1話 テンプレ
宿を出てしばらく歩くと、店員さんが言っていた通り大きな鍋の模様が入った看板が見えた。
「さて、ここまで来たのはいいけどなんて言えばいいかな?錬金術師になりたくて来ました?うーん.....」
建物に辿り着くまで考えたが、ここで軽いコミュ障が発生する。
こうゆうものはどんなに考えても無駄だと、私はとりあえず建物の中に入ってみることにした。
建物の中に入ると、左側には受付が、右側には草や石が売られている場所が、そして正面には幾つもの扉が並んでいた。
建物の中はサービス初日だからかどこも人で溢れていて、活気に満ちている。
「まずは受付に行くべきだよね?」
しばらくギルドを見渡した後、受付の前にできている列に並ぶ。
なんの列かはわからなかったが、どの列がどこに繋がっているかもわからない程混んでいるのだから仕方ないだろう。
それにしてもこの中にプレイヤーはどのぐらいいるのかな?
もしプレイヤーが多いなら何かトラブルが起こりそうな気もするんだけど。
そう考えていると案の定トラブルが起こってしまった。
私の前に1人の男の子が割り込んできたのだ。
かなりベタ.....じゃなくて、とりあえず声をかけてみますか。
「あの」
割り込んできた男の子の肩を叩きながら、声をかける。
男の子の背は私とあまり変わらないぐらいなので、年齢は中学生ぐらいだろうか?
「なんだよ!」
男の子は振り返りこちらを睨んでくる。
口調や行動からしてもやはり中学校低学年ぐらいのように思えた。
「ここに並んでたんですが」
優しく言うと舐められるかと思い、少し強めに言ってみる。
「いや嘘だろ!本当だとしても背が小さすぎて見えなかったし!」
いや、身長は少しだけど私の方が上じゃない!?
というか、身長は結構傷つくからやめて欲しい...
とはいえ、ここから認めさせるのもめんどくさいし、1人分くらい待ちますか。
「今回は譲ってあげるから次からはよく見てから入ってね」
「.....わかったよ」
順番を譲ったことがよかったのか、彼は大人しく返事をしてくれた。
さて、何度もやられたくはないし何か対策が必要だね。
そう考えてしばらく辺りを眺めながら何かいい方法はないかと考えたが、対策は思いつかなかった。
割り込まれないことを祈るしかないね...
そう考えた数秒後私は再び割り込まれてしまった。
口に出さなくてもフラグが立つ能力でも手に入れたのかな?
「あの、並んでいたんですが」
今度は肩まで手が届かなかったので、私は割り込んできた男の背を軽く叩き声をかける。
「あ〜?なんだ?」
「あなたがいるところに並んでいたんです、割り込みをせずに1番後ろに並んでください」
男の返事に不安を感じ、さっきの男の子相手より強めに言う。
「うるせえな.....なら俺が割り込んだ証拠を見せてみろよ!」
うん、嫌な予感的中.....
というか、証拠見せてみろ!とか本当にベタだね。
はあ、めんどくさいなぁ.....
「確かに証拠なんてありませんよ。ところであなたが割り込んでいないという証拠はどこにあるんですか?」
私がそう言うと、男はニヤリと笑って私の斜め後ろを見ながら言う。
「もちろんあるぜ?なあ、お前ら!」
私がそちらを見ると、3人の男がこちらに歩いてきていた。
3人が男の所までたどり着くと、その中の1人が言う。
「そうだ、素材売場から見てたがこいつは5分前ぐらいからそこに並んでた」
すると、残りの2人も同調してきた。
「ああ、確かにその通りだ」「そうだな」
.....仲間の証言が証拠になるとでも思ってるのかな?
というか、素材売場って反対側の所だよね?
こんなに混雑してるのに人の見分けがつくものなのかな?
「なるほど、随分視力がいいんですね」
「納得したか?それじゃあな」
「.....はあ、どうぞ先に行ってください」
嫌味を綺麗に流され、これ以上口論を引き伸ばしても無駄な時間を過ごすだけだと理解した私は、仕方なく男達に順番を譲ろうとする。
その瞬間、最初の男がこちらを向いて嘲笑うような笑みを向けてきた。
...煽られて何もしないほど優しくはないよ?
私達が口論している間に少しスペースができていたため、男の視線が前に向いたことを確認すると後ろから男の足を引っ掛ける。
男は綺麗に転び、床に這いつくばった。
「いってえな!何してくれんだ!?」
男が立ち上がって怒鳴りつけてくるが、私は怯むことなく言い返す。
「私は何もしてませんよ?何かにつまづいたんじゃないですか?」
まあ、私がやったんだけど。
「んなはずあるか!お前が足をかけた所をはっきり見たぞ!」
さて、もうちょっと頑張りますか。
「もしかして頭の後ろに目がついているんですか?初めて見る種族ですね。種族名を教えてもらえませんか?」
ゲームの中だから異種族ぐらいいるだろうと言ってみる。
その予想は的中したようで、男はさらに声を荒らげながら言う。
「俺は人族だ!」
「そうなんですか。となると、わざわざ私のことを見ていたということで.....あ、もしかして変態ですか?」
さらに私は煽りを重ねていく。
「てめえみたいなガキに興味あるはずがないだろ!」
「じゃあどうして私を見ていたんですか?」
さて、そろそろかな?
「何となくだよ、何となく!」
「流石に言い訳が苦しいですよ変態さん。いくら私が可愛いとはいえ.....」
私がそう言っていると、男が叫ぶ。
「だから変態じゃないって言ってんだろうが!」
そして拳を握りしめて私に殴りかかってきた。
よし作戦通り、後は私が殴られれば流石に言い訳もできないでしょ。
あんまり痛くないといいんだけど.....
視線で男が顔を狙っているとわかった私は目を瞑り、衝撃に備える。
数瞬後、ガシャリと言う金属音と「いってえな!」という男の悲鳴が聞こえた。
目を開けると、全身に金属鎧を着込んだ人が男の拳を受け止めていた。
うん、最後までベタだね.....
今更だけどもしかしてこれ何かのイベント?
そう考えていると、金属鎧の人が口を開いた。
「ああは、はいほほはあいせいあいああはうはいおうようはようないうお?」
.....え?




