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悪魔みたいにかわいい彼女は、本物の悪魔でした  作者: わしお


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第19話 - ハシビロコウ未満

 大輝の高校の体育祭と文化祭はハードである。なぜなら、三日連続で行われるからだ。

 木曜日に体育祭、金曜日と土曜日に文化祭。準備時間も当然重なり、とんでもない密度である。

 三年生にとっては最後の学校行事と言っても過言ではなく、思い出作りに励んでいる生徒は少なくない。たしかに、これが終わったら受験勉強だと思うと、気合が入る気持ちもわかる。


(にしても、一日目に疲れることしなくてもいいよなぁ……)


 大輝は障害物リレーを走る翔太を見ながら、去年と同じことを思う。体育祭でへとへとになった後の文化祭は、正直眠い。実際、去年と一昨年は屋上で寝た。

 しかし、今年は絶対に睡魔に打ち勝たなければならない。なぜなら、天音にかっこいいところを見せられるチャンスだからだ。


 つき合いはじめて約半年。大輝はまだ、天音から「好き」とも「かっこいい」とも言われていない。少なくとも、ハシビロコウには負けている。

 この三日間で、好感度をできる限り上げたい。高校卒業後も天音とつき合い続けるために。そのためには、眠いとか面倒くさいとか言ってはいられないのだ。


 へとへとでベンチに帰ってきた翔太と入れ替わり、大輝は百メートル走の選手としてグラウンドに向かう。ふと振り返ると、天音は他の生徒と一緒に声を出して応援していた。天音の声を聞き分けるのは難しいが、その姿を見ているだけでもやる気が湧いてくる。


 百メートル走は各クラス四人ずつが出場し、順番を決めて走る。一番手である大輝は、待機場所にはいかず、直接スタート位置に立つ。

 隣は元サッカー部員だった。だが、あまり負ける気はしていない。それくらい、大輝は運動面には自信がある。陸上部にスカウトされたことだってあるのだ。当時は「キツそう」という理由で断ってしまったが。

 大輝はふーっと息を吐き、スタートの音に集中する。隣は見ない。見るのはゴールの先だけだ。


 パンッ!


 合図が鳴り、選手が一斉に走り出す。大輝も出遅れず、順調に駆け出した。

 視界の中に元サッカー部の姿はない。思った通り、大輝の方が前を走っている。

 百メートル走は曲がることなく、直進するだけだ。ただまっすぐ、ゴールより向こうの景色を見て、大輝は必死に足を動かす。一歩でも速く、一歩でも遠く。そして――


 わあっと歓声が上がる。ゴールした選手たちは速度を落とし、緩やかに歩きへと変わる。大輝もゴールの先……元陸上部の背中を見ながら、はぁと息をついた。


(いや、陸上部はえぇ~~!!)


 さすがに練度が違いすぎる。スタートダッシュからすぐ、彼は全員を置いて走り去っていった。

 走りには自信があっただけに、大輝は少し凹(へこ)む。しかし周りの元運動部からしたら、美術部に負ける方が屈辱かもしれない。

 次の選手が走っている間、大輝たちは着順に並んで見守る。どうやら大輝は三位で、知らないうちに元野球部に抜かれていたらしい。


(いけると思ったんだけどなぁ……)


 大輝は少しふてくされながら、クラスのベンチを見る。すると、天音の大きな瞳と目が合う。

 天音は拍手をしながら、にこにこと笑っている。その顔は順位がどうというよりは、単純に「お疲れ様」と言っているようだった。


(……まだハシビロコウには勝てないかも)


 「いい走りを見せてかっこいいと思ってもらう作戦」は失敗したようだ。大輝は笑みを返しながらも、心の中は悔しさで満ちていた。

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