プロローグ
「あ、このゲーム面白そう」
何か面白そうなゲームはないかと店を歩いていると、ひとつのゲームの宣伝が目に止まった。
そのゲームは『Creation Alchemist』
直訳するなら『創造の錬金術師』だろうか。
最近流行りのVRMMOでゲーム内容は戦闘でアイテムを集めて、新しいアイテムを作成、作ったアイテムで再び戦闘、を繰り返していくというものでよくあるRPGと言ったところだろう。
そんなこのゲームが売りにしているポイントは、アイテム作成の自由度が高く、どんなアイテムでも作成可能ということだ。
「それなら運営も想定してなかったようなアイテムを作りたいなー」
サービス開始は1ヶ月後だったので私は予約を済ませると、作りたいアイテムを考え始めた。
◆◆◆◆◆
1ヶ月後、私は頭にゲーム機を着けてベッドの上に寝転がりサービス開始を待っていた。
「今日はちょうど土曜でよかったー。さて、サービス開始まで後少し!」
私はサービス開始時刻である13時になった瞬間ゲームを起動した。
すると五感が消え去り、そしてひとつずつ感覚が蘇ってくる。
30秒程経って全ての感覚が戻った時、そこは見覚えのない部屋の中だった。
「さて、何をしたらいいのかな?」
辺りを見渡すと机の上に淡く光る本があったので、近づいて手に取ってみる。
「自己の書?とりあえず読んでみますか」
本を開くと、目の前に私にそっくりなアバターが現れた。
「なるほど、キャラクターメイキングね。燃え尽きない程度に頑張らないとね!」
私はかなり力を入れてアバターを作成し、2時間程で理想のアバターを作り上げることに成功した。
「身長が大きく変えられなかったのは残念だけど...可愛くできたからいっか」
明るい黒のショートに少し青みがかった目、身長は元の身長から少し高くなって150cmぐらいの美少女がそこにはいた。
「身長がもうちょっと欲しいけど.....仕様だから.....」
身長がもっと欲しかったと思いながらキャラクターメイキングを終了させると、本のページが勝手にめくれて名前の入力欄が現れた。
「名前は.....海月で」
名前の設定が終わると再びページがめくれ、操作について書かれたページが現れたのでひとつひとつ確かめていく。
「ふむふむ、これがメニューで.....アイテムを入れるようなところはないんだね。アイテム集めが厳しくなりそう.....」
一通りの確認を終わらせてページをめくると、そこには鍵が挟まれていた。
不思議に思いながら鍵を取り出すと本が消えてしまったので、何か使えそうなアイテムがないかと確認しながら鍵が使えそうな扉に向かう。
「あ、ウエストポーチ発見!何となく冒険者っぽいね」
確認した甲斐があって、扉の横にあった帽子掛けのようなものに掛かっていたウエストポーチを見つけることができたので、腰に着けて中身を見る。
「銅貨が5枚入ってるね。.....お金の持ち運びもしっかりやらないといけないのはちょっと怖いかな」
それからしばらく部屋を探したがウエストポーチの他には何も見つからなかったので、扉に向かい鍵穴に鍵を差し込み回す。
無事に鍵が開いたので扉を開けると、そこには廊下があった。
「思ってたのと違う.....けどまあいっか」
廊下を見渡すと左に階段があったので階段を使って下へと降りる。
すると、下の階についたところで誰かから声をかけられる。
「お客さん!朝食できてますよー」
声が聞こえてきた方向を見ると、そこには優しげな顔をした男性が床を掃除していた。
「あ、ありがとうございます?」
いきなり想像もしていないことを言われたので驚いたが、ここが宿屋で私は客だったということだろう。
「もしかして部屋で何か食べちゃいました?」
「いや、まだです」
「ならぜひ食べていってください。お代は部屋の料金に含まれてるので食べないと損ですよ」
お腹が空いているわけではなかったため断ろうかと思ったが、ゲームの中ならいくら食べても太らないことに気がついた私は朝食をもらうことを決めた。
「そうなんですか。じゃあいただきます」
「わかりました。すぐ用意するので適当に座っていてください」
店員はそう言って手にしていたモップを壁に立て掛けると、店の奥へと歩いていった。
私は近くにあった椅子に座り、これからどうするかを考え始める。
「ストーリーは無いらしいし、とりあえず町を見て回ろうかな?」
そんなことを呟いていると、机にスープとパン、野菜炒めが運ばれてきた。
「お待たせしました。食べ終わったら机の上に置いたままで結構ですので」
「わかりました。いただきます」
私はまずパンに手を伸ばし、手に持った瞬間違和感を覚える。
手に持った感覚が異様に硬かったのだ。
しばらくどうしたものかと硬直した後、どこかでスープに浸して食べると見たことを思い出し、パンをスープに浸して口に入れる。
「あ、硬いけど美味しい」
パンはやはり硬かったがスープに浸したおかげか噛みきれない程ではなく、噛むほどに濃厚なスープの味が口に広がった。
次に野菜炒めをフォークを使って食べる。
「こっちも美味しいね」
味付けはおそらく塩と胡椒だけという単純なものだったが野菜と肉の味が生かされている...ような気がする。
いちいちこんな食レポを考えてしまうのは人の性というものだろう。
「ごちそうさまでした」
しばらくして朝食を食べ切ると、見計らったかのように店員がやってきて、食器を回収しながら話しかけてくる。
「そういえばお客さんは錬金術師志望でしたよね?余計なお節介かもしれませんが、錬金術師ギルドは店を出て右に行くと見える大きい鍋の模様の看板がある建物ですので。錬金術師になれるよう、応援していますよ!」
「ありがとうございます、頑張ります!」
店員が錬金術師ギルドについて教えてくれたので、私はそこに向かうことにして宿の扉を開け、ようやく建物の外へと足を踏み出した。
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