恐る恐る顔を上げると、天音の両親は穏やかな笑みを浮かべていた。


 母親の方は、どう見ても普通の日本人だ。後ろで一つに縛った髪は飾り気がなく、一見質素な印象を受ける。しかし柔らかな目尻とふわりとした所作が、人のよさを感じさせる。

 父親の方はすっきりとしたイケメンだった。薄い茶髪と整った顔立ちが天音に似ている。天音は父親似なのだろう。

 二人とも優しそうで、雰囲気がほんわかしている。この人たちから天音が生まれたということに、妙に納得した。


 天音の母は頬に手を当て、微笑ましい目を大輝に向ける。


「天音ちゃんの彼氏さんよね~。いいわね~。若いわね~」

「は、はいぃ!」


(羽生さん、家でオレの話してるんだ……!)


 予想できていたことだが、いざ認識すると不安になる。悪い印象を抱かれていたらどうしよう。聞いていた人物像と違ったらどうしよう。今さらどうにもならないとわかっていながら、大輝はつい焦ってしまう。


 しかし天音の両親の目を見て、その不安は杞憂だとわかった。二人とも慈愛に満ちた瞳を大輝に向けている。

 天音の父が、天音と同じおっとりとした笑みを浮かべる。


「これからも、天音のことをよろしくね」


 天音の両親、そして天音に微笑みを向けられ、大輝は心が温かくなる。認めているのとは違う、見守るような瞳だった。


「……はい!」


 大輝は込み上げる思いを乗せて返事をする。思いのほか大きな声が出たが、皆笑ってくれた。


「へー、これ全部手形なんだ。面白いじゃん」


 突然聞こえた声に大輝は驚く。深みと色気のある男性の声は、明らかに天音の父でも有馬でもない。


 よく見ると、天音の両親の後ろに人影がある。展示の模造紙を見るその人物は、なぜ気づかなかったのかわからないほどの存在感を放っていた。

 二メートルはあろうかという高い身長、緩く跳ねた長めの金髪、真っ黒のスーツ。パッと目に入る印象はホストのようで、それだけでもかなり目を引く。横顔は鼻が高く、ヨーロッパ系の外国人のような顔立ちだ。


(欧米の人? でもめちゃくちゃ流暢な日本語だったよな……。日本育ちなのか?)


 ふとその人物と目が合ったとき、大輝の肩がぞくりと震える。真っ赤に輝く瞳は、まるでこの世のものではないかのようだった。

 その輝きに、大輝は見覚えがある。空よりも赤い色は間違いなく、天音が悪魔の姿を現したときと同じだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。