↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔みたいにかわいい彼女は、本物の悪魔でした  作者: わしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/61

第9話 - つり合ってなさすぎ

 テストが無事に終わり、有馬を納得させ、ようやく平和な日々が訪れる……と思った大輝だが、残念ながらそうはいかなかった。


「あれが羽生さんの彼氏?」

「なんかフツー」

「むしろダサくない?」

「つり合ってなさすぎ。ウケる」


 他のクラスの女子たちに、こんなことを言われる日が続いている。大輝はからあげを咀嚼しながら、いたたまれない気持ちで下を向く。


(たぶんこれ、有馬先生の嫌がらせだよな?)


 この現象が始まったのは、大輝が有馬にテストを見せた翌日だ。直接別れさせることに失敗した有馬が、次の一手として「大輝と天音がつき合っている」と噂を流したのだろうと大輝は思っている。


「オレの顔がイケメンじゃないせいで、羽生さんの唯一の欠点になってる……」

「毎日毎日よく飽きないよなー」


 大輝の隣で、翔太はいつもどおり巨大なおにぎりを頬張っている。最初は面白そうにしていた翔太だが、数日で飽きたらしい。


「男子は来ないのにな」

「いや? 最初は来てたよ」


 大輝はソーセージを口に放り込み、記憶を呼び起こす。あれは有馬が噂を流した(と思われる)翌日のことだ。




 休み時間になり、大輝はトイレに向かった。周囲の視線が気になりながらも用を足し、手を洗ってトイレを出ようとした。

 そのときだった。トイレの入り口をふさぐように、ふくよかな男子生徒が立ちはだかった。その生徒は危ないことに、手にカッターナイフを持っていた。


「よくも……よくもボクの天使を……!」


 男子生徒がキッと睨み、カッターナイフを大輝に向ける。血走った目は、とても話が通じる状態には見えない。


「ボクの天使を返せええぇぇぇぇ!!!!!」


 大輝の倍の体重はありそうな巨体が、まっすぐに向かってくる。トイレにいた他の生徒が、奥に逃げていくのが足音で分かった。


 普通なら自分も逃げるか、足がすくんで動けないかもしれない。しかし大輝は顔色一つ変えず、手を拭いていたハンカチをポケットにしまう。

 大輝は顔を背ける程度の動きでカッターナイフを躱す。男子生徒の腕をつかむと、彼の巨体をぐるりと縦に回転させる。男子生徒は勢いのまま、背中から床に叩きつけられた。

 とはいえ、大輝は怪我をさせない程度に手加減している。おそらく無傷だろう。大輝は男子生徒の手からカッターナイフを取り、カチカチと刃をしまう。


「こんな狭いとこで暴れたら自分もケガするぞ。あと羽生さんはお前のものじゃないし、そもそもモノじゃないから」


 大輝は呆然とする男子生徒にカッターナイフを返す。踵(きびす)を返し、何事もなかったかのように教室に戻った。




「それ以降、誰も向かってこないんだよなー」

「そりゃそうだろ」

「怖すぎでしょ」


 翔太と共にツッコミを入れたのは、天音の友人の笹本(ささもと) 結衣(ゆい)だ。翔太の正面に座る結衣は、ポニーテールを揺らしてドン引きしている。


「刃物向けられて動じないやつとか、刃物向けてくるやつと同じくらい怖いんだけど。投げたって何? 格闘技でもやってたの?」

「いや、なにも……」

「してなくてそれは絶っっ対おかしい。しかも取ったカッター返したの? 先生も呼ばずに?」

「うん。もう向かってこなさそうだったから」


 結衣はゲテモノを見るようにしかめ面をする。その目は大輝にもけっこう堪(こた)えた。甘いはずの玉子焼きがしょっぱい。


「ちょっ、怖すぎるんだけど……。天音、こいつとつき合ってて大丈夫? 乱暴されてない?」


 結衣が自分の隣、大輝の正面に座る天音の肩をゆする。天音は意外と大きな弁当箱を持ちながら、屈託のない笑みを浮かべる。


「うん。佐藤くん優しいよ」


 神々(こうごう)しさすら感じる笑顔に、大輝の心が洗われる。女子からの陰口に耐えられているのは、天音のおかげかもしれない。


 噂が流れてから、大輝と天音は一緒に昼を過ごすようになった。もうばれたならいいだろうと、開き直った結果だ。翔太は勝手についてきて、結衣は天音が誘った。

 天音と過ごせる時間が増えるのは、純粋に嬉しい。噂も悪いことばかりではないと、大輝は少しだけ有馬に感謝した。


「何が天使だよ。男の趣味悪すぎ」


 そんな声が聞こえ、大輝は思わず廊下側の窓を見る。しかし群がる女子が移動しはじめ、それが誰の声かわからなくなる。


(今の、オレじゃなくて羽生さんの悪口だよな……?)


 大輝が困惑していると、結衣が大きなため息をつく。


「よくも毎日毎日天音の陰口ばっかり……暇なの?」

「え、あれ羽生さんの悪口も混ざってんの?」

「混ざってるっていうか、全部でしょ」


 言っている意味が分からず、大輝はぱちぱちとまばたきをする。結衣は箸を置き、呆れたように頬杖をつく。


「気づいてなかったの? あれはあんたじゃなくて、天音に言ってるの。このルックスで頭が良くて運動もできるなんて、僻(ひが)まれるに決まってるじゃん」

「そうなの……? 女子怖ぇ……」

「そんなもんだよ。僻んだところで自分がモテるわけじゃないんだから、ほっとけばいいのにね」


 結衣は眉をつり上げたまま白身魚のフライを頬張る。たしかに結衣の言う通りで、女子がなぜ僻むのか、結局大輝にはわからない。

 天音は笑っているが、本当はとても怖がっているのかもしれない。そう思い、大輝は箸を置いて天音を見る。


「羽生さん、大丈夫? オレにできることがあったら……」

「ありがとう。でも大丈夫だよ」


 ふわりとした笑みは花のようだが、意味を察した大輝は苦笑いを浮かべる。


(あ、これ物理でどうにかするやつだ……)


 これだけの美少女だ。今までも同じような目に遭い、何度も乗り越えてきたのだろう。自身の持つ悪魔の力で。

 大輝は女子たちを気の毒に思いながら、最後の玉子焼きを口に入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。