第6章 享楽の檻と、死を告げる選択肢(後編)
カミーラのコレクションルーム。
そこは、この世の地獄を煮詰めたような異様な静寂に包まれていた。
天井から吊るされたシャンデリアは、魔法の灯火ではなく、本物の蝋燭の炎で揺らめいている。その頼りない光が、部屋の四隅に飾られた「作品」――かつて人間だったものたち――を照らし出し、歪んだ影を壁に落としていた。
ガラスケースの中で永遠の眠りについた美少年たちの、虚ろな瞳。
ホルマリン漬けにされた美しい手足。
むせ返るような香水の匂いの奥底に、隠しきれない血と防腐剤の腐臭が漂っている。
部屋の中央、真紅のベルベットソファーに優雅に足を組んで座るカミーラ・ブラッドリー伯爵夫人。
そして、その目の前で、切っ先を天に向けたナイフを静かに掲げる俺――クロノス・ナイトレイ。
「……選べ。時間は3秒だ」
俺の言葉が、冷たい水のように部屋の澱んだ空気を浸していく。
カミーラは、キョトンとした顔で俺を見ていた。
まるで、愛玩用に飼っていた子猫が、いきなり人間の言葉を流暢に喋り出したかのような、理解不能なものを見る目だ。思考が追いついていない。
やがて、彼女の紅を引いた唇が引きつり、喉の奥から空気が漏れた。
「……ふ」
そして、爆発するような笑い声が部屋を震わせた。
「あははははははッ!! 傑作だわ! まさか、ただの男娼風情が私に命令? それも死刑宣告ですって? 悪い夢でも見ているのかしら!」
カミーラは腹を抱えて笑い転げた。扇子で口元を隠すことさえ忘れ、下品に口を開けて笑う。
ひとしきり笑った後、涙を指先で拭いながら、彼女は俺を哀れむような目で見下ろした。
「可愛いクロちゃん。貴方、自分が何様のつもり? 頭がおかしくなってしまったの? ここは私の城、私はこの国の伯爵夫人よ? たかが男一匹に、何ができると思っているの?」
彼女はソファーの肘掛けを指で叩く。
「この部屋にはね、貴方のような生意気な男が何人も連れてこられたわ。最初はみんな威勢がいいの。『出してくれ』『訴えてやる』って。でもね、私の『教育』を受けると、みんな素晴らしい作品に生まれ変わるのよ。……貴方も、すぐにそうなるわ」
「……それが、貴女の答えですか?」
「ええ、そうね。選択肢なんて必要ないわ」
カミーラは扇子をパチンと閉じた。
その顔から笑みが消え、残忍な捕食者の表情が浮かび上がる。瞳の奥にあるのは、純粋な嗜虐心のみ。
「抵抗する獲物は嫌いじゃないわ。むしろ大好物よ。プライドの高い男の手足を切り落として、泣き叫びながら許しを請う姿を見るのは、最高の娯楽だもの。……特に貴方は素材が良いから、最高の悲鳴を聞かせてくれそうね」
彼女がパチンと指を鳴らす。
その合図と共に、部屋の影――カーテンの裏、天井の梁、ソファーの背後――に潜んでいた四人の護衛たちが、一斉に殺気を放った。
彼女たちはカミーラが金に糸目をつけず雇い入れた、裏社会でも指折りの中級暗殺者たちだ。
音もなく動き、俺の退路を断つように包囲網を敷く。
「やっておしまい。ただし、顔だけは残しなさい。剥製にする時に困るから」
カミーラが冷酷に命じた。
それが、彼女の選んだ「選択肢」だった。
慈悲を拒絶し、破滅への道を自ら選んだ愚者の答え。
「……残念だ」
俺は小さく息を吐いた。
これは演技ではない。本心からの深い失望だ。
少しはまともな理性が残っているかと期待したが、権力と欲望に溺れた彼女には、目の前に立つ死神の姿が見えていないらしい。
「――時間切れだ。貴女は、間違えた」
俺の言葉と同時に、護衛の一人が背後から襲いかかってきた。
風を纏うような疾走。手には毒を塗った二振りの短剣。
狙いは俺の頸動脈ではなく、アキレス腱。まずは機動力を奪い、這いつくばらせる算段か。
速い。確かに一流の動きだ。常人なら反応すらできずに腱を断たれていただろう。
だが。
(遅い)
俺の世界が色を失い、時間が凍りつく。
【思考加速】
脳内物質が過剰分泌され、知覚速度が極限まで引き上げられる。
俺は護衛の動きをスローモーションの中で捉えた。
振り下ろされる短剣の軌道。筋肉の収縮。殺気のゆらぎ。舞い上がる埃の粒子さえもが見えている。
昨日の地竜との死闘、あの極限状態に比べれば、この程度の速度は止まっているも同然だ。
「……消えろ」
俺は一歩も動かず、ただ軽くグラスを傾けるような動作で、左手を振った。
その指先で、世界の理を書き換える。
【因果逆転】
『護衛の短剣が俺の足を斬る』という確定しかけた未来を消去。
『護衛が床の歪みに足を取られ、転倒し、その勢いで自分の短剣を自分の喉に突き立てる』という結果を強制上書き(オーバーライト)。
ドサッ。
背後で重く、湿った音がした。
カミーラが目を見開く。
彼女の視線の先には、ありえない体勢で転倒し、自身の喉深くに毒の短剣を突き立て、血の海に沈んでいる護衛の姿があった。
痙攣し、口から泡を吹いて絶命していく。
「な……ッ!?」
「一人目」
俺は静かにカウントした。
振り返りもしない。
「な、何をしたの!? 今、何もしていなかったじゃない! 魔法を使った形跡もなかったわ!」
「偶然ですよ。彼女、ドジだったみたいですね。床のワックスが効きすぎていたのかもしれません」
俺は肩をすくめた。
残りの三人の護衛が動揺する。仲間が「自爆」したようにしか見えなかったからだ。
だが、プロだ。すぐさま目配せをし、連携を取り直す。
「不確定要素(俺)」を排除するために、全戦力を投入する判断。
正面から重戦士が大剣を構えて突進し、左右からは魔法使いと暗殺者が同時に襲いかかってくる。
魔法使いが高速詠唱で火球を生成し、暗殺者が死角へ潜る。
物理、魔法、奇襲の三段構え。完璧な布陣。逃げ場はない。
――普通の男なら。
「【影渡】」
重戦士の大剣が俺の頭蓋を砕こうとした瞬間、俺の体がインクが滲むようにドロリと影へと溶けた。
剣士の大剣が空を切り、床を粉砕する。
同時に放たれた魔法使いの火球が、誰もいない空間を通り過ぎ、壁の剥製を焦がす。
「き、消えた!?」
「どこだ!? 天井か!?」
狼狽し、周囲を探る彼女たち。
その足元。
魔法使い自身の影が、不気味に膨れ上がった。
俺は音もなく、彼女の背後の影から姿を現した。
「ここだ」
魔法使いの耳元で囁く。
彼女が悲鳴を上げる暇もなく、俺は手刀を首筋に叩き込んだ。
魔力強化された一撃。頚椎を正確に打ち抜き、意識を刈り取る。
魔法使いが糸の切れた人形のように崩れ落ちると同時に、俺は重戦士の懐へ飛び込む。
【身体超強化】
全身の筋肉リミッターを解除。
華奢な少年の腕から、鋼のような剛力が放たれる。
重戦士が慌てて防御のために構えた大剣ごと、その腹部に掌底を打ち込む。
ゴッ!!
鈍い音が響き渡る。
鋼鉄の大剣が「く」の字にひしゃげ、重戦士の巨体は砲弾のように吹き飛び、部屋の壁まで到達してめり込んだ。
壁に亀裂が走り、重戦士は白目を剥いて埋まっている。
「ば、化け物……!」
残った最後の一人、暗殺者が恐怖に顔を歪めて後ずさる。
彼女は戦意を完全に喪失していた。仲間たちが一瞬で、しかも理解不能な方法で処理されたのだ。
俺はゆっくりと彼女に歩み寄る。
「……逃げるか?」
「ひっ……!」
「賢明な判断だ。だが、貴女もカミーラの手先として、多くの罪なき男たちを狩ってきたのだろう?」
俺の瞳が、冷徹に光る。
彼女の腰には、戦利品のように男物の指輪やネックレスがじゃらじゃらとぶら下がっているのが見えた。
その一つ一つに、奪われた命と尊厳がある。
「……償いはしてもらう」
【影縛】
俺の影が蛇のように伸び、逃げようとした暗殺者の足首を掴んだ。
そのまま天井へと吊り上げる。
彼女は手足をバタつかせながら逆さ吊りになり、悲鳴を上げた。
わずか十秒。
カミーラが誇る精鋭護衛部隊は、全滅した。
俺は乱れた服の襟を直し、埃を払ってから、再びカミーラに向き直った。
「……さて、邪魔者は消えました。続きをしましょうか、伯爵夫人」
第6節 蹂躙と、女王の悲鳴
カミーラは震えていた。
先ほどまでの傲慢さは消え失せ、顔面は死人のように蒼白になり、ガタガタと歯を鳴らしている。
彼女は理解したのだ。
自分が檻に連れ込んだのは、可愛い子猫ではなく、飢えた虎だったということを。
「あ、貴方……何者なの……? ただの男じゃない……ありえないわ……」
「自己紹介がまだでしたね」
俺は優雅に一礼した。貴族としての礼儀作法は完璧だ。
「ナイトレイ辺境伯家当主、クロノス・ナイトレイ。……貴女がゴミのように捨ててきた、男たちを代表して参りました」
カミーラは眉をひそめた。その名を聞いても、すぐにはピンときていない様子だ。
「……ナイトレイ? 聞いたことのない名ね。どこの田舎貴族かしら?」
彼女は鼻で笑った。
無理もない。我が家は代々、表舞台には出ず、影に徹してきた。社交界では空気のような存在だ。
「ですが、裏社会の住人ならば、あるいは古い昔話として聞いたことがあるかもしれませんね」
俺はゆっくりと歩を進める。
「――王国の闇を掃除する、処刑人の一族の話を」
その言葉を聞いた瞬間、カミーラの表情が凍りついた。
彼女の脳裏に、忘れかけていた古い記憶――親から子へ、寝物語として語られる「悪い貴族を狩る死神」の伝説――が蘇ったのだろう。
「まさか……!?」
彼女の視線が、俺の胸元の刻印に釘付けになる。
漆黒の紋章。それは、御伽噺に出てくる死神の鎌と同じ形をしていた。
「あ、ありえない……! あれはただの伝説よ! 実在するはずがないわ!」
「御名答。ですが、知ったところでもう手遅れですよ」
俺は冷酷に微笑んだ。
「貴女はもう、死んでいるのですから」
カミーラの顔が絶望に染まる。
目の前にいる華奢な少年が、伝説の怪物の正体だと理解した瞬間の戦慄。
「ま、待ちなさい! 待って! お金なら出すわ! いくら欲しいの!? 私の全財産をあげる! それとも私の体!? 好きにしていいわよ!?」
カミーラは必死にドレスをはだけさせ、豊満な胸を晒して媚びを売ろうとする。
四つん這いになり、上目遣いで俺を見る。プライドもかなぐり捨てた、醜悪な生存本能。
だが、その姿は哀れみすら感じさせないほどに汚らわしかった。
「……勘違いしないでください。私は貴女の汚れた体にも、薄汚い金にも興味はありません」
「な、なら何が望みなの!? 何をすれば許してくれるの!?」
「望みは一つ。……貴女に、彼らが味わった『恐怖』と『絶望』を理解してもらうことです」
俺は一歩近づく。
カミーラは悲鳴を上げて後ずさり、壁に追い詰められる。
「ひっ、来ないで! 誰か! 誰か助けて!!」
「無駄ですよ。この部屋には最高級の防音結界が張られていますから。貴女が用意したものだ」
皮肉なことだ。彼女が犠牲者の悲鳴を外に漏らさないために作った檻が、今は彼女自身を閉じ込める棺桶になっている。
外には誰も聞こえない。誰も助けに来ない。
「い、嫌ぁぁぁ!!」
カミーラが錯乱し、隠し持っていた魔導銃を取り出した。
護身用の、高威力のアーティファクトだ。
至近距離からの発砲。
紫色の閃光が、殺意の塊となって俺の顔面を襲う。
だが、俺は避けなかった。
避ける必要がなかった。
【因果逆転】
『弾丸が俺に当たる』未来を拒絶。
『銃の魔力回路が暴走し、持ち主の手元で爆発する』結果を選択。
バンッ!!
「ぎゃあぁぁぁぁッ!!」
カミーラの手元で銃が爆発した。
彼女は血まみれになった右手を抑え、床に転げ回る。
「痛い! 痛いぃぃ! 私の手がぁぁ! 指がぁぁ!」
「痛いですか? でも、貴女がコレクションしている彼らは、手足を切断されても麻酔すら使われなかったそうですが」
俺は冷淡に見下ろす。
ガラスケースの中の義手や義足を指差す。そこには、苦痛に歪んだまま固まった彼らの「手」がある。
「彼らの痛みに比べれば、それはただのカスリ傷だ。甘えるな」
「あ、悪魔……!」
「光栄です。貴女のような外道にそう呼ばれるのは、最高の褒め言葉だ」
俺はカミーラの喉元にナイフを突きつけた。
切っ先が皮膚に触れ、血の玉が滲む。
彼女の動きが止まる。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で、俺を見上げる。
「た、助けて……何でもするから……殺さないで……死にたくない……」 「命乞いですか。……貴女は、いままで弄んだ彼らの命乞いを聞き入れましたか?」
俺の問いに、彼女は言葉を詰まらせた。
聞き入れるはずがない。彼女はそれをBGMとして楽しんでいたのだから。
「……終わりだ」
俺がナイフを振り上げ、その罪に終止符を打とうとした、その時だった。
ドゴォォォォォォンッ!!
部屋の壁が、外側から爆砕された。
凄まじい衝撃波と共に、瓦礫が降り注ぐ。
夜空が見えた。屋敷の外壁ごと吹き飛ばされたのだ。
「――おらぁぁぁ! 遅くなって悪かったな坊主! 合図が遅ぇぞ!」
もうもうと立ち込める土煙の中から現れたのは、巨大なバスターソードを担いだ赤髪の鬼神。
ティランだ。
その後ろには、白衣をなびかせたヴネナンと、風に浮遊するリゼの姿もあった。
「あらぁ、パーティはもう始まってたのねぇ。混ぜてほしかったわぁ」
「カミーラ発見! 排除対象ですっ! 殲滅しますっ!」
チーム・ナイトレイ、到着。
彼女たちは、倒れている護衛たちと、追い詰められたカミーラを見て、状況を一瞬で理解した。
「……なんだ、もう終わってんのかよ。つまんねぇ」
ティランがつまらなそうに鼻を鳴らす。
「な、なんなの!? 貴方たちは!? どうやってここへ!?」
カミーラが絶叫する。
無理もない。警備は鉄壁だったはずだ。それを正面から突破し、壁を壊して怪物が三人入ってきたのだから。
「私たちはクロノス様の忠実な下僕。……貴女、随分と良い度胸をしてるじゃない」
ヴネナンが一歩進み出る。
その手には、毒々しい蛍光色の液体が入った巨大な注射器が握られていた。
「私たちの愛しい坊っちゃまに、その汚い手で触れようとした罪。……万死に値するわ」
「ひっ!?」
「ねえ、私の新作の毒、試してみない? 『千の針の舞』っていうの。全身の毛穴から血が吹き出して、激痛で三日三晩踊り狂って死ぬ薬なんだけどぉ」
ヴネナンが妖艶に迫る。
リゼが無邪気に巨大なデスサイズ(大鎌)を構える。
ティランが大剣をブンブンと振り回し、風圧だけで家具を破壊する。
カミーラは完全に戦意を喪失し、白目を剥いて気絶した。
……まあ、そうなるよな。俺でもそうなる。
「……おい、お前ら。やりすぎだ。城が崩れる」
俺は呆れながら声をかけた。
だが、その声には安堵が混じっていた。
彼女たちが来てくれたことで、この凄惨な場が一気に「いつもの空気」になったからだ。
「あ、クロノスさま! 無事ですか!? 怪我はないですか!? 貞操は守られましたか!?」
リゼが飛んできて俺に抱きつく。
ノクトもいつの間にか俺の隣に立ち、埃を払ってくれている。
「任務完了。……クロノス様、お見事」
「ああ。ありがとう、ノクト。お前がいてくれて助かったよ」
俺は彼女の頭を撫でた。
ノクトは少し目を細め、嬉しそうに尻尾(幻覚)を振った。
その後、カミーラ邸の制圧は迅速に行われた。
屋敷の警備兵たちはティランたちが一掃し(半殺しにし)、地下牢に囚われていた数十人の男性たちは無事に保護された。
彼らは皆、痩せ細り、心に深い傷を負っていたが、生きていた。
レグルが手配した馬車で、彼らはナイトレイ領の療養施設へと送られることになった。そこで、心と体のケアを受けることになるだろう。
カミーラ・ブラッドリー伯爵夫人は、王都警備隊に引き渡された。
彼女の悪事は全て白日の下に晒され、家は取り潰し、彼女自身も極刑は免れないだろう。
もっとも、その前にヴネナンがこっそりと「特別な呪い」――毎晩悪夢にうなされ、食べたものの味がすべて泥の味になる呪い――をかけていたので、処刑台に上がるまで地獄を味わうことになるはずだが。
「……終わったな」
燃え上がるカミーラ邸を見上げながら、俺は呟いた。
夜明け前の空が、白み始めている。
長い夜だった。
「はい。完璧な作戦でした、クロノス様」
レグルが俺の隣に並び、微笑んだ。
彼女の手には、救出された人質リストと、カミーラの隠し資産のリストが握られている。ちゃっかりしている。
「これで、王都の闇も少しは晴れるでしょう。……貴方様のおかげです」
「俺一人の力じゃない。お前たちがいてくれたからだ」
俺は振り返り、仲間たちを見た。
瓦礫の上でカミーラの高級食材(肉)を食っているティラン。
新しい実験体(カミーラの部下)を吟味しているヴネナン。
カミーラの宝石をポケットに入れているリゼ。
そして、静かに俺の影に寄り添うノクト。
個性的すぎる。凶暴すぎる。
だが、彼女たちは俺の大切な「剣」であり、「盾」であり、そして「家族」だ。
「……帰ろうか。腹が減った」
「はい! 今日の朝ごはんは、カミーラの貯蔵庫から失敬した高級食材でフルコースです!」
「俺、肉な! A5ランクのドラゴンの肉があったぞ!」
「私はデザート! 高級フルーツがいっぱいよぉ!」
騒がしい声が、朝の光の中に溶けていく。
俺たちはナイトレイ城への帰路についた。
馬車の中で、俺は心地よい疲労感に包まれていた。
ふと、窓の外を見る。
街の人々が起き出し、一日が始まろうとしている。
この平和な日常を守るために、俺はこれからも影の中で戦い続けるだろう。
だが、一人ではない。
俺の左手には、レグルの温かい手が重ねられていた。
右肩には、ノクトが寄りかかって眠っている。
膝の上にはリゼが丸まっている。
向かいの席ではティランとヴネナンが、略奪した酒で宴会を始めている。
「……重い。そしてうるさい」
俺は苦笑しつつ、彼女たちの重みを心地よく感じていた。
最強の暗殺者。
その称号は、孤独なものではない。
愛という名の、最強の拘束具に守られた、幸せな称号なのだから。
こうして、第1部の幕は閉じる。 だが、物語はまだ終わらない。 遠く隣国で、赤い瞳の女王が動き出していることを、俺たちはまだ知らなかったのだから。
最後までお読みいただきありがとうございます!
今回この章で第1部が完結となります。次回から第2部へ進みます。
ご期待ください!!
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