2話 錬金術
「ああは、はいほほはあいせいあいああはうはいおうようはようないうお?」
金属鎧の人が何かを言うが、金属鎧のせいで声がくぐもり何を言っているかが全くわからない。
「すいません、聞こえなかったです」
私がそう言うと、金属鎧の人は兜を外し口を開く。
「すまない、これを着ると声がくぐもることを忘れていたよ」
兜の中から出てきたのは漫画の主人公のようなイケメンだった。
うん、テンプレ!
「改めて言おう、大の男が女性に暴力を振るうとは恥ずかしくないのか?」
これは、わからないよ。
予想できる人いる?
「うるせえ!邪魔をするならお前もやってやる!」
男はそう言ってなんと腰につけていた剣を手に、金属鎧の人に走り出す。
男は完全に意識が金属鎧の人にしか無かったので、私は再び足をかけ簡単に男を転ばせることができた。
「こんな狭い所で剣を振り回すと危ないですよ?」
床に這い蹲る男にそう声をかけていると周りの人混みが割れ、受付の方から1人の男が歩いてきた。
おお、ダンディー.....
そのダンディーな人は状況を確認した後、金属鎧の人に声をかける。
「これはウィルキンス様、今はどのような状況ですか?」
「やあ、クリカム。床に寝ている彼がこの少女を殴ろうとしていたので止めたのだが、それに怒った彼が私に斬りかかってきた所に少女が足をかけて転ばせたんだ」
金属鎧の人.....ウィルキンスさんがダンディーな人.....クリカムさんにそう告げる。
「なるほど、そこに寝ている君は冒険者ですね?今後1ヶ月錬金術ギルドの使用を禁止します」
「はあ!?ふざけるな!」
いつの間にか立ち上がっていた男はクリカムさんに殴り掛かるが合気のような技で床に叩きつけられ、動かなくなってしまった。
男が死んでしまったのかと眺めていると、それを悟ったかのようにクリカムさんが言う。
「安心してください気絶しているだけですよ。それで貴方は?見たところ冒険者ではないようですが.....」
クリカムさんに話しかけられた私は答える。
「錬金術師になりたくてきました!」
「なるほど、錬金術師志望の方でしたか。ではこのまま列に並んでいれば大丈夫です。あまり暴れないでくださいね?」
「わかりました、ありがとうございます。もちろん自分から暴れるようなことはありませんよ」
「では、後で会いましょう」
クリカムさんはそう言って受付へと戻っていった。
ウィルキンスさんにお礼を言おうと思ったが、いつの間にか居なくなっていたため私は列に並びなおした。
先程のこともあってかあれから割り込みは起こらず、無事に受付までたどり着くことができた。
「次の方.....あ、さっきの錬金術志望の人ですね。こちらに名前と錬金術経験の有無の記入をお願いします」
そう言って受付の女性は私に紙を渡す。
その紙に名前を書き、経験無しにマルをつけて渡すと、女性は紙にハンコをつけて言う。
「はい、これであなたも錬金術師です。詳しい説明をするのでついてきてください。すいません、誰かここお願いします」
女性はそう言うと受付を出て、正面にあった扉のひとつに入っていく。
女性に続いて部屋に入ると、そこには沢山の道具と一際目に入る大きな鍋が置かれていた。
「担当になりましたミルです。これから説明をさせていただきます」
「ミルさんよろしくお願いします」
そう言うと、ミルさんは少し顔を綻ばせて話を続ける。
「では、この大鍋の説明をさせていただきます。この大鍋、正式名称は青銅製最下級魔術式錬金術大鍋といって、錬金術を使う上で必須となるアイテムです」
「青銅製最下級魔術式錬金術大鍋.....」
なんというか中途半端に長い名前のものほど覚えやすい傾向みたいなのがある気がする.....
英単語とかそうじゃない?
「あ、覚えなくても大丈夫ですよ。早速使ってみましょうか。まずは、大鍋の中に材料を入れます。材料を入れる前に準備が必要な場合もありますが、最初のうちは気にしなくても大丈夫です。今回は魔石と木の枝を入れますね」
ミルさんはそう言って手に懐から灰色で半透明な石と木の枝を入れる。
すると、鍋に入っていた灰色の液体が緑色に変化した。
「色が変わった後はしばらく煮込みます。大抵のアイテムはかき混ぜながら中火でじっくり煮込むといいでしょう」
鍋の下にある竈のようなものに火をつけ、1分ほど鍋の中身をかき混ぜていると、鍋の中から先端に魔石がついた木の枝が飛び出してきた。
ミルはそれを手に取るとこちらに手渡してくる。
「これで木の短杖の完成です。それじゃあ海月さんもやってみましょう」
「わかりました!」
初錬金術が上手くいくといいんだけど。
ミルさんから魔石と木の枝を受け取り、私は鍋の中にそれらを入れ、火をつけ鍋の中身をかき混ぜていく。
しばらくかき混ぜていると、徐々に液体の色が薄くなっていき、色が元の色に戻るのとほぼ同時に鍋から木の短杖が出てくる。
その出来栄えはミルさんと変わりがないように見える。
「やった、できた!」
「おめでとうございます、いい出来ですね。では次にこの水晶について説明させていただきます」
そう言ってミルさんは部屋の隅に置いてある水晶に触れる。
「この水晶は鑑定の水晶というアイテムで、これにアイテムを当てることでアイテムの情報を見ることができます。それでは、その短杖を水晶に当ててみてください」
私は水晶に近づき、作った短杖を水晶に当てる。
すると水晶の上に情報が表示された。
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木の短杖
装備可能レベル:1以上
耐久力:10/10
魔法補助(極小)
木の枝で作られた簡素な杖。
装備者の魔法の使用を若干補助する効果がある。
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私は魔法は使えないし、武器としては使えなさそうだね.....残念。
「確認できたようですね。ではこの部屋の説明に移らせていただきます。この部屋は1時間銅貨1枚で貸し出されています。予約もできますので、受付までお願いします。それと今から1時間はこの部屋が使えますので」
「なるほど、わかりました」
「最後に素材売場について説明させていただきます。ギルド入口から見て右手にあり、主に下級素材を購入することができる他、余っている素材を売ることもできます。これで説明は以上となります。何か質問はありますか?」
「ないです、ありがとうございました」
「それでは最後にギルドカードをお渡ししますね」
ミルさんはそう言って1枚のカードと鍵を私に手渡す。
そのカードには錬金術ギルドという文字と私の名前が書かれていた。
「これであなたも正式に錬金術ギルドの一員です。良い錬金術ライフを。鍵は部屋の利用が終わったら受付まで持ってきてください」
「はい、ありがとうございました!」
ミルさんは少し微笑んで私に手を振ると、受付へと戻っていった。
さて、この1時間で何をしようかな?




