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現代魔女はダンジョンに潜る  作者: 齋藤 真白
第1章 青春ダン活編
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第12話 注目パーティの面々

 他人の見つけたフロアボスに便乗するどころか、プレート目的でもないわたしたちを勝手に頭数に入れようとする。

 あまりにも非常識な発言に、その場にいるほぼ全員が呆然とした……ような気がする。


「……先輩、それはその……さすがに……」

「あっ! いや、違うんだよ。普通はよくないけど、俺なら大丈夫っていうか」

「正光様」


 ぴしゃりと叱りつけるように名前を呼ばれ、神林さんが口をつぐむ。

 なんというか、うっかりSNSで予定を流出させたのも納得の迂闊(うかつ)さだ。


「ほーんとしょうがないヤツだな~まさみっちは!」


 そんな明るい声をあげて、金髪の女性がばんばんと神林さんの背中を叩いた。色々と派手な……ギャルってやつだろうか。


「ま、そういうわけでウチらとそこのお二人さんでぱぱっとプレート取ってきちゃうから。そっちの、えーっと遥香ちゃん? どーする? 積もる話とかあるっしょ?」

「えっ、と……」


 遥香ちゃんがためらいがちに振り向いてきたので、こくりと頷いておく。那月ちゃんと茜ちゃんも問題ないようだ。

 落ち着いて話すなら第五層のキャンプ地になるだろうから、下見も予定通りできるだろう。


「そちらが良ければ、待たせてもらいたいです」

「もちろん。じゃ、行ってくるよ」


 神林さんのパーティ五人と、発見者の姉妹二人が連れ立って、フロアボスの召喚陣に踏み入っていく。

 最後尾にいるのは一言も喋らなかった(人のことは言えないけれど)女の子で、こちらにぺこりと会釈(えしゃく)してきた。

 咄嗟(とっさ)に会釈し返すのと同時に、光の膜が立ち上り、みんなの姿は見えなくなってしまった。まあBクラスのヒルデさんがいるのだし、すぐ出てくるだろうけど。


「遥香、先輩とか言ってたけど。知り合い?」

「うん、高校の先輩だよ。二つ上の」

「ほーん」


 わたしたちの二つ上というと、二十歳だ。一方で最年少Bクラス探索者であるヒルデさんは十九歳。

 SNSによれば神林さんはもうすぐBクラス入りするって話だったから、確かに注目されるのも頷ける。


「まさかあの正光先輩がそんなにすごい人になってたなんてなあ」


 そう言う遥香ちゃんの眼差しは、どこか寂しげな色を含ませていた。



 ---



 予想通り、いつもわたしたちが第四層のボスにかける時間よりずっと早く、神林さんたちは外に出てきた。

 発見者の二人はもう帰るというので、ここでお別れだ。……そういえば、結局名前を聞けなかったな。


「手伝ってもらうというより、ほとんど神林さんたちの独壇場(どくだんじょう)だったわ。経験値を貰っていいのか不安なくらい。Bクラスってすごいのね」


 お姉さんはそうぼやいていた。わたしもちょっと生で見てみたかった気もする。


 わたしたちの目的が第五層の中継キャンプの下見だということで、あのあとすぐにキャンプへ向かうことになった。

 神林さんたちの方は、進めるところまで進んでから自分たちでキャンプを張る野宿派らしい。だったらということで先に話をすることになった。

 遥香ちゃんは申し訳なさそうにしていたけれど、有名なBクラス探索者であるヒルデさんがいるのだし、色々と聞きたいということで四人で同席している。


 中継キャンプには協会職員のための建物もあって、ヒルデさんが声をかけたところ、会議室みたいな部屋を借りることができた。Bクラスってすごい。

 ちょうどお昼を食べ損ねていたので、お弁当を広げながら話を始める。


「さて、まずは自己紹介からにしようか。さっきも名乗ったけど、俺は神林 正光。今はCクラスだ。よろしくな」


 神林さんは、こう言ってはアレだけど、なんというか……これといって特徴のない人だった。周りの女性の皆さんにはオーラみたいなものがあるのに、神林さんにはそれがない。

 Bクラスへの昇格が内定している今注目の成長株と言われても、信じる人は少ないかもしれない。

 けれどパーティメンバーから慕われているのは本当のようだ。……女性ばかり集めるなんて、そういう関係だと言っているようなものである。

 そこまでの甲斐性があるようには見えないけれど、実力もあわせて人は見た目によらないということかもしれない。きっと近くにいなければわからない、人を惹きつける何かがあるのだろう。

 腰に帯剣しているので、おそらく剣士型の軽戦士。ただし、わりときらびやかな剣だ。

 こういう武器は傾向としてスペルを強化することが多いので、スペルも扱うのかもしれない。魔道剣士というやつだ。


清野(きよの) 沙苗(さなえ)です。お見知りおきを」


 次に名乗ったのは、例の秘書っぽい人。クールビューティという言葉がよく似合う。

 失礼ながら、ダンジョン探索者よりもオフィスでキーボードを叩いたり会議でプレゼンをしたり、それこそ社長秘書でもやっている方がよほどそれらしい感じだ。

 元々は探索者協会で働いていて、神林さんがダンジョンに潜るたびにお世話になっていたらしい。手続きでわからないことがあれば聞くといい……と、神林さんが教えてくれた。

 今は探索者として正光様をサポートしています、なんて結んでいたけれど……そのために仕事まで辞めるとは。

 先ほどまでは弓を背負っていた。弓使いも軽戦士扱いなんだっけ。


「はいはーい、ウチの番! 鈴村(すずむら) 柚希(ゆずき)! よろしく~!」


 元気はつらつといった感じの声が部屋に響き、外まで聞こえていやしないかと少し不安になってしまった。

 気さくないい人かと思いきや、こちら――正確には遥香ちゃんを見る目がどことなく挑発的だ。猫のような瞳が爛々(らんらん)と光っている。

 それに気づいた遥香ちゃんが一瞬身じろぐと、ころっと表情を変えてくる。にんまりと、まるで面白がっているような。

 那月ちゃんと同じくらい軽装で、身軽な戦い方をすることは予想できたけれど、武器らしいものを何も持っていない。

 少しごつめの籠手(こて)をつけていたし、格闘型かもしれない。……装備もチャイナ風だし。


「じゃあ次はひなち、どうぞ!」

「えっ!? あ、えっと……宮森(みやもり) ひなたといいます。よろしくお願いします」


 三人目は、フロアボス戦のときに会釈してくれた、黒髪ロングの女の子。ザ・巫女さんという装いだ。

 目を少し泳がせていて、なんとなく応援したくなる可愛さがある。

 鈴村さんが横から「ひなちは本物の巫女さんなんだよ~」と教えてくれたけれど……わざわざ買ったのだろうか。巫女風の装備を。

 今は壁に立てかけられている杖も和風という徹底ぶりだ。

 杖持ちということは魔道士で、さらに回復型なんじゃないかとあたりをつけたところ、どうやらその通りであるらしい。


「……ヒルデ・フォルスター」


 みんな知ってるだろうけど一応名乗ってくれたヒルデさんの視線は、目の前に置かれたデザートに釘付けになっている。

 杖を構えていたときはそれなりの圧があったのに、今はすみれ色の瞳を眠たげに伏せている。……デザートを見つめてるんじゃなくて単に眠いのかもしれない。

 有名人相手に何も知らないとなると失礼があるかもしれないので、彼女については隙を見てちょろっと調べている。

 ダンジョン黎明期に活躍したAクラス探索者、ルイス・フォルスターの娘の一人。母親は日本人だという。

 わたしと同じく攻撃型魔道士で、氷属性のスペルが得意。ギフトはあらゆるスキルやスペルの対象範囲を広げる『広域化』だ。

 ……そういえば、魔道士向きのギフトを調べていたときに、彼女の名前を見たような気がする。


 それにしても、なんというか……見事に方向性がバラバラの美人さんばかりだなあ。


 こちらも一通りの自己紹介を済ませて、遥香ちゃんと神林さんが話題の中心へと移った。

 高校の先輩後輩というから、てっきり部活か何かの繋がりがあるのかと思ったら、そういうわけでもないらしい。どうやって知り合ったのだろう。


「まさか正光先輩がそんなにすごい探索者になってるだなんて、全然知りませんでした」

「そうなのか? これでもちょくちょくテレビの取材がくるし、顔出しやってるTwiXでもバズったりするんだが……」


 それを聞いた遥香ちゃんは、神妙な顔で神林さんに向き直る。


「先輩」

「おう」

「今時の高校生は、テレビ、見ないです」

「……そう、なのか」


 まあわかる。わたしも見ないし。

 どんな番組でもアーカイブ化されるのでネット配信で見ればいいし、興味のない番組を垂れ流すみたいなことはまずないだろう。


「あと、みんなTwiXなんてやってませんよ。大抵はSnapstand(スナスタ)か、TekeToko(てけとこ)です」

「…………そう、か」


 神林さんはたいそうショックを受けたようで、肩を小さくして片手で顔を覆い、俯いてしまった。


 わたしはといえば、天を仰ぎ天井の模様の数を数えていた。




 ★★★


Q. ダンジョンフォーラムは?

A. 探索者登録しないと書き込めない上に、UIが十年モノで雑然としているので、正光ですら見ていません

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