セダの村
*ジョシュア・クリプトン(アルキュール王国 セダの村)
セダの村は、だいぶ普通の村落とは違っていた。
昼過ぎに村に着き、村長に挨拶をして仮宿を案内されてから受けた印象である。
一つには、規模がだいぶ小さかったこと。
セダの村は家が三十ほどしかなく、空き家も混ざっていた。
ふつう、村という団体が機能するためには、出来れば家が百、少なくとも五十はなければならない。
鍛冶屋や教会といった、農業や狩りには結びつかないが村には必要であるような専業施設は、ある程度の人員を相手にしないと成り立たないからだ。
こういう村の場合、鍛冶屋も兼業ということが多く、その場しのぎの細工で紛らわせることが多いと聞いた。
二つには、騎士が出てこなかったこと。
村長と名乗る老人が対応しただけであった。
ふつう、村落には必ず一人の騎士が配置されており、村の外から訪ねてくる人物がいた場合、応対に同席するのが相場である。
アルキュール王国内部での慣習として、そうなっているのだ。
アルキュールは、王都ギメリア周辺を除けば、大まかにいって六人の侯爵が管理の任に就いている。
アルキュール本国に三人、トミナール領に三人。
それぞれの侯爵が、自分の領地のなかに幾人かの代官を置いて管理を任せている。
そして、その代官たちが村落の情報を知る基本的な手段として使っているのが、騎士を村へと赴任させることだ。
こうして赴任された騎士は、村の自警団と対外折衝の役割を果たすかわりに、馬の世話にかかる費用などを村単位で賄ってもらう。
体よく馬の維持費も払わされているわけだが、村としても中央から赴任してきた騎士とのつながりを大事にすることが多く、問題になることはそう多くない。
ともあれ、村に外部から人がやってきた場合、村民では判断しきれないことを代わりに判断するべく、騎士が出てくることが普通なのだ。
どうも違和感がぬぐえない。
この仮宿に荷物をおいたら、少し村を見て回ってみることにしよう。




