第26章 静寂の処刑人と、語らぬ銀刃
王立闘技場は、死んだように静まり返っていた。
つい先ほどまで、数万の観衆が熱狂し、怒号と歓声が渦巻いていた場所だとは到底思えない。
その理由は明白だった。
フィールドに残る、濃密すぎる「気配」のせいだ。
第四試合で女帝スカーレットが放った『覇気』。
生物としての格の違いを見せつけ、最強のタッグ(ノクトとレグル)を子供扱いした、圧倒的な暴力の記憶。
スカーレット本人はすでに退場し、姿は見えない。
だが、彼女が残した魔力の残滓は、未だに空気中にこびりつき、空間を歪ませていた。
まるで、透明な巨人がそこに居座り、睨みを利かせているかのような重圧。
「……息が、しづらいな」
俺――クロノス・ナイトレイは、選手入場ゲートの暗がりで、自身の胸元を掴んだ。
心臓が早鐘を打っている。
恐怖ではない。武者震いとも違う。
これは、生存本能が発する「拒絶反応」だ。この先に進めば死ぬぞ、と細胞の一つ一つが警鐘を鳴らしている。
俺は振り返った。
背後の通路には、ボロボロになった仲間たちがいる。
全身包帯だらけで意識のないリゼ。
治療を終えたばかりで、顔色の悪いノクトとレグル。
彼女たちは負けた。
俺を守るために戦い、そして敗北した。
(……これ以上、負けられない)
俺は拳を強く握りしめた。爪が皮膚に食い込み、痛みで意識を現実に繋ぎ止める。
ここで俺が負ければ、どうなる?
スカーレットのペットとして一生を終える?
いや、それだけでは済まない。
俺という主柱を失ったナイトレイ家は解体され、彼女たちは路頭に迷うか、あるいはスカーレットの逆鱗に触れて処刑されるかもしれない。
領主としての顔。
主人としての責任。
そして何より、男としての意地。
「……勝つ。絶対に」
俺は自分に言い聞かせるように呟いた。
深呼吸を一つ。
肺に満ちた鉄と血の匂いを吐き出し、代わりに覚悟を吸い込む。
俺は一歩、光の中へと踏み出した。
フィールドに出ても、歓声はなかった。
観客たちは皆、青ざめた顔で押し黙っている。スカーレットの覇気に当てられ、声を出す気力すら奪われているのだ。
カツ、カツ、カツ。
俺の靴音だけが、不気味に響き渡る。
そして。
対面のゲートから、その「敵」は現れた。
ガシャン、ガシャン、ガシャン。
重厚な金属音。
全身を継ぎ目のない銀色のフルプレートアーマーで包んだ騎士。
『銀色の処刑人』。
ドラゴニア帝国四天王の最後の一人であり、その素性も、顔も、声さえも知られていない謎の存在。
騎士はフィールドの中央まで歩み寄ると、ピタリと足を止めた。
距離、十メートル。
俺は騎士を凝視した。
(……なんだ、こいつは?)
違和感があった。
スカーレットのような、空間を歪めるほどの覇気はない。
ティランのような、肌を焼くような闘気もない。
ノクトのような、鋭利な殺気すらない。
そこにあるのは、『無』だ。
感情も、意志も、気配さえも希薄な、虚無の塊。
まるで、中身の入っていない鎧が、魔法だけで動いているかのような不気味さ。
昨日の予選後の惨劇を思い出す。
他の四天王たちが嬉々として奴隷を虐殺する中、この騎士だけは違った。
峰打ちで気絶させ、無駄な殺生を避けていた。
慈悲か? それとも、殺す価値もないという傲慢か?
スカーレットの側にいながら、その行動原理が見えない。
「……」
騎士は無言のまま、腰に帯びた大剣の柄に手をかけた。
その動作はあまりにも自然で、予備動作が全くない。
水が流れるような、静かな構え。
『それでは……本戦トーナメント、第五試合!始めッ!!』
アナウンサーの声が震えながら響いた。
ゴングが鳴る。
その音が消えるよりも早く、世界が動いた。
(……来る!)
俺は身構えた。
相手は四天王。ティランやヴネナンが苦戦した相手と同格か、それ以上だ。
初手から全力で行く。
【思考加速】を展開し、相手の初動を見切る――
はずだった。
「――ッ!?」
いない。
目の前にいたはずの銀色の巨体が、瞬きする間に消失していた。
消えた? 転移か?
いや、違う。
視界の端、認識の外側。
風すら起こさず、音もなく。
気づいた時には、騎士は俺の目の前――鼻先数センチの距離に立っていた。
(速い……ッ!!)
リゼのような「速さ」ではない。
リゼの速さは、風を巻き起こす爆発的な加速だ。予備動作があり、音があり、軌跡が見える。
だが、こいつの速さは違う。
「移動」のプロセスが欠落しているかのような、唐突な出現。
縮地。あるいは、歩法の極致。
俺は咄嗟に反応した。
防御? 回避?
間に合わない。思考が追いつかない。
俺ができるのは、反射的に体を硬直させることだけだった。
ドンッ!!
腹部に、重い衝撃が走った。
鋭い痛みではない。内臓全体を揺さぶられるような、鈍く、重い衝撃。
「が、はっ……!?」
俺の体はくの字に折れ曲がり、数メートル後方へ弾き飛ばされた。
地面を転がり、受け身を取ってなんとか立ち上がる。
口の中に鉄の味が広がる。
「……な、に……?」
俺は痛む腹を押さえ、相手を見た。
騎士は、剣を抜いていなかった。
大剣は鞘に収められたままだ。
今の一撃は、剣の柄頭か、あるいは鞘の先端による突きだ。
(……舐めやがって)
屈辱がこみ上げる。
剣を抜くまでもないということか。
殺す気がない? 手加減されている?
ふざけるな。ここは殺し合いの場だぞ。
「クソっ……!」
俺は短剣を構え直した。
相手が抜かないなら、こっちから抜かせてやる。
俺は地面を蹴った。
【影渡】。
影に潜り、騎士の背後へ回り込む。
「シッ!」
死角からの刺突。
だが、騎士は振り返りもしなかった。
ただ、大剣の鞘を背中に回し、俺の短剣を受け止めたのだ。
ガィン!
硬い音が響く。
まるで背中に目がついているような反応速度。
いや、気配を読まれたのか?
「なら、これならどうだ!」
俺は攻撃の手を緩めない。
連撃。
上下左右、あらゆる角度から短剣を繰り出す。
ティランとの特訓で磨いた体術と、リゼとの訓練で得た立体機動。
今の俺の攻撃速度は、予選の時よりも遥かに速い。
だが、当たらない。
騎士は最小限の動き――体を半歩ずらし、首を傾け、鞘で弾く――だけで、俺の猛攻をすべて捌いていく。
その動きには、一切の無駄がない。
流水のように滑らかで、それでいて鉄壁。
「……ッ!」
焦りが募る。
こちらの攻撃は全て見切られているのに、相手の攻撃は見えない。
騎士が反撃に転じた。
鞘に入ったままの大剣を、棒術のように振り回す。
ブンッ! ブォンッ!
風切り音が重い。
鞘とはいえ、鋼鉄の塊だ。直撃すれば骨が砕ける。
俺は紙一重で回避するが、そのたびに体勢を崩される。
(重い……! なんだこの圧力は!)
ただの棒切れを振り回しているだけに見えるのに、その一撃一撃には凄まじい「重心」が乗っている。
フェイントがない。小細工がない。
ただ、最適解の軌道で、最大効率の打撃が飛んでくる。
まるで精密機械と戦っているようだ。
「ぐぅッ!」
避けきれなかった一撃が、俺の肩をかすめた。
ボキリ、と嫌な音がした気がした。
激痛が走るが、無視する。足を止めたら死ぬ。
俺はバックステップで大きく距離を取った。
荒い息を整える。
冷や汗が止まらない。
強い。
スカーレットのような「規格外の怪物」ではない。
研ぎ澄まされた「技の極致」。
純粋な剣士としての技量は、ティランさえも凌駕しているかもしれない。
「……お前、何者だ?」
俺は問うた。
喉が渇いて声が掠れる。
「スカーレットの配下にしては、異質すぎる。なぜ剣を抜かない? なぜ俺を殺さない?
……何が目的だ?」
問いかけが、静寂の闘技場に響く。
だが、騎士は答えない。
銀色の仮面の下から、こちらの様子を伺う視線を感じるだけだ。
無言。無反応。
それが余計に不気味さを煽る。
「……名前くらい、教えたらどうだ?」
挑発してみる。
だが、やはり反応はない。
ただ、騎士はゆっくりと大剣を構え直した。
鞘の先端を俺に向け、切っ先(見えないが)を喉元に定める「正眼の構え」。
『お喋りは終わりだ』という無言の意志表示。
「……そうかよ。だんまりか」
俺は唇を噛んだ。
会話による情報収集も、心理的な揺さぶりも通じない。
ならば、力ずくでこじ開けるしかない。
その鉄仮面を剥がし、その口を開かせてやる。
第二ラウンド。
俺は戦法を変えた。
闇雲な連撃は通じない。相手は「後の先」の達人だ。
ならば、こちらも「静」の戦いで挑む。
俺は呼吸を整え、意識を内側へと沈めた。
ノクトとの早朝訓練で掴んだ感覚。
殺気を消し、気配を断ち、世界と同化する。
【魔力循環・隠蔽】
体内の魔力を完全に循環させ、外部への漏出をゼロにする。
視覚的にはそこにいるが、感覚的には「石ころ」と同じ存在になる技術。
騎士の持つ「虚無」に近い状態を、擬似的に再現する。
俺はゆっくりと歩き出した。
摺り足。音を立てず、重心を一定に保ったまま滑るように移動する。
騎士の反応を見る。
……動かない。
こちらの気配を見失ったのか、それとも誘っているのか。
(慎重に……。一撃必中だ)
俺はジリジリと間合いを詰める。
騎士の大剣の間合い。約二メートル。
そこに入れば、音速の打撃が飛んでくる。
その刹那。
相手が動く「起こり」を捉え、カウンターを合わせるしかない。
三メートル。二・五メートル。
緊張で空気が張り詰める。
心臓の音がうるさい。
二メートル。
境界線を踏んだ。
――ピクリ。
騎士の肩が、わずかに動いた。
来た。
右からの薙ぎ払い。
(見えたッ!)
俺は【思考加速】を最大出力で発動。
時間を引き伸ばす。
迫りくる銀色の鞘。その軌道を完全に見切る。
避けるのではない。踏み込む。
攻撃の起点、懐の内側へ。
【因果逆転・摩擦係数ゼロ】
足元の摩擦を消し、氷の上を滑るように加速する。
鞘が俺の髪の毛を数本刈り取りながら通過する。
死の風が頬を撫でる。
入った。
ゼロ距離。
騎士の懐。無防備な胸元。
「――貫け!」
俺は短剣に全魔力を込めた。
【闇穿・一点突破】
ドリルのように回転する黒い魔力の刃。
それが、騎士の胸甲へと突き刺さる。
ガガガガガッ!!
金属音が火花と共に散る。
硬い。
この鎧、ただの鋼鉄じゃない。ミスリル、いや、オリハルコンか?
魔法耐性が異常に高い。
「……硬ぇなッ!」
だが、衝撃は通るはずだ。
俺は短剣を押し込みながら、さらに魔力を爆発させた。
【浸透撃】。
鎧の内部へ、衝撃波を流し込む。
「くっ……」
初めて、騎士が声を漏らした。
苦悶の声。
効いている。
騎士がたたらを踏み、後退する。
「まだだ! 逃がさない!」
俺は追撃に移る。
体勢を崩した今が好機。
足払いで転倒させ、マウントを取る。
騎士の銀色の腕を掴み、関節を極めようとする。
だが。
ガシッ。
逆に、手首を掴まれた。
万力のような力。
騎士は体勢を崩したまま、片手で俺の身体を持ち上げたのだ。
嘘だろ? どんな筋力だ。
「……調子に乗るな」
兜の奥から、低い声がした。
次の瞬間、視界が回転した。
ドガァッ!!
俺は一本背負いのように投げ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
背中から肺への衝撃。息が止まる。
受け身を取る暇もなかった。
「が、はっ……」
俺は咳き込みながら転がり、距離を取った。
危なかった。
もし追撃されていたら、終わっていた。
騎士は……追ってこない。
ただ、胸甲についた傷(俺がつけた傷)を、手袋で軽く払っているだけだ。
「……傷がついたか」
騎士が呟いた。
その声には、怒りではなく、微かな驚きと、そして称賛のような色が混じっていた。
「悪くない一撃だ。予選の時の動きとは違う。……迷いがない」
初めて、まともな言葉が返ってきた。
俺は痛む体を起こし、口元の血を拭った。
「……お褒めに預かり光栄だよ。だが、まだ終わってないぞ」
俺は短剣を構え直す。
手応えはあった。
無敵じゃない。攻撃は通る。隙もある。
そして何より、相手が「会話」に応じ始めた。
それは、相手が俺を「排除すべきゴミ」から、「戦うべき敵」として認識し始めた証拠だ。
騎士はゆっくりと、背中の鞘から手を離した。
そして、柄に手をかける。
ジャリッ……。
金属が擦れる音。
ついに、剣が抜かれるのか?
俺の緊張がピークに達する。
だが、騎士は剣を抜かなかった。
代わりに、カチャリと音を立てて、腰の留め具を外した。
ドスン!
鞘ごと大剣が地面に落ち、めり込んだ。
武器を捨てた?
「……剣など不要だ」
騎士は素手で構えた。
ボクシングのような、しかしもっと古流の武術のような独特の構え。
「貴様のその目。その覚悟。……敬意を表して、この拳で相手をしよう」
空気が変わった。
先ほどまでの「無」の静寂ではない。
熱を帯びた、ヒリヒリとするような闘争の気配。
騎士の全身から、銀色の闘気が揺らめき立つ。
「来い、クロノス・ナイトレイ。私を超えてみせろ。……その力が本物ならば」
それは、試練の宣告だった。
俺はニヤリと笑った。
望むところだ。
剣だろうが拳だろうが、全部ねじ伏せて、その仮面の下の素顔を拝んでやる。
「ああ。行くぞ、名無しの騎士さん」
静寂は破られた。
ここからは、魂と魂がぶつかり合う、本物の死闘だ。
俺たちの激突は、もはや観客の目には追えない領域に達していた。
ドガガガガガガッ!!
打撃音が連続して響く。
俺の短剣と、騎士の鉄拳が、火花を散らして交差する。
騎士の拳は重い。一撃必殺の威力がある。
だが、振りが大きいわけではない。コンパクトで、鋭い。
鎧の重量を感じさせない高速のラッシュ。
俺はそれを、短剣で受け流し、あるいは紙一重で躱しながら、カウンターを狙う。
ティランとの特訓が活きている。
重い一撃に対する恐怖心はない。軌道が見えている。
「シッ!」
俺は騎士のストレートを潜り抜け、脇腹に短剣を突き立てる。
ガキンッ!
硬い。鎧の隙間を狙ったはずなのに、見えない膜(闘気の鎧)に阻まれる。
「浅い!」
騎士の膝蹴りが飛んでくる。
俺は腕をクロスさせてガードするが、衝撃で数メートル吹き飛ばされる。
「くっ、防御力が桁違いだ……!」
こちらの攻撃は通じにくく、あちらの攻撃は一撃必殺。
不公平なダメージレース。
だが、俺には数がある。
手札の数が。
【影分身】
俺の影が二つに分かれ、実体を持った分身が生成される。
二人掛かりでの攻撃。
左右から同時に襲いかかる。
「小細工を」
騎士は動じない。
右手の裏拳で分身を粉砕し、左手で本物の俺の短剣を掴み止める。
「捕らえた」
「そっちは囮だ!」
俺は掴まれた短剣を手放した。
そして、懐から取り出したのは――ヴネナンの作った『閃光玉』。
カッ!!!!
至近距離での強烈な閃光。
騎士の視界が白く染まる。
バイザー越しでも、これだけの光量なら目は眩むはずだ。
「くっ……!」
騎士が怯んだ。
その一瞬の隙。
俺は背後に回り込み、リゼ直伝の空中殺法へと移行する。
【因果逆転・質量操作】
体を軽くし、騎士の肩に着地する。
そして、両足で騎士の首を挟み込む。
関節技。
首の骨をへし折るか、頸動脈を絞めて落とすか。
「落ちろッ!」
俺は全身全霊の力で締め上げた。
だが、騎士の首は岩のように動かない。
それどころか、騎士は自分の肩に乗った俺ごと、背中から地面に倒れ込んだ。
バックドロップ。
ズドォォンッ!!
俺は自分の背中と地面、そして騎士の体重というサンドイッチの具になった。
背骨が悲鳴を上げる。
呼吸ができない。
「が、ぁ……」
「……チェックメイトだ」
騎士が俺の上に乗ったまま、拳を振り上げた。
トドメの一撃。
避けられない。防げない。
終わったか。
いや、まだだ。
俺にはまだ、使っていないカードがある。
レグルとノクトから学んだ、最後の教え。
『諦めない心』と『隠し玉』。
俺は右手に魔力を集中させた。
短剣はない。素手だ。
だが、俺の手には、見えない刃が握られている。
【因果逆転】による、概念的な刃。
『切断する』という結果のみを抽出した、純粋な魔力の刃。
「――穿てッ!!」
俺は騎士の拳が落ちてくるより早く、その脇腹――鎧の継ぎ目に向けて手刀を突き出した。
ズプッ。
柔らかい感触があった。
鎧を、闘気を、筋肉を貫通した感触。
「……ッ!?」
騎士の動きが止まる。
振り上げられた拳が、空中で静止する。
脇腹から、鮮血が滴り落ち、俺の顔にかかる。
赤い血。
温かい、人間の血だ。
「……見事」
騎士が、掠れた声で呟いた。
そして、糸が切れたように脱力し、俺の上に倒れ込んできた。
重い。
金属の重さと、そして確かな生命の重さ。
静寂が戻ってくる。
俺は荒い息を吐きながら、動かなくなった銀色の騎士を見上げた。
勝った……のか?
その時。
衝撃で破損していた騎士の兜のバイザーが、カシャンと外れ落ちた。
露わになった素顔。
月光のような銀髪。
透き通るような白い肌。
そして、神秘的な紫色の瞳。
整いすぎた、美しい女性の顔立ちだった。
彼女は苦しげに眉を寄せ、しかし、どこか満足げに俺を見つめていた。
「……合格よ。クロノス」
その声は、機械音声ではなく、涼やかな鈴のような声だった。
俺は呆然とその顔を見つめた。
何者だ?
なぜ、俺の名前をそんな風に呼ぶ?
俺の疑問に答える間もなく、会場にアナウンスが響き渡った。
「しょ、勝者! クロノス・ナイトレイ選手ぅぅぅ!!」
大歓声。
だが、俺の耳には届いていなかった。
俺の意識は、腕の中で気を失った、この謎めいた美女に釘付けになっていたのだ。
静寂の処刑人。
その仮面の下に隠されていたのは、予想外の真実と、新たな波乱の予感だった。
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