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悪魔みたいにかわいい彼女は、本物の悪魔でした  作者: わしお


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第26話 - かわいいお弁当

「ユイ! 一緒にお弁当食べる、したいデス!」


 大きなタッパーと生ハムのパックを掲げ、ノエが結衣の隣に立つ。テーブルを四つつなげて弁当を広げていた大輝たちは、思わず手を止めてノエを見る。翔太だけは、変わらず爆弾おにぎりを頬張っているが。

 天音の隣に座る結衣から苛立ちが溢れ出し、ノエに勢いよく人差し指を向けた。


「なんであたしに付きまとうの!! いつも他の女子と食べてたじゃん!!」

「ユイと一緒はいいデス!」

「理由になってない!!」


 大輝は状況についていけず、天音と顔を見合わせる。


「二人って仲良かったっけ?」

「結衣ちゃんとノエくんが話してるところは見たことないけど……」

「さっき急に懐かれたの! 天音たちが教室戻ってる間に!」


 必死な結衣の声は、本当に困っているように聞こえる。大輝がコンタクトレンズを入れに行っていたのは、ほんの数分だ。その数分でここまで懐かれたら、たしかに戸惑うかもしれない。


(そんなに拒否しなくても……とは思うけど、好みじゃなかったら仕方ないよな)


 大輝は結衣がノエを拒絶する理由が、女子の視線であることなど気づきもしなかった。


「ユイ……だめデスカ?」


 ノエが捨てられた子犬のような目で結衣を見る。その目に押されているのか、結衣は「うっ」と言葉に詰まる。

 別に弁当くらい……と思っていた大輝だが、あることに気づきはっとする。


(ノエが笹本さんに近づいたのは、羽生さんを見張るためか……!?)


 天音に近づきたいけれど、彼氏の座が埋まっているから親友の結衣に近づいた、というのは、筋が通って見える。突然懐いたというのも、これなら説明がつく。

 大輝はこの仮説に確信を得ていた。まさか「運命の出会い」だとは、これっぽっちも思わなかった。


(だったら、一緒にメシ食うのは危険だよな……。いつでも手を出せる距離に、エクソシストがいるってことになる。でも、オレから断るのは不自然だよなぁ……)


 大輝は悩みながらウインナーを口に入れる。なんとか結衣に助け舟を出せたらいいのだが、悲しいくらいに何も思いつかない。

 そのとき、口を開いたのは翔太だった。


「いんじゃね? メシくらい。そのでっかいタッパーの中身気になるし」

「ちょっ……!」

「えっ……!」


 結衣と大輝が同時に口を開くが、喋る隙は与えられない。ノエは満面の笑みを浮かべる。


「いいデスカ!? アリガトございます!」


 ノエはすぐに近くの席から椅子を引っ張り、お誕生日席を作って座る。大輝が天音の顔を見ると、少し困っているようだった。当たり前だ。

 結衣も頭を抱えている。しかしもう断れる雰囲気ではない。結衣ははーっと息をつく。


「今日はいいけど……明日以降は考えさせて」

「わかりマシタ!」


 ノエはにこにことタッパーを開く。オリーブオイルのいい香りが広がり、ノエは中にフォークを入れる。どうやら中身は、大量のスパゲティのようだ。


「え、それ全部パスタ? すげぇ」


 翔太が興味深そうに言うが、大輝の目には翔太の爆弾おにぎりも同じくらいすごく見える。主に、炭水化物の量が。


「すごい、ないデス。ボク、このお弁当嫌デス」


 ノエはスパゲティをフォークに絡めながら、大輝たちの弁当に順番に目を向ける。


「日本のお弁当、かわいいデス。ボクもかわいいお弁当したいデス」

「この中にかわいい弁当ないと思うけど」


 結衣はそう言いながら、ノエと同じように弁当を眺める。たしかに、大輝の目から見てもかわいい弁当はない。翔太の大量の爆弾おにぎり、天音の重箱、大輝の飾り気のない茶色い弁当、そして結衣の唐揚げと米だけの弁当。一番凝っているのは天音だが、かわいいというよりはすごいというか、豪華だ。


「ボク、それ入れたいデス」


 ノエが大輝の弁当箱を指さす。しかし距離が遠く、どれのことを言っているのかわからない。


「えっと……どれ?」

「たまご!」

「卵……ああ、玉子焼き?」


 大輝が玉子焼きを持ち上げると、ノエが「ハイ!」と元気よく言う。


「ぐるぐるしてかわいいデス!」

「かわいいか……?」


 大輝には玉子焼きの存在が当たり前すぎてわからない。これが文化の違いだろうか。

 ノエは少し不服そうにスパゲティを咀嚼する。


「イタリア、お弁当のおかず作るしないデス。夜ごはんの残り入れるします」

「へぇ~」


 大輝は意外に思う。イタリアは美食の国というイメージがあるが、弁当に美しさは求めないのだろうか。もしくは、そもそもの大輝のイメージが間違っているのだろうか。


(イメージって、勝手なもんだなぁ)


 話しているうちに、ノエ自身のイメージも変わった気がする。エクソシストだからと警戒していたが、案外気のいい性格かもしれない。大輝はノエの動きに注意しながら、文化の違いを楽しんだ。

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